50代にして、初めて緘黙の過去を告白

2009年11月10日(火曜日)

ある方から、場面緘黙症についての興味深い新聞記事を教えていただきました。ありがとうございました。

アイルランドで著名な Linda Graham 氏という現代画家(50代)が、場面緘黙症の過去を始めて語った、という内容の記事です。記事が掲載されたのは Irish Independent というアイルランドの有力紙で、掲載日は2007年9月30日、記事のタイトルは Artist looks back on her eight-year childhood silence です。Linda Graham 氏の話は、RTE(アイルランド放送協会)のテレビ番組でも特集されたそうです。

著名な画家が、50代にして初めて緘黙の過去を語った、ということに重みを感じます。

Graham 氏が語る緘黙の感覚は、実にリアルです。12歳の頃に言葉が出たというのに、50代になってもなお、そのときの感覚を生々しく覚えていることに、私などは驚きを禁じえません。彼女にとって、緘黙の経験はそれほど忘れられないものだったのでしょうか。しかし、Graham 氏の証言は、緘黙の子の気持ちを代弁し、緘黙の理解を促すものと思います。

さらに、Graham 氏は、緘黙に無理解な親からひどい仕打ちを受けます。この Graham 氏に行われた仕打ちについて、RTEのウェブサイトなどは、physical abuse(身体的虐待)という表現まで使っています。家庭でも居場所がなかったのでしょう。虐待とまではいかなくても、緘黙の子に無理解ゆえに親から厳しい態度を取られたという話は、現代日本でも、インターネットで見かけることがあります(ただし、理解のある親もいます)。

心が痛む話ばかりで、何か救いはないのかと思いながら読み進めたところ、見つけたのが、芸術にのめりこみ、王立美術院に認められたというくだりです。アイルランドを代表する現代画家となる端緒でしょう。ただし、それは初めて声が出るようになった12歳より後の、14歳以降の話です。つまり、緘黙症状が軽快した(もしくは消え去った)後の話です。この時期の問題が気にはなりますが、何はともあれ救いだろうとは思います。

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以前、私は「場面緘黙症の有名人」という記事の中で、次のように書きました。

「私は、場面緘黙症を経験した有名人が今後明らかにされることがあるとしたら、芸術・文化方面に比較的多くなるのではないかと推測しています。場面緘黙症の人は、他者とうまくコミュニケーションがとれない反面、内的世界は豊かな人が多いと思うのです」

面白い偶然で、今回はそのとおり画家の方でした。他にも探せば有名人、見つかるかもしれません。