[緘黙] 合格発表 [ストーリー]

2010年03月22日(月曜日)

私が緘黙だった頃のことを連載形式で書いてきた「緘黙ストーリー」、今回は中学生編の第30回です。通算第57話をお届けします。中3編は今回が最終回です。

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■ 本命校の合格発表を見に行く

卒業式が終わってしばらくして、公立高校の合格発表の日がやってきました。

ε高校という公立高を受験した私は、合格発表を見に行くべく、受験票を手にε高校へ向かいました。

私はこの高校を本命としていたため、なんとしても受かっていてほしいところでした。しかし、このε高校は倍率が1.7倍と、この地方の公立高(普通科)としては最大の激戦校でした。私の自己採点では合格の確率は五分五分で、どうなるかは発表を待たなければ全く分かりませんでした。

さて、ε高校に着きました。学校では、合格者の受験番号が記載された掲示板が張り出されていました。私は掲示板を見て、自分の受験番号を探しました。

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私の受験番号は見つかりませんでした。


不合格---その3文字が、私の頭をめぐりました。

奇妙なことに、この不合格という事実に、私は納得してしまいました。私は幼少の頃より失敗体験が多く、加えて、いじめを受けたり、父が亡くなったり、さらには場面緘黙症になったりと、悪いことが続いてきました。それだけに、自分らしいや、と納得したのです。

そこへ、ちょうど私と同じ時間帯に合格発表を見に来ていたいじめっ子B君がやってきて、私に話しかけてきました。

「ヒロシ。俺、落ちたよ。不合格だった。お前はどうだ?」

いじめっ子B君は私の受験票をのぞきこみ、掲示板と照らし合わせ、私が不合格であることを確かめました。私の様子を見たいじめっ子B君は、憤慨しました。

「ヒロシ!お前、どうしてそんなに悔しそうにしないんだ?俺、スッゲー悔しいぞ!!」

そう言い放ち、立ち去ってしまいました。

※ どちらにしろ、私は外では無表情な緘黙少年だったので、悔しい表情を見せることはなかっただろうと思います。

■ 私立η高校に進学

先にもお話したように、このε高校は倍率が高い激戦校で、数多くの不合格者が出た様子でした。後に知ることになるのですが、私やいじめっ子B君などとともに、ε高校の受験説明会に来ていたMさん、彼女もまた不合格でした。この3人は、ともに、滑り止めで合格した私立η高校に進学することになります。

この不合格は、後の私に大きな影響を与えます。そして、私の緘黙症状の延遷(長引き)とも間接的に関わってくるのですが、詳しくは後の緘黙ストーリーでお話します。

■ 中学3年のまとめ

◇ 緘黙の程度

中3の頃には、卒業アルバムの写真撮影でぎこちないながらも笑ったり、交番でなんとか道を聞きだすことに成功したりと、一時に比べれば緘黙は軽くなっていたようです。人によっては、治ったと見る人もいるかもしれません(何をもって「治った」とするかは問題ですが)。ただ、学校における私の無口・内気の程度は相変わらず極端で、私ほど極端な生徒は、少なくとも私の周辺にはいませんでした。

◇ 緘黙を治すより、高校入試のことを考えていた

当初は、緘黙を自分の力で治したい!という思いもありましたが(ただし、当時は自分が学校等で話せないのは性格の問題と考えていました)、高校入試が近づくにつれ、そうした思いは薄れていき、次第に勉強のことばかりを考えるようになっていきました。このためかどうかは分かりませんが、この1年間で、私の緘黙状態に少なくとも目立った改善はありませんでした。

◇ 学校での人間関係、家庭問題、学業不振に悩む

学校生活では、いじめに遭うなど人間関係に深く悩み、「卒業までの我慢」と自分に言い聞かせて登校を続けていました。加えて、家庭問題や学業不振も重なり、悪いことばかりが続きました。この1年間は、生きた心地がしませんでした。

◇ 私に親しくしてくれたクラスメイト

こうした悪い時期だったためか、私に親しくしてくれた元陸上部のRさんや、Pさん・Qさんコンビが、かえって強く印象に残りました。彼女たちは本当によくしてくれて、私は「どうして僕のために、そこまでしてくれるのか」と何度心中で彼女たちに尋ねたことか分かりません。また、親切にしてもらえたこと以前に、私のような無口な者をクラスメイトとして気に入ってもらえたことが、私にはなにより嬉しかったのでした。学校での人間関係で悩む中、私が我慢して学校に通えたのも、彼女たちの存在が大きかったです。このうち元陸上部のRさんと同じクラスになったのには、私に対する学校側の特別な配慮が働いていた可能性があったことも忘れてはなりません。

なお、私はその後、彼女たちとは別々の高校に進学し、二度と会うことはありませんでした。残念でしたが、私は彼女たちの好意に依存する悪い癖がつきつつあったので、依存を絶つためにも、これでよかったのかもしれないと思いました。ただ、私は彼女たちにあれだけお世話になっていながら、「ありがとう」の一言をどれだけ伝えただろうかと後で思うようになり、後悔を残すことになりました。彼女たちには、本当にもらってばかりでした。


最後に、私の中学3年間のまとめをして、緘黙ストーリー・中学編を締めくくりたいと思います。

[続きの話]

◇ [緘黙] 中学時代のまとめ [ストーリー]