『場面緘黙へのアプローチ』読みました、見ました(前編)

2009年04月15日(水曜日)

場面緘黙へのアプローチ―家庭と学校での取り組み場面緘黙症Journal では「関連書籍」のコーナーで、場面緘黙症に関する洋書をご紹介しているのですが、実は海外で出回っている緘黙の洋書は、ここでご紹介しているものが全てではありません。諸事情により、一部は載せていません。

Silent Children - Approaches to Selective Mutism も、その一つでした。イギリスで場面緘黙症の本&DVDが出ているという話はかねてから聞いてはいたのですが、一般の書店等で出回っているものではないようで、私も手に取ったことはありませんでした。

今回お話しする新刊『場面緘黙へのアプローチ―家庭と学校での取り組み』は、それを翻訳したものです。体裁は本ですが、DVD(24分)が付属しています。

■ 内容量

本は190ページで、その内容量は、同じ田研出版から出ている『場面緘黙児への支援』や『場面緘黙児の心理と指導』とほぼ同じです。ただ、本には24分のDVDがついています。この本が類書に比べて高いのは、DVDがついていることが一因かな、と推察します。

■ たくさんの人が書いた

この本は、イギリスの緘黙支援団体 SMIRA の代表、緘黙症児の保護者たち、特別支援スペシャリスト、大学の名誉教授ほか、様々な立場の人の執筆から構成されています。DVDには場面緘黙症の経験者も出て、自身の体験を語っています(本にも、別の経験者の話が4ページだけではありますが載っています)。

このため、場面緘黙症やその支援法を多角的な視点から理解することができます。反面、別々の著者が同じような説明を重複して書いた部分があり(中には、それぞれの説明が食い違っている場合もあります)、構成に若干統一性が欠けます。

■ イギリスの本&DVDの翻訳版

この本&DVDはもともとイギリスのものの翻訳版なので、イギリス色を強く感じます。内容がイギリスの話ばかりなのはもちろん、イギリスの写真もたくさん挿入されています(写真は、本の内容を具体的にイメージするのに役立っています)。このため、日本に住む私には少し馴染みにくいと最初は感じたのですが、徐々に慣れました。

カナダから出た本の翻訳書『場面緘黙児への支援』と同様、この本に書かれている支援法の中には、そっくりそのまま現在の日本でも適用できないものもあるかもしれません。ですが、あとがき「『家庭』と『学校』の間に橋を架けましょう」にも書かれてある通り、少なくとも支援のヒントにはなるでしょう。また、緘黙症児の支援方法が発達したイギリスの手法を紹介するということそのものが、今の日本では、大きな意義のあることだろうと思います。今はまだ、海外の手法を輸入する段階なのだろうと思います。

■ DVDがついている

この本の大きな特徴の一つは、DVD(24分)がついていることです。

場面緘黙症と治療のポイントについて正しく理解するのによくできており、場面緘黙症の子どもに関わる方はもちろん、欲を言えば、そうでない幅広い方にも見ていただきたいDVDです。24分という時間も、長すぎず短すぎず、ちょうどよいと思います。

このDVDは、もしかしたら、どうしても本につけなければならないような内容のものではないのかもしれません。DVDがついた分、おそらく値段も高くなったことでしょう。ですが、場面緘黙症のDVDがこうして手に入りやすいかたちで出たのは、意義があることだと思います。動画は、人の動作、肉声、表情、雰囲気といった活字では表現できないものを伝えます。支援の現場を動画で見ることにより、本の内容が具体的にイメージしやすくなるという効用があります。また、動画だからこそ、印象に残って頭に入りやすいということもあります。さらに、DVDは1枚あれば、多くの人が同時に見ることもできます。

※ ただ、ここで紹介されている手法を用いようとするなら、ノートやメモでも取りながら見るのが一番良いだろうと思います。

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◇ 『場面緘黙へのアプローチ』読みました、見ました(後編)

※ 若干、内容を書き改めました。(2009年4月15日19時10分)