場面緘黙症の薬物療法の展望

2009年08月11日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Kaakeh, Y., & Stumpf, J.L. (2008). Treatment of selective mutism: focus on selective serotonin reuptake inhibitors. Pharmacotherapy, 28(2), 838-844.

■ 概要

場面緘黙症児への治療法のうち、特に薬物療法に焦点を当て、先行研究を総覧し、展望をまとめたものです。

■ 所感

場面緘黙症の治療法に関する先行研究を概観し、展望を示すこの種の論文(「レビュー論文」「展望論文」というのでしょうか)として、以前このブログでは Cohan ら(2006)を取り上げました。しかし、これは行動療法や認知行動療法など心理療法に焦点を当てたもので、薬物療法については言及がありませんでした。今回の論文は、薬物療法の先行研究をまとめたもので、ちょうど Cohan ら(2006)と併せて読めば、場面緘黙症の治療法(心理療法・薬物療法)について一通り概観できます。

場面緘黙症への薬物療法は、実際のところ、単独で行われるものでは必ずしも無くて、心理療法と併用したり、あるいは心理療法がうまくいかなかったときなどに試みられたりします。今回の研究では、単に薬物療法のみならず、そのあたりのところにも言及されている点が良いと思います。

場面緘黙症への薬物療法の導入はアメリカで盛んだそうですが、今回の研究も、アメリカの大学に所属されている方が著したものです。特に Fluoxetine(フルオキセチン)を用いた治療法に関する考察が多くの紙幅を占めていますが、この Fluoxetine とは「Prozac(プロザック)」という商品名で販売されている薬で、日本では未認可だったはずです。このため、日本の方でこの論文に関心のある方は、その点注意して読む必要があろうかと思います。論文の著者によると、場面緘黙症に対する薬物療法で最もよく研究されているのが、この日本未認可の Fluoxetine だそうで、日本に住んでいる私としては、はがゆさも感じます。

日本の学術文献で、緘黙症児に薬物療法を試みた例の報告は、なかなか見かけません。