場面緘黙症の治療体系もどき(2) 

[ご注意]

この内容は少々古いです。最近の記事をご覧になりたい方はこちらへ(01/06/2007)。

http://smjournal.sakura.ne.jp/kanmoku_kiso_treatment.html

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「場面緘黙症の治療体系もどき(1)」の続きです。

今回は、「こういう治療法は一般におすすめできないよ!」という治療法をメインにご紹介しています。

具体的には、家族療法精神力動療法言語療法などです。

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■ 家族療法(おすすめ度★☆☆)

家族療法は、多くの本に取り上げられる治療法の一つです。

しかし、最近は、家族病理は緘黙症の主要な原因とは考えられなくなってきているので、この療法は今や時代遅れです。

ただ、家族に何らかの問題があって緘黙症になったという場合もないことはないようなので、その場合には家族療法も有効かもしれません。

■ 精神力動療法(おすすめ度★☆☆)

母親の過干渉や父親不在など、緘黙児がなんらかの精神的な葛藤を持っているのではないか、という考え方にもとづいた治療法です。精神力動療法では、そうした葛藤に焦点を当て、患者に葛藤を自覚、解決させます。

昔はこういう精神力動というものが場面緘黙症を引き起こす要因として注目されていたのですが、最近は、もっと生物学的な要因が重視されています。要するに、精神力動療法も古い治療法です。

■ 言語療法(おすすめ度★☆☆)

日本ではどうか分かりませんが、英語圏には、何やら、発話の訓練まがいのことをする医師が少なからずいるようです。

これも、古い治療法と考えてよいでしょう。ごく一部の、言葉の遅れなどがある緘黙児にはこの治療法も役立つかもしれませんが、一般の緘黙児にはその有効性が疑問視されています。それどころか、かえって緘黙児に話すことへの恐怖感を増幅し、緘黙症を悪化させかねません。

心理学関係の解説書(英語圏)には、緘黙症には言語療法が有効だと誤って説明しているものが多く、たちが悪いです。

■ 集団療法(おすすめ度?)

ときどき場面緘黙児に集団療法をするという話を聞くのですが、手元に情報が少なく、私には詳細は分かりません。

■ 音楽療法(おすすめ度?)

同上。

■ まとめ

一口に場面緘黙児といってもさまざまですから、それぞれの子供に合った治療法があるはずです。子供によっては、家族療法や言語療法が効果的な場合もあるかもしれません。

これまでにご紹介した治療法の数々を組み合わせ、その子に応じた治療法を体系づけるのが正解なのでしょう。

(おしまい)


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[参考にしたもの]

(スタイルが二転三転しますが、今後は APA style を参考にリストします)

■ 本

☆ Dow, P. S., Sonies, C. B., Scheib, D., Moss, E. Sharon, & Leonard L. Henrietta. Practical guidelines for the assessment and treatment of selective mutism In Hertzig, E. M., & Farber, A. E. (Eds.). (1996). Annual Progress in Child Psychiatry and Child Development 1996 (pp. 452-472). New York: Brunner/Mazel.
☆ Garcia, M. A., Freeman, B. J., Francis, G., Miller, M. L., & Leonard, L. H. Selective mutism In Ollendick, H. T., & March, S. J. (Eds.). (2004). Phobic and anxiety disorders in children and adolescents : A clinician's guide to effective psychosocial and pharmacological interventions (pp. 433-456). New York: Oxford University Press.
☆ Ronen, T. (2002). Cognitive-Constructivist Psychotherapy With Children and Adolescents (pp. 77-98). New York: Plenum.

■ ウェブサイト

☆ Cole, W. (2006). Why Abby Won't Talk. Time. Retrieved 00:50, April 22, from http://
www.selectivemutismcenter.org/TIME.htm
☆ Schwartz, H. R. (2005). "Shy" child? Don't overlook selective mutism. Contemporary pediatrics. Retrieved 00:50, April 22, 2006 from http://
www.contemporarypediatrics.com/contpeds/
article/articleDetail.jsp?id=170282&sk=&date=&pageID=2.



コメント

やっぱり行動療法ですか?

大変緻密な情報提供に脱帽しております。
大学院2年になって本格的に論文に取り組まないと、と
焦りつつ、緘黙症の実態をまずは教師に知ってもらうこと、どのように研究を進めるのかで皆目悩んでいます。先行研究はやはり日本のものは見あたらないでしょうか?ご紹介くださった療法の中では行動療法が
一番効果があるようですね。

身近な動物を介在した2者間でのコミュニケーションを対象に、動物園などの娯楽施設での自然観察を構想しています。ゼミの先生は当然、専門外ですが、取りあえず、障害児や臨床の先生方には専門外でも口コミから始めたところです。
年に数回出没している研究会で取り上げて欲しいテーマにリクエストしてみました。
自分で提言できれば、苦労しないんですが、その場で
去年エクスポージャーまがいを受けてヤクザ並みのパーソナルスペースがより拡大してしまいました。

TIME誌で取材されたのは喜ばしいことかもしれませんが、あんまり大事にはせずに、認知度は高めて、何よりも当事者が話せる環境を模索していきたいですね。
よきアドバイスをよろしく御願いします。

はじめまして

中2の場面緘黙で不登校の娘がいます。
心療内科で4年生の時からプレイセラピーを受けていますが、全く効果も変化もありません。もう3年以上になりますが・・・。先日SSRI処方されましたが、娘が飲むのをいやがり、私もなんか怖いので結局飲みませんでした。ある緘黙サイトで、娘が処方されたのと同じ薬を飲んでしゃべれるようになったという人がいましたが、飲むのをやめた途端もとに戻ったというような書き込みがありました。あと、しゃべる訓練的なものも意味がありませんでした。以前通っていたフリースクールのようなところで強引にしゃべらされ、ずいぶんとしゃべれるようになりましたが、環境が変われば元通りです。でも、うちの娘の場合、症状は軽いほうなので多少プレシャーかけてしゃべらせるというのは悪くはないと思います。緘黙の症状も背景もひとりひとり違うので、どの療法がいいというのはないのかもしれませんね。強いて言えば「緘黙場面の環境整備と良い出会い」かな。

ゆきんこさんへ

コメントありがとうございます。

>大変緻密な情報提供に脱帽しております。

正規の大学院教育を受けていらっしゃるゆきんこさんがそうおっしゃると、恐縮します。私は経済学士で、緘黙については素人です。その上、まともな文章を書くことすらおぼつきません。よく調べて書いてはいますが、生兵法でやっているようなところがあるので、間違いがあるかもしれません。間違いがあれば、ゆきんこさんや多くの方々から謙虚にご指摘を受けたいと考えています。

私は場面緘黙症の治療法を調べるために色々と英語圏の文献等を渉猟しましたが、本によって書いてあることがまちまちです。まだこれといった方法が確立されていないのでしょう。ですが、どうも行動療法が、今のところ最も研究され、効果があると見られているようです。

日本でも場面緘黙症(学界では「選択性緘黙症」ですかね)の研究が全くなされていないわけではなく、国立情報学研究所のGeniiというサイトで「緘黙」と検索すれば、論文情報が見つかります。
http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp
論文の内容は、タイトルを見る限り、こういう緘黙児の事例があったという報告ものが多いようです。私も日本の論文を読んでみたいのですが、大学紀要や学術雑誌の入手は私のような者にとってハードルが高く、現在のところ参照していません。なにはともあれ、ゆきんこさんの研究を応援しております。

緘黙症は、親や罹患している本人すらその名を知らず、正しい対応がなされていないケースも少なくないのではないかと考えています。なんとかしたいものです。こちらこそ、宜しくお願いいたします。

cuminさん、はじめまして。

私は実際に緘黙児の治療にあたっているわけではなく、英語圏の文献を調べてああだこうだと書いているだけです。しかも、精神科医でも臨床心理士でもありません。素人です。やっていることは机上の学問(以下)のことですから、実際に治療の現場をご存知の方からいただくご意見は貴重だと考えております。

もともと緘黙の治療というのは時間がかかるものですが、3年間プレイセラピー(ブログでは「遊戯療法」と書いていますが)を施して、いまだに効果がないというのは考えさせられます。

緘黙児に対するSSRIの処方は、緘黙症が社会不安障害と関係があるという考え方に基づいているようです。日本で発売されているSSRIは、ルボックス、デプロメールあたりでしょうか。副作用が少ない新型の抗うつ剤と言われてはいます。ですが、薬は不安ですよね。アメリカでは未成年の抗うつ剤は自殺を誘発させる恐れがあるなどと警告されたようですが、どうなのでしょう。

cuminさんの娘さんは、プレッシャーでしゃべることができたんですね。強引に話をさせる方法は最もやってはいけないとされることが多いですが、cuminさんのお話をうかがうと、治療法の選択肢の一つとしては必ずしも排除できないのかな、とも思います。

>強いて言えば「緘黙場面の環境整備と良い出会い」かな。

なるほど。やはり環境と出会いなのでしょうか。

小児科の臨床心理士です

かん黙児のプレイセラピーも行っている小児科の臨床心理士です。だいぶ以前「かん黙」で検索した時は本人や親のサイトが全く見つかりませんでした。「発達障害」のサイトはたくさんあるのに、「やはり、かん黙の方は言葉で表現することが苦手な方が多いので・・・」と思っていました。先日このサイトを見つけて充実した内容に感激しています。日本では「かん黙」についての専門書は河井先生の本しかなく、臨床心理学会等でも ケースとしての報告はありますが、論文や研究は少ないです。私ももっと多くの研究がされればいいのにと思ってきました。書籍も早速購入しました。英語の文献も読んでみようと思っています。
 「かん黙」は、「不安から自分を守る1つの方法」なのですが、本人はコントロールできず環境に反応させられ固定させられてしまうので本当に苦しい症状です。
 プレイセラピーで全く効果がなかったという書き込みがありましたが、「発語」のみに焦点を当てて「効果」とするならば、プレイセラピーのみで効果を見るのは難しいと言われています。
 プレイセラピーは、不安を起こしやすくしていた発達的問題が改善され、不安の対処にに使っていた多くのエネルギーを使わずにすむようになり、コントロール可能な不安への対処方法がとれるようその子の本来の力を高めることがねらいとしています。本人の力が高まった上で、不安を起こす環境要因が取り除かれたり、新しい環境や環境の変化がきっかけになり、「発語」が可能となると思っています。
 不安によって、人はマイナス思考の連鎖にはまりこんだり、何かにこだわって動きがとれなくなります。抗うつ剤は、このような不安の悪循環の連鎖を断つ作用があります。薬が「かん黙」に効くのではなく、薬が無駄なエネルギーの消耗を押さえる働きをするのだと思います。(風邪薬が風邪を治すのではなく、体力の消耗を防いで自然治癒力を引き出すのと同じです。)また、「薬を飲む」という行為によって新しい環境を自分が積極的に用意するために効果があるのではないでしょうか。

けいこさん、はじめまして。

現場で治療にあたっていらっしゃる方からこういったコメントをいただけるのは、大変勉強になります。私は素人ですので、ブログの内容については、よく調べて書いてはいるものの、大きな間違いがあるかもしれません。私のような素人ではなく、もっときちんとしたバックグラウンドを持った方が、より正確な情報に基づいた緘黙サイトを作られる日が来れば、このブログの役割は終わります。それまでの間は、このブログを通じて、みなさんと一緒に勉強していけたら、と考えています。

プレイセラピーについて、お教えくださり、ありがとうございます。なるほど、治療の目的は発語ではなく、やはり不安に対処できるようにすることだったんですね。緘黙児が不安を感じやすいのはなぜだろうと疑問に思っていたのですが、環境などの発達的問題が関係している可能性があるのでしょうか。

薬については、脳内のセロトニンの伝達を正常にして不安を和らげる、という程度の理解だったのですが、本人の力を高めることによって、治癒力を引き出すという働きがあるとまでは考えませんでした。

私自信、もっと勉強し、これまでの記事の中に不適切な内容があれば、訂正、改訂したいと考えております。

「不安」について

◆ 当事者の声ほど貴重な物はないと思います。ブログの他の部分も読ませていただきましたが、富氏は、新しい物を創り出していく力があってすごいと思います。(語学力もあるんですね。羨ましい)こちらこそ学ばせていただこうと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 「不安」についてですが、新しい環境に入った時、誰だってすごく不安を感じるのは自然なことですよね。今まで私がお会いした緘黙の子どもさんの中に、言語発達がゆっくりな子、言語発達はいいけどその場の状況を把握したり予想したりするのが苦手な子、感覚が鋭くて何かにこだわりを持ちやすい子がおられました。「ここは一体どういう所」か把握しにくい時、不安が大きくなるのも当然です。凄い不安がおそったとき、パニックになったり、泣いたりぐずったり、おなかが痛いと訴えたりすると、周りの大人が対応できます。でも、引っ込み思案で表現全般が苦手だったり、それまで親に不安を表現した体験が少ないと、不安を抱え込んでしまいます。その時、お母さんに不安を率直に表現できない状況だった場合もあります。
(実は私これまでブログという物に書き込みをしたことがなく、先日が初めてで今日2回目です)

けいこさん、コメントありがとうございます。

ブログの他の部分については、皆様の注意を惹くためにわざと過激な書き方をしているものがあります。そういう内容の記事をご覧になった場合は、そういう意図で書いたものだとご理解ください。

不安について、ご教授ありがとうございます。よく分かりました。言われれてみれば、私も言葉が遅く、最初に言葉を発したのが3歳の頃でした。もっとも、私の場合、これが緘黙と関係があるのかどうかは分かりませんけれども。

アメリカの緘黙症支援団体SMG−CANのサイトで調べてみたのですが、乳児の間でも、不安を感じやすい子とそうでない子が分かれるそうですね。緘黙児は、生まれながらにして不安を感じやすいタイプに多いとも考えられているようです。SMG−CANのサイトでは、脳の偏桃(amygdala)と呼ばれる部分と不安との関係について説明されています。

けいこさんのような方と少しでも渡り合うためにも、心理学の勉強に、より力を入れなければなりませんね。

◆教えていただいたSMG−CANのサイトをのぞきましたが、私は語学力が今ひとつで読むのに時間と根気がすごく要りそうです。「脳の偏桃(amygdala)と呼ばれる部分と不安との関係」が指摘されているのですね。とにかく脳の機能的特徴や発達の速度は1人1人違うんだという理解が大切なのではないでしょうか。日本の教育って「みんなと同じようにしなあかん」というのがありますよね。2004年に「発達障害者支援法」ができて、最近やっとやっと学校現場にも「個性や発達の違いに応じた教育」が入ってきました。でも、意識も制度もまだまだこれからです。本当に、日本はアメリカから何十年も遅れてますよね。

 「不登校」や「非行」は目立つし、「軽度発達障害」の子は学校で先生も対応に苦労するので注目され、研究もされます。「緘黙」は本人がどんなにしんどくても現場の先生も親もあまり困らないために、注目されにくいです。だからこそ、富氏のような当事者の声がとても大切だと思います。SMG−CANのような団体が日本でも生まれる大きな流れの中の第一歩じゃないですか。

 ブログについては「臨床心理士の仕事」「共感」のへんですね。ここを読んだ時は正直ため息が出ました。国家資格でないため、身分が不安定です。スクールカウンセラーの全国中学校配置ということが急に決まったため、この5年間で臨床心理士が大量生産され、質的に問題視されているのも事実です。私自身うまくいかなかったケースもたくさんあります・・・。自分のやってることが役に立ってるんだろうかと落ち込むこともあります。カウンセラーの「偽善」肝に銘じておかねば・・・と思いました。でも読んだ時、おっしゃっていることがおかしいとは思わなかったし、私自身が攻撃されてる感じもしませんでした。
 私は大学で心理学を専攻した後、教育相談や精神科などで勤めました(常勤ではなくパートです)その間夫の転勤について引っ越しながら、子どもを2人育てました。今は週3日働いている主婦です。いろいろ書いているのは勉強というより、自分の臨床の中から感じたことなので「ご教授」という立場ではありませんので・・・。それよりも、今考えると、いきなり「臨床心理士です」と書き込みして、びっくりされたんじゃありませんか?ごめんなさいね。

コメントありがとうございます。

不安については、Selective Mutism and Childhood Anxiety Disorders のFAQのページに、そう書かれてありました。なぜ緘黙症になるのか、といったあたりの説明のところです(「偏桃」ではなく「扁桃」でした。スミマセン…)。ただ、SMG−CAN のサイトに書いてあることが絶対とは限りません。けいこさんがおっしゃったような理由で緘黙になる子だっているのですから。近いうちに、もう少しよく調べてブログで取り上げてみようかと思っています。

「発達障害者支援法」は、恥ずかしながら初めて聞きました。非常に画期的な法律ですね。緘黙症は発達障害には入らないのかもしれませんが、大事にしたい法律です。

>「緘黙」は本人がどんなにしんどくても現場の先生も親もあまり困らないために、注目されにくいです。

なるほど、もっともです。単なる「大人しい子」と見られるのかもしれません。その上、学力があろうものなら、「大人しくて勉強のできるいい子」などと見られ、緘黙が問題視されなくなりそうです(私自身、似たような経験があります。学力の方はいまひとつでしたけれども)。

>SMG−CANのような団体が日本でも生まれる大きな流れの中の第一歩じゃないですか。

ありがとうございます。それに一歩でも近づけることができればと思っています。これはある方から教わったのですが、心理学や精神医学は、元々は当事者同士のピアなセルフヘルプから始まったそうですね。当事者同士の結びつきは大事にしたいと思っています。

私は臨床心理士についてあれこれ書いていますが、本当は必ずしも心理士が嫌いなわけではありません。あまりお気になさらないでくださいね(ただ、批判精神は大事にしたいとは思っています)。

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