緘黙を自力で治す方法?

2009年06月16日(火曜日)

場面緘黙症を治す方法について書かれた書籍はありますが、どれも保護者や専門家向けのもので、肝心の当事者を対象としたものはありません。当事者の多くは小さな子どもが多く、当事者を対象にした本は出しにくいと見られているのでしょうか。それとも、場面緘黙症を治すのは、保護者や専門家がすることということなのでしょうか。

場面緘黙症や、いわゆる後遺症で悩んでいる人は、自分の緘黙をどうやって治せばいいのでしょうか。保護者や専門家の力を借りればいいのでしょうか。

緘黙の当事者の話をネット上で観察していると、保護者や専門家に頼らず自力で治した(あるいは、治そうとしている)人がいることに気づきます。中には、緘黙を治す努力をしない人を「甘えている」などと非難する人もいます。

私も場面緘黙症の経験者ですが(といっても自己診断ですが)、どうしたわけか、保護者や専門家の力を借りず、緘黙を自力で治す方法に、昔から関心をもっていました。

■ 場面緘黙症を自力で治す方法?

そういうわけで、私が考えた、場面緘黙症を自力で治す方法を書いてみることにします。ただし、本当に効果があるかどうかは分かりません。半ば思いつきのような方法で、まだまだ完成度は低いと思っています。それから、私は緘黙の専門家でもありませんので、あまり真に受けることはおすすめしません。「こういう方法を考えている人もいる」程度に受け取っていただければと思います。

◇ 原理

原理は、『場面緘黙児への支援』や『場面緘黙へのアプローチ』で用いられている、行動療法と同じです。段階的に発話の目標を設定し、少しずつ声を出してみるということです。

◇ 一例

学校生活を例に挙げて、具体的に説明します。

* * * * * * * * * *

例えば、まずは挨拶をしてみるところからはじめるとか。学校では、朝先生と会ったら挨拶をするよう指導されると思いますが、まずはそこから始めてみる。声が出ないという場合でも、小声でもいいから声を出してみる。それでも無理なら、口をパクパクさせるだけでもいいから(ちょっと無理があるかな…)、まずはそこからやってみる。

私が小学校の頃は、終礼で、クラスの児童全員で「先生さようなら!みなさんさようなら!」などと言ったものですが、このように、多くの人と一緒に声を出すような場面では、発話のプレッシャーは若干低く、発話しやすいかもしれません。こうした機会も生かし、最初は小さな声でもいいので、なんとか声を出そうと頑張ってみます。

それができるようになったら、次は授業で当てられたときなどに、できるだけ大きな声で発言をしてみる。できれば、自分から発表をしてみる。もっとも、緘黙の子が自分から発表するのはとてもエネルギーが要ることだろうと思うので、たまに、ないし、ときどきでいいです。「自分は場面緘黙症だったけど、当てられて本を音読することぐらいならできた」という話を耳にすることがありますが、こうした体験も、緘黙を治すのに実は役立っていたのだろうと思います。

それができるようになったら、親しい友達と少し会話をしてみる。そうして、少しずつ会話の範囲を広げていくのです。

なお、この例は、内山喜久雄氏が実践し、効果を挙げた方法を参考にしています(内山, 1959)。古い文献ですが、その内容は、最近出版された『場面緘黙児への支援』で紹介されている方法と同じ原理を用いています。

◇ 留意点

緘黙の子・人が、会話の練習をしようと、いきなり誰かと雑談をしようとするのは、非常に難しいです。雑談には、どのようなことを話せばよいか臨機応変に考え、自分の言いたいことを組み立てて話す能力が要求されます。これは、緘黙の子・人にとっては、とてもハードルが高いことです。私などは緘黙だった頃、それをやろうとして失敗し、「ダメだ」と落ち込んでしまったことがあります。しかし、いきなり難易度の高いことに挑戦して失敗するのは当然です。

一方、「おはようございます」のような挨拶は、これに比べれば易しいです。どうしてこれが易しいのかというと、(1)短いから、(2)内容が定型的だからです。また、授業で当てられて本を読むという場合は、先ほどの挨拶に比べると難しいでしょうが、自由に人と話をするのに比べれば易しいです。なぜかというと、与えられた文章を読むだけでよいからです。こうした易しいことから少しずつ挑戦していくことが、ポイントです。

声を出すことすら難しいという場合は、まずは口をパクパクさせたり、息を出したりする練習から始めるのもよいです。

あと、あまり完ぺきを求めすぎないように。場面緘黙症の子・人は、完ぺき主義者が多そうなので。

◇ 難点

この方法の難点は、場面設定が難しいことです。保護者や先生等の協力が得られる場合、少しずつ話ができるような場面の設定ができますが、緘黙の子・人には、それは非常に難しいです。

もう一つの難点は、時間がかかることです。少しずつ段階的に進めるので、一朝一夕に緘黙を克服するのは無理でしょう。

[文献]

◇ 内山喜久雄 (1959). 小児緘黙症に関する研究-第2報 治療方法について-, 北関東医学, 9, 786-799.