[緘黙] 卒業式(前編) [ストーリー]

2010年02月09日(火曜日)

このブログでは、私が緘黙だった頃のことを連載形式で書き続けています。今回は中学生編の第28回です。通算第55話をお届けします。

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■ 入試翌朝、地元紙に問題と解答が載る

公立高校の一般入試(本命校受験)が終わった次の日の朝のことです。地元の新聞に、前日の入試問題と、予備校講師が解いた解答例が掲載されました。

私はこれを見て、さっそく答え合わせをしました。合格点のボーダーラインは予め聞いていたので、採点をすれば合否もだいたい見当がつきます。

採点の結果、私の点数はボーダーラインとほぼ同じ点数でした。合格の可能性は五分五分といったところだろうか、そう思いました。

■ 友達ゼロの私、卒業式に大した思い入れもなく

入試の翌日にあたるこの日には、中学校の卒業式がありました。私は卒業生として出席しました。

私にとって、小学校以来2度目の卒業式です。過去にも書きましたが、小学校の卒業式には苦い思い出があります。クラス最後の終礼のとき、当時担任のY先生に、私一人だけが「ありがとうございました」と言えなかったことです(第27話参照)。「卒業式」というと、こういうドラマチックなことが起るような気もするのですが、今回はどうなのでしょうか。

私は今回の卒業式に大した思い入れは持っていませんでした。卒業式を最後にクラスメイトと離れ離れになると言われても、決まった友達も、気になる異性(?)もいなかった私には、大したことのようには思えなかったのでした。

一方、高校受験には強い思い入れを持っていました。なにしろ、「緘黙治すより勉強の方が大事」(第30話参照)と考えるほど、勉強に力を入れていた中学生活です。「志望する公立高校の合格を決めたとき、そのときこそが自分の真の卒業だ」そんなことを考えていました。

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■ 卒業証書を受け取る

卒業式は、粛々と進められました。

式のメインである卒業証書授与は、卒業生一人一人が壇上に上がって、校長から証書を授与するというかたちで行われました。

証書を授与するとき、名前を呼ばれて「ハイ」と答えられるかどうか、そのことを気にする緘黙の子がいるという話を聞くことがあります。あいにく私はこのときどうだったかは、覚えていません。

■ 最後の終礼を前に

体育館で卒業式が終わった後、私たち卒業生は教室に戻りました。この後先生が来て、最後の終礼が行われます。

先生を待つまでの間、クラスの生徒たちは、教室の窓側(窓側に暖房がある)に集まって、友達同士楽しそうに最後の語り合いをしていました。

そのような友達がいなかった私は、教室の窓側から離れたところで、一人ポツンとしていました。いつも私に親しくしてくれる女子たちも、いつものいじめっ子たちも、このときばかりは私に構おうとはしませんでした。

このとき、様々な思いがめぐりました。

◇ 寂しい

まず、「友達なんていない方が楽しい」と思っていた私ですが、さすがにこのときは寂しいと感じました(勝手な話ですが)。私は中途半端な少年でした。「友達なんて」と考えてはみても、100%そう割り切ることまではできなかったのです。

卒業式に大した思い入れがなかったとは言え、この中学生活の最後を飾る大事な場面で私に構おうとする人が誰一人いなかったことは、当時の私には残念なことのように思えました。やはり自分は皆にとって大した存在ではなかったのではないか、そんないじけたことまで頭をよぎりました(いじめっ子が関わってこなかったのは良かったのですが)。

◇ 「卒業までの我慢」が終わる

もう一つ、私は1学期からいじめを受け続けるなどしていましたが、「卒業までの我慢」と自分に言い聞かせ、これまで学校に通い続けました。それが今日で終わりなんだ、そういうことを、今日を最後に離れ離れになるクラスメイトを見ながら思っていました。

ですが、これで安心はできませんでした。自分のような少年は高校に入ってもまたいじめに遭うのではないか、そんな気がしてなりませんでした。高校生にもなると、心身ともにさらに大人に近づきますから、これまでよりさらに恐ろしいいじめに遭うのではないかとも思えました。「卒業までの我慢」が終わったにもかかわらず、開放感は全くありませんでした。

◇ ?

そんなことを考えていたところ、

「富条君」

廊下付近にいたあるクラスの女子生徒が、私に声をかけてきました。

「富条君、が話したいことがあるみたいなんだけど…」

[続きの話]

◇ [緘黙] 卒業式(後編) [ストーリー]