緘黙児の数、30年で8倍に!?(英)

2009年10月02日(金曜日)

■ 緘黙児、過去30年で8倍に!?

今月1日、イギリスのニュースサイト WalesOnline に掲載された記事 ‘Big rise’ in children left mute outside the home は、

場面緘黙症の子どもの数が「過去30年で800%以上急増した」(rocketed by more than 800% over the past 30 years)

という、Maggie Johnson 氏(マギー・ジョンソン;スピーチセラピスト)の話から始まる衝撃的なものでした。

その一方で、「自閉症のように、単に今は場面緘黙症の認知度が高くなっていて、そのことが、緘黙症がより多く起っているという印象を与えているだけ」(She said that as with conditions like autism, there are simply greater levels of awareness now, creating the impression the problem is more common)という、Alice Sluckin 氏(アリス・スルーキン;イギリスの緘黙支援団体 SMIRA 代表)の見解も載っています。

Maggie Johnson 氏も Alice Sluckin 氏も、場面緘黙症の子どもの支援に取り組まれていることでよく知られている方で、今年邦訳版が出た『場面緘黙へのアプローチ』のDVDにも登場します。そのような方の間で、このような意見の大きな食い違いがあると、私などはどちらのおっしゃることが正しいのだろうかと戸惑ってしまいます。

こうなると、Maggie Johnson 氏の、緘黙の子800%以上急増というお話の根拠が気になります。根拠がしっかりしたものだと、これは信ずるに足りそうだと判断できます。ですが、記事にはその根拠についてそこまで深くは書かれてありませんでした。興味深いことが書かれた記事なだけに、ここは残念でした。

イギリス以外の他の国では、緘黙の子は急増しているのかどうか、日本ではどうか、今後の情報に注意を払っていきたいです。

■ 緘黙症は成人期にも残るか、後遺症は

記事には、場面緘黙症が成人期にも残るかどうかや、いわゆる後遺症について、長年場面緘黙症の問題に関わってこられた Alice Sluckin 氏の見解が載っていて、興味深いです。ちょうど先月、このブログで場面緘黙症児の予後調査に関する記事を書いただけに、タイムリーです。

それにしても、場面緘黙症の成人期への影響等については、人によって言うことが違うなと改めて感じます。これについても、その人の主張の根拠を確かめるなどして、どの人の言うことが正しいのかしっかり見極めたいものです。

私は、大村豊氏の次の見解が、その根拠を見定める上でヒントになるのではないかと見ています。

「精神科を訪れるケースではより重症で難治なタイプⅡ、あるいはタイプⅢである割合が多いと考えられ、この食い違いが教育現場における選択緘黙のイメージと精神科の臨床におけるイメージとの違いを生んでいるように思われる。すなわち教育関係者は思春期を過ぎれば選択緘黙は自然軽快するものと思いがちであるのに対して、精神科医はアプローチが困難で治りにくい障害と捉えてどちらかといえば敬遠する向きがあるが、見ている対象が異なっているのであろう」

[文献]

◇ Devine, D. (2009, October 1). ‘Big rise’ in children left mute outside the home. WalesOnline. Retrieved from http://www.walesonline.co.uk/news/wales-news/2009/10/01/big-rise-in-children-left-mute-outside-the-home-91466-24823586/
◇ 大村豊 (2006). 選択緘黙-成人期への影響- 精神科治療学, 21(3), 249-256.