新しい緘黙の洋書(中間報告)

2010年05月18日(火曜日)

Helping Children With Selective Mutism and Their Parents: A Guide for School-Based Professionals場面緘黙症をテーマにした洋書 Helping Children With Selective Mutism and Their Parents: A Guide for School-Based Professionals が発売されました。日本語に訳せば、『場面緘黙児とその両親への支援:学校に基礎を置いた専門家への手引き』といったところでしょうか(訳が下手で、すみません……)。

専門家が書いたまとまった緘黙の本(英語)としては、Helping Your Child With Selective Mutism: Steps to Overcome a Fear of Speaking(邦訳『場面緘黙児への支援』)以来5年ぶりとなります。

Amazon.co.jp では 2010/5/26 という日時が記されていたので、てっきり今月26日発売と私は思い込んでいたのですが、既に発売されています。Googleブックスでも一部を無料で読むことができます。

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この本、私も入手済みです。といってもまだ読了したわけではなく、全体をざっと読んだのと、第2章までを読んだだけなのですが(ページ数にして全体の3分の1。全部で7章まである)、とりあえず中間報告というかたちで感想等をまとめてみます。

■ 著者

まずこの本の著者ですが、ネバダ大学ラスベガス校教授の臨床児童心理学者 Christopher Kearney 氏です。同氏はこれまで緘黙の子を支援した経験があり、緘黙に関する論文も出しています。また、緘黙以外でも論文、著書があります。この著者の詳細についてはなぜか本ではあまり触れられていないのですが、ここに記しておきます。

■ 行動療法、学校に基礎を置いた専門家向き

本の内容は、主に行動療法により、緘黙の子を支援する方法を具体的にまとめたものです。英語圏らしいです。本では "evidence-based techniques"(科学的根拠に基づいた技法)を紹介しているとのことですが、数ある治療法のうち行動療法は、英語圏では確かに研究が進んでいます。

同様に行動療法に基づいた支援技法を紹介した本として、カナダの Helping Your Child with Selective Mutism(邦訳『場面緘黙児への支援』)がありますが、今回の本は学校に基礎を置いた専門家(日本で言うと教師やスクールカウンセラー等)を対象とした本であるのに対し、カナダの本は保護者が対象です。

専門家向け、行動療法というと、むしろイギリスの The Selective Mutism Resource Manual に近いです。ただ、今回の本は著者がアメリカの大学所属ですし、アメリカ英語で書かれているなど、どちらかと言うと北米向きの本なのかなと思います(出版社のオックスフォード大学出版局はイギリスの大学関係ですが)。

■ 2章までを読んで

第1章(場面緘黙症の概説)と第2章(場面緘黙症児の評価)までを読んだ感想を書きます。

◇ "refuse to speak" "reluctant to speak" "unwillingness to speak"

気になるのは、"refuse to speak" "reluctant to speak" "unwillingness to speak" という表現が多用されていることです。

確かに話すことができない、あるいは話すのが苦手な緘黙の子にとって、発話は必ずしも楽しいものではなく、そうしたことはあまりしたくないと思う子も少なくないかもしれません。しかし、このような言い方を多用すると、緘黙の子は自らの意思で緘黙しているという誤解をも与えてしまいやしないでしょうか(私は英語には自信がないのですが)。もっとも、著者は、社会不安がもとで緘黙している子がほとんどだと書いてはいるのですが。

◇ 分かりやすい

ですが、平易な英文で分かりやすく、具体的かつ実践的で、全体的によくまとめられています。第1章では不登校について触れた箇所があるのですが、英語圏の緘黙関連文献で不登校について言及したものは最近見かけず、興味深かったです。第2章では、重要でありながら類書ではこれまで(全く?)紹介されることのなかった Selective Mutism Questionnaire(場面緘黙症質問票)が載っており、これは役立つでしょう。

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◇ 続・新しい緘黙の洋書