[緘黙] 本命校を受験する [ストーリー]

2010年01月08日(金曜日)

このブログでは、私が緘黙だった頃のことを連載形式で書き続けています。今回は中学生編の第27回です。通算第54話をお届けします。

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■ 最後の追い込み

私立高校の合格が決まった私は、本命の公立ε高校の受験(一般入試)に向けて、最後の追い込みに入っていました。この地域では、大半の中学生が公立高校を第1志望にしていたので、多くの中学生がこの時に賭けていました。

私の中学校では、2月、さらに3月にも、3年生を対象とした実力テストがありました。この実力テスト、私の結果は実に面白いものでした。ここに来て、長らく低下し続けてきた私の学年順位が反転していたのです。逆転合格の可能性が高まってきたぞ、と私は意気が高まっていました。

■ 卒業式も間近

公立高の受験に加えて、中学の卒業式も間近に迫っていました。

「卒業までの我慢」

いじめを受けるなど、学校内での人間関係がうまくいかない中、私は1学期の頃からそう自分に言い聞かせ、ひたすら我慢して学校に通い続けてきました。それも、間もなく終わるのです。

卒業式は、公立高受験が終わった翌日に予定されていました。なお、この地域の公立高の一般入試は、全て同じ日に実施されることになっていました。

[日程]

公立高受験(一般入試)

卒業式

公立高合格発表(一般入試)

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■ 私だけ載っていない学級文集

この頃、先生の音頭で、ごく簡単な学級文集のようなものを作ることになりました。中3時代の思い出を簡単にまとめた文集を作ろうとのことでした。こうした文集では、「いい思い出」を載せるものと相場が決まっています。

しかし、私は何を書いていいか分からず、他の提出が遅い一部の生徒とともに、遅くまで何を書こうかと悩んでいました。悩んでいる間、一つの邪念が浮かびました。

「こんなもの、出したくない」

これまでどのような提出物も欠かさず出してきた私でしたが、こればかりは出す気が起きませんでした。私はこれまで、クラスでの人間関係でとても苦しんできました。そんな私が、「いい思い出」など書けやしません。また、そうした思い出をでっち上げて書くのも、非常に強い抵抗を感じたのでした。

結局、私は自分の分は出さないまま、放っておきました。先生はそのことを知ってから知らずか、私の分だけ載っていない学級文集を発行しました。

この学級文集、現在私の家には残っていません。おそらく、不愉快で処分してしまったのでしょう。

■ 昼食時の座席

先生はさらにクラスの思い出作りを推し進めました。昼食の時間、好きな者同士が仲良く一緒に給食を食べられるような、「昼食時の座席」を正式に決めることにしたのです。

このため、好きな者同士が集まって、自由に座席を決めだしたのですが、例によって、友達のいなかった私は孤立してしまいました。

このとき、私の側にいたPさんが、怒っていました。

「こんなことすると、友達がいないような人は孤立してしまうじゃない!」

このクラスで友達がいないような人と言えば、私ぐらいのものでした。もしかするとPさんは、緘黙で何も言えない私の気持ちを代弁してくれているのではとも思えました。

■ 人の好意を期待する悪い癖が……

Pさん・Qさんコンビや、元陸上部のRさんは、いじめられっ子で友達がいない私に、相変わらずとても親しく、優しくしてくれていました。

彼女たちの好意は、最初はありがたかったです。それが次第に、ありがたいどころかありがたすぎると感じるようになり、さらには、彼女たちのことがまるで「女神」のようにまで思えてきました。

この時期になると、また違ったことを考えるようになりました。私は自分の身に何か起ると、心のどこかで彼女たちの好意を期待する悪い癖がつき始めていることに気づいたのです。このままだと自分は、依存心が強いだめな人間になってしまう、と思い始めていました(彼女たちは悪くはないのですが)。

■ 入試説明会で見かけた意外な人物

◇ いじめっ子B君

さて、公立高校入試の前日になりました。この日はクラスの終礼が早めに終わり、その後、体育館で3年生全クラスの生徒を対象とした入試説明会が行われました。

説明会は、受験校別に行われました。私は自分が受験するε高校の説明会に参加しようとしたのですが、そこである男子生徒に声をかけられました。

「ようヒロシ、お前もε高校を受けるのか」

それは、いじめっ子B君でした。彼は特に学業面で私にちょっかいをかけ続けてきたいじめっ子だったのですが(第45話参照)、奇しくも、私と同じε高校を第1志望にしていたのです。

◇ 富条のことが好きだった?Mさん、36話ぶり登場

会場では、もう1人、意外な人物を見かけました。それは小学校の頃の同級生・Mさんです。Mさんは小学生当時、私のことが好きなのではないかという噂のたった女の子でした(第18話参照)。小学校卒業後、ともに同じ中学に進学したものの、クラスも離れ、これまで彼女とはほとんど接点はありませんでした。それが、このような場所で見かけるとは。同じ高校に進学することになるのでしょうか。

ε高校の受験倍率は1.7倍。3人に1人は落ちる計算です。例えば、私といじめっ子B君、そしてMさんのうち、誰か1人は落ちる計算でした。なお、この1.7倍という倍率は、私の地域の公立高(普通科)の倍率としては最も高い数字でした。

■ 受験当日

そして、いよいよ受験日がやってきました。受験は全て記述式で、2日間にわたって行われました(緘黙の私にとって、面接試験がなくて本当によかった……)。

1日目には、こともあろうに、悪意ある者が私の受験を妨害しようとするという、ちょっとしたアクシデントに見舞われました。悪質ないたずらとはこのことですが、このようなことに屈していてはいけません。

2日目最後の試験は、国語でした。最後の小論文問題が100字の字数制限だったのですが、私は100字きっちり埋めることができたところで、終わりのチャイムが鳴りました。

2日間にわたった受験が終わりました。人事は尽くした、後は天命を待つのみ、そういう心境でした。

[続きの話]

◇ [緘黙] 卒業式(前編) [ストーリー]