「行動抑制の子どもの生理学と心理学」

2010年01月15日(金曜日)

馴染みのない部屋に入ったり、見知らぬ人に会ったり、慣れない物に遭遇したりすると、極端に用心深くなったり、シャイになったりする-子どもの中にはこうした傾向の子もいるのですが、ハーバード大学の Jerome Kagan 教授らはこうした傾向を behavioral inhibition(行動抑制、行動的抑制)と名づけました。

これが、場面緘黙症に似ているのではないかとして、緘黙関係文献で引用されてきました。比較的新しいところでは、2009年に出たレビュー論文(Viana, 2009)があります。また、皆さんお馴染みの『場面緘黙へのアプローチ』や『場面緘黙Q&A』でも、Kagan 教授らの研究が引用されています。

そういうわけで、kagan 教授らの、行動抑制に関する論文を一つ読んでいました。私は専門家ではなく、自分自身の勉強も兼ねて読んだのですが、私には難しい内容でした。

◇ Kagan, J., Reznick, J.S., and Snidman, N. (1987). The physiology and psychology of behavioral inhibition in children. Child Development, 58(6), 1459-1473.

この研究によると、行動抑制の子どもは、見知らぬ状況に入ったときなどに、先天的に扁桃体や視床下部が反応しやすい(反応閾値が低い)のではないかということです。これは、他の行動抑制関連論文とともに、場面緘黙症の病因論に今でも影響を与えています。

※ ただし、この論文は「学習」(後天的)により、行動抑制の傾向が強くなったり弱くなったりする可能性を否定してはいません。『場面緘黙児への支援』で紹介されているような行動療法を用いて、少しずつ話せる場面を増やしていくというのは、学習の一例です。

この論文が私にとって難しかったのは、私がふだん読んでいる緘黙関連文献ではあまり見かけない生理学(特に、神経生理学?)の議論が含まれていたからです。扁桃体や視床下部のほか、大脳辺縁系とか交感神経とか、そうした用語が数多く出てきます。ですが、それだけに、場面緘黙症を神経生理学?の視点から考えるのに役立ち得ると思います。