[緘黙] あいつ富条よ!サイッテー!! [ストーリー]

2009年07月01日(水曜日)

緘黙ストーリー、中学生編の第20回です。通算第47話をお届けします。

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中3の1学期のある日、廊下を歩いていたら、反対方向から懐かしい人が歩いてきました。

中1の時のクラスメイトで、私が密かに片思いをしていた、Kさんです(第35話など参照)。

私はKさんとは、中2・中3とクラスが離れたため、しばらくほとんど接点がありませんでした。「去る者は日々に疎し」で、中3にもなると、もうKさんのことは、私の心から離れかけていました。

ですが、それでも、かつて心を寄せていた人と会うのは嬉しいものです。ドキドキしながらすれ違おうとしたとき…

Kさんと一緒に歩いていた友達と見られる女の子2人が、すごい形相で、しかも大声で

「あーっ、見て見てK、あいつ富条よ!
サイッテー!!」

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公衆の面前でこんなことを言われて、ただ事ではありません(「サイッテー」とまでは言われなかったかもしれませんが)。一緒に歩いていたKさんは無言でした。

こうしたことが、一度ならず、何度かありました。

それだけではありません。今度は別の同学年の女子生徒1人が、私と廊下で会うたびに、敵愾心をむき出しにしてきたことがあります。あるときなどは、私に「キック」をお見舞いしようとさえしました。これは中学卒業後に知ったことですが、彼女もまた、Kさんのお友達らしいです。

■ いったい何なんだ!?

私には、何がなんだか分かりませんでした。

妙なことに、私のことを「あいつ」呼ばわりした女子2人も、私にキックをお見舞いしようとした女子1人も、私の全く知らない人でした(マンモス校だったため、同学年でも知らない生徒がたくさんいました)。私は相手を知らないのに、相手は私を知っているという状況です。

どうもKさんが、お友達に私のことを教えたとしか思えませんでした。きっとKさんは、お友達の前で、私のことを強く非難し続けていたのでしょう。例えば、私の知らない間に、どこかで私を見かけて、一緒にいた友達にこっそり「見て見て、あいつが富条よ。あいつはサイッテーな男で…」とでもやったとか。

なんにしろ、尋常ではありません。なぜこのようなことになったのでしょうか。

◇ 私がKさんに迷惑を働いていた説

私には、Kさんに嫌われたり、恨まれたりするような真似をした覚えは一切ありません。

中1のとき同じクラスだったと言っても、それこそ「ただのクラスメイト」で、大して接点はありませんでした。また、いくら好きだったからといっても、ストーカーとか、そんなことはしていません。密かに想っていただけです。「遠くから見てるだけでよかった」と書いたことがありますが、本当に遠くからジロジロ見続けていたわけではありません。

ですが、知らず知らずのうちに彼女が嫌がることをしてしまっていたのかもしれません。緘黙で友達がいなかった私は、人との接し方や距離の取り方がよく分からなかっただけに、なんだかあり得そうな話にも思えました。私がこんな危ない男だったのだとしたら、ショックですが…。

もしそうだとしたら、Kさんは中1時代のことでいまだに強烈に腹を立てていると見られることから、私はよほど迷惑で非常識なことをしたのだろうと思います。

◇ Kさんは、自分に好意を寄せる富条を嫌っていた説

Kさんは、私の好意に感ずいていたのかもしれません。しかし、私の好意を「無茶苦茶キモい。虫唾が走る。ああいう男、一番ムカツク」とでも思ったのかもしれません(※「キモい」という言葉は、当時ありません)。なにもあそこまで嫌わなくても、という気もしますが…。

◇ Kさんの勘違い説

お話したように、私には、Kさんに嫌われたり、恨まれたりするような真似をした覚えは一切ありません。尋常でないほど大人しかった緘黙の私に、いったい何ができるというのでしょう。Kさんは何か勘違いをしていたのかもしれません。

◇ 好意の裏返し説

富条君のことずっと好きだったのに裏切られた、陸上部のRとかいう綺麗な女の子に「カワイイ」と言われて鼻の下伸ばしてる、憎くて仕方がないとか。なんだかものすごいポジティブな解釈のような気もします。

■ 悪いことが続く

中3に入って、いじめっ子や不良にいじめられ、陰鬱な学校生活を送っていた私にとって、今回のKさんのことは、さらなるダメージでした。

今の私なら、場合によっては、無理を承知でKさんに直接事情を聞いてみるかもしれません。このまま理由が分からないままあのような態度を取られ続けるのは気持ちが悪いですし、私がKさんに迷惑をかけたのだとしたら謝らなければなりません。ですが、当時の緘黙の私には、そのようなことはできませんでした。

今回のことは、もしかすると、身から出たさびだったのかもしれませんが、それにしても悪いことが続きます。高校受験を控えた大事な時期なのに、困ったものです。次回の緘黙ストーリーこそ良い話になってほしいですが、果たしてどうなるのでしょうか。

[続きの話]

◇ [緘黙] 僕、避けられてる? [ストーリー]