場面緘黙症の発症時期

2006年04月08日(土曜日)

私はときどき、自分が本当に緘黙児だったのだろうかと自問自答することがあります。

なぜならば、発症時期が遅すぎるからです。小学4年の4月。9歳の頃です。しかも自己診断ときています。確かに、学校では話すことができず、場面緘黙症とよく似た症状に悩まされてはいたのですが、確信が持てません。

もっとも、私は発症する前から、学校ではクラスNo.1の引っ込み思案でした。この引っ込み思案の性格と後に発症する緘黙との間には、何か関係あるんでしょうかね?

ところで、場面緘黙症はいつ発症するものなのでしょうか。そして、小4で発症というのは、おかしなことなのでしょうか。今回は、このあたりのところを考えてみることにします。

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■ 保育園、幼稚園への入園、あるいは小学校入学時?

Googleで「緘黙 発症」と検索したところ、面白いページを発見しました。「国際学院埼玉短期大学・卒業研究論文抄録集」というページです。その中で、中田愛子さんという方の卒論『緘黙症に関する考察』が掲載されています。

そこには、緘黙の発症時期について、次のように書かれてあります。
「緘黙の発症時期については、一谷 彊ら(1973)や金子 保(1987)等によると、緘黙は幼稚園や保育所へ入園・入所時点に、あるいは小学校入学時点に発症しているものが多いと報告されている」[1]
私は、緘黙を卒論のテーマに選んだ中田さんを高く評価したいと思うのですが、いかんせん、参照されている文献が1973年とか1987年とか、いささか古いのが気になります(私のような門外漢が言うのもなんですが)。

ただ、保育園や幼稚園への入園や、小学校入学をきっかけに緘黙になったという話はよく耳にします。

■ DSMは5歳以前と言っている

一谷彊ら(1973)や金子保(1987)よりも、もう少し新しい文献を見てみましょう。場面緘黙症の診断基準としてよく引き合いに出されるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、精神疾患の分類と診断の手引)の最新版・DSM-IV-TR(2000年)は、次のように説明しています。
「場面緘黙症の発症は通常5歳以前だが、学校に入るまでは、緘黙症は臨床的な配慮はなされないかもしれない」(Onset of Selective Mutism is usually before age 5 years, but the disturbance may not come to clinical attention until entry into school.)[2]
ご覧の通り、DSMは5歳以前説をとっています。

実際、DSM以外でも、2-4歳の頃に発症するんだという報告がいくつかなされています。[3]

思うに、場面緘黙症は、実は3歳前後のかなり早い時期に発症するのでしょう。しかし、それは保育園や幼稚園、学校に入るまでは表に出ない…といったところではないでしょうか。

■ 高校に入って発症する人もいる!

ここまで書いて、私は不安になりました。つまり、場面緘黙症は、ふつう5歳以下で発症すると言われているのに、私は9歳だった。もしかすると、私は場面緘黙症ではなかったのではないかと。

しかし、もう少しよく調べてみたら、稀なケースですが、なんと高校になって緘黙が発症したというケースが報告されているのです。
「場面緘黙症が高校になるまで始まらないという、いくつかのケースも報告されてきた。しかしながら、青年期後期の発症は珍しいことである。;この障害の最もよくある発症年齢は、小学校低学年だ。」(Some cases have been recorded in which selective mutism does not begin until high school. Onset in late adolescence is unusual, however; the most common age of onset for the disorder is the early elementary school years.)[4]
珍しいケースとはいえ、高校に入って初めて発症するという人がいるのです。そうしますと、小学4年の4月で発症する私のような者がいても、それほど不思議ではないことになります。

それにしても、中学にまで持ち越すと治療が困難とも言われている場面緘黙症、高校で発症したらその先どうなるのだろうかと人ごとながら心配になります。

■ むすび

場面緘黙症は、2~4歳の頃に発症し、保育園や幼稚園への入園や小学校入学ではじめて緘黙の症状が表に出る…というのが一般的なのでしょうか。

しかし、中には高校に入って初めて発症するという人も、珍しいケースではありますが、報告されてきたようです。

私は9歳・小学4年生で発症しましたが、これもまた珍しいケースとはいえ、ありえないことではないようです。


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[注]

1 http://www.kgef.ac.jp/ksjc/ronbun/981700y.htm(最終アクセス2006年4月8日)。ちなみに、国際学院埼玉短期大学のウェブサイト上には、他にも緘黙に関する卒論が多数公開されています。こうした研究結果が一般に公開されることは、緘黙症の当事者にとって非常にありがたいです。

2 American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. (4th ed., text rev.). Washington, DC: American Psychiatric Association. 2000.

3 例えば、以下の論文があります。

☆ Black B, Uhde TW. Psychiatric characteristics of children with selective mutism: a pilot study. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 1995 Jul;34(7):847-56.
☆ Steinhausen HC, Juzi C. Elective mutism: an analysis of 100 cases. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 1996 May;35(5):606-14.
☆ Dummit ES 3rd, Klein RG, Tancer NK, Asche B, Martin J, Fairbanks JA. Systematic assessment of 50 children with selective mutism. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 1997 May;36(5):653-60.
☆ Kristensen H. Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 2000 Feb;39(2):249-56.

それぞれの論文のタイトルを私なりに邦訳しておきます(訳の品質は保証しません)。

★ 場面緘黙児の精神医学的特徴:一つの予備的研究
★ 場面緘黙症:100人のケースの分析
★ 場面緘黙児50人の組織的評価
★ 場面緘黙症と、発達障害、発達遅延、不安障害(障碍)、排せつ障害などの併存疾患

4 Encyclopedia of Mental Disorders: Selective mutism, http://health.enotes.com/
jax/index.php/works/download/
type=encyclopedia/notes=mental-disorders-encyclopedia/
section=selective-mutism/contentID=123493. p.2 (last visited April 8, 2006).