場面緘黙症の治療法の展望

2009年05月13日(水曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Cohan, S.L., Chavira, D.A., and Stein, M.B. (2006). Practitioner Review: Psychosocial interventions for children with selective mutism: a critical evaluation of the literature from 1990-2005. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines, 47(11), 1085-97.

■ 概要

英語圏の学術文献データベースのウェブサイトより、場面緘黙症の心理社会的介入に関する査読論文(1990-2005年)を集め、先行研究を総覧し、展望をまとめたものです。

■ 所感

◇ 行動療法と認知行動療法が有効か

場面緘黙症の心理社会的介入には様々なものがありますが、著者によると、先行研究により行動療法と認知行動療法が効果があることが分かってきたそうです。ただ、場面緘黙症の心理社会的介入の報告は査読論文には少なく、著者が集めた15年間の文献でも、行動療法9件、精神力動療法5件、認知行動療法1件、家族療法1件、様々な治療法を複合したもの6件しかありません。ですので、これら先行研究だけをもって、どの介入法が効果的だとかそうでないとか、結論を出すには留保が必要ではないだろうかと私などは思います。

こうした介入法に関する蓄積は、アメリカの SMart Center とか、イギリスの SMIRA といった場面緘黙症に特化した治療機関、支援団体に豊富そうです。査読論文に目を通すのも一つの方法ですが、こうした支援団体の情報からも様々なことが分かりそうです。『場面緘黙へのアプローチ』や『場面緘黙児への支援』といった翻訳書もそうした情報の一つで、有益です。

今回の論文は場面緘黙症の介入法のうち、心理社会的療法に注目したもので、薬物療法については研究対象から外れています。薬物療法の有効性はどうか、心理社会的療法と併用するとどう効果があるか、薬物療法と心理社会的療法はどちらが効果的か、等々についても私は興味があります。

◇ レビュー論文

今回のような論文を「レビュー論文」「展望論文」というのでしょうが(間違っていたらすみません…)、こうした論文は、これまでの研究を概観するのに役立ちます。いきなり個別の文献に当たるよりは、まずレビュー論文に目を通してみるのが一つのコツかなと思います。

◇ 日本のレビュー論文

なお、日本でも、場面緘黙症の治療法に関するレビュー論文がこれまでに出ています。次の2件です。

相場嘉明 (1991). 選択性緘黙の理解と治療-わが国の最近10年間の個別事例研究を中心に-. 特殊教育学研究, 29(1), 53-59.

椎名幸由紀, 相馬寿明 (1998). 選択性緘黙症の治療過程に関する研究-事例研究を中心に- 茨城大学教育学部紀要(教育科学), 47, 153-164.

「相場嘉明」氏と「相馬寿明」氏は同じ方と思われます。このうち前者については、以下のページより読むことができます。国立情報学研究所のサービスです。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006784588/
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