[緘黙] 高校入学 [ストーリー]

2010年04月15日(木曜日)

新学期スペシャル!今回も引き続き緘黙ストーリーです。今回は高校生編の第2回です。通算第60話をお届けします。

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私はη高校の入学式の日を迎えました。

■ η高校

私が入学するη高校は、男女共学の全日制私立高校でした。η高校は生徒指導に熱心な学校で、校則も厳しめでした。男子の制服は伝統的な詰襟学ランでしたが、女子は現代的なブレザーで、特に女子のブレザーは可愛いと(一部で)評判でした。

η高校には不良が多いという噂がありましたが、通学していくうちに、それは全くの間違いであることに気づくことになります。いずれにせよ、世間から悪いイメージを持たれている私立高に進学した以上、高校在学中にはしっかり勉強して、大学受験で挽回しなければなりませんでした。緘黙を治すとか、勉強以外のことを考える余裕はないと私には思えました。

■ 特別進学コース

私は普通科に入学したのですが、この普通科の中には、「特別進学コース」というコースがありました。これは難関大学合格を目標としたコースで、受験に最適化したカリキュラムを組み、ハイレベルな授業を行っていました。

私はこの特進への進学を希望し、入学前に申請したのですが、入学式の日のクラス発表で希望が通らなかったことを知りました。特進は毎年定員を超える希望者があるため、入学試験の点数を基準に選抜が行われると私は聞いていました。ですから、どうやら自分は入試時の点数が悪かったのだろうとそのときは思いました。

公立高に落ち、特進にも落ち、私としては底からのスタートでした。

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■ 担任A先生のお話

◇ A先生の第一印象

入学式を終えた後は、最初のホームルームでした。

「おはよう!」という元気な一声とともに教室に入ってきたのが、担任のA先生でした。

このA先生の第一印象は、私には鮮烈でした。こういうものは最初が肝心です。

HRは、先生の自己紹介から始まりました。担当教科は国語。20代の女性の先生で、「旦那がいます」とのこと。とても綺麗な先生でした。ただ、お身体が少しぽっちゃりされていて、そのため一部の悪意ある男子生徒から、後にその体型を陰でからかわれてしまいます。

◇ 特進コース編入のチャンス

続いて、A先生は、特別進学コースについてお話されました。

「このクラスには、特進を希望したものの、入れなかった人がたくさんいます。しかし、そのあなたたちにも、実は特進に進級するチャンスがもう1回残っています。それは2年のクラス替えです。この1年間しっかり勉強して成績を伸ばせば、2年のクラス替えで特進に編入する可能性が出てくるのです」

「特進に入れなかった人が2年でチャンスをつかめるよう、私はこの1年間、ハイレベルな授業を展開していく方針です。特進への編入を希望しない人にはつらいかもしれませんが、頑張ってついてきてほしい。このクラスの隣には特進クラスもあり、勉強環境はいいです」

このお話を聞いて、私はA先生を心強く思うとともに、勉学意欲をかきたてられました。当面の目標を、2年のクラス替えで特進に編入することに定めました。

■ 隣の特進クラスにMさんが

かくして、高校生活の初日は終わりました。

帰ろうとしたところ、隣の特進クラスに思わぬ人物を発見しました。それは、私の小学校の頃の同級生・Mさんです。Mさんについては、小学校のときに、私のことが好きではないかという噂があったのですが、結局真相不明に終わっていました。

Mさんは私と同じ公立高を受験したはずですが、この高校にいるということは、どうやら公立は私と同様不合格だったと見えます。それにしても、私が入れなかった特進クラスに、しかも隣のクラスにいるとは、なんとも……。

■ 緘黙の私が自己紹介!最初が肝心!!

2日目。1時間目はホームルームでした。

「まずは最初だから、みんな自己紹介をお願いね。出席番号順で」と、A先生はいきなりおっしゃいます。

私はあわてふためきました。私は高校に入学してもあお、校門をくぐると「緘黙少年に変身!」のスイッチが入っていました。その私が自己紹介だなんて……。

ですが、なんとか頑張って話をしてみようと思いました。私は昨日のA先生の第一印象のことを思い出しました。最初が肝心なのです。最初から何も話ができなければ、その後もずっと緘黙が続いてしまいそうに思えました。私の緘黙は既に最悪期を脱していて、全く何も話せないなんてことはないはずだ、とも自分に言い聞かせました。

出席番号順で私の番がきたところ、私はなんとか自己紹介ができました。相変わらず大きな声では話せず、ぎこちない感じでしたが、最悪の結果は免れることができました。

私が自己紹介をした直後、A先生は妙なことをおっしゃいます。

「富条君は中学校のとき(中略)だったんだってね。期待してるわよ」

その瞬間、「おおーっ!」という驚きの声とともに、クラス全員の視線が私に集中しました。い、いったい何なのでしょうか。私、中学のとき大したことしてないんですけど……。

その後、40人クラス全員が自己紹介を終えましたが、先生からコメントをいただいたのは、私一人だけでした。

何はともあれ、なんとか無事に自己紹介を終え、ほっとしました。しかし、この私の自己紹介を見て、私に目をつけた生徒がいました。

[続きの話]

◇ [緘黙] 環境変わったら、いじめられなくなった [ストーリー]