[緘黙] 富条君は、何の問題もありません! [ストーリー]

2010年06月01日(火曜日)

このブログでは、緘黙とともに歩んできた私の来し方を連載形式で振り返っています。今回は高校生編の第4回です。通算第62話をお届けします。

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「よく遊びよく学べという言葉があるが、君達には目標があるはずだから、ただひたすら勉学に励むように」

校長の教えです。

■ 部活動に入らず、勉強三昧の毎日

私の大目標は、高校受験の失敗を大学受験で取り返すことでした。そのための当面の目標が、この1年間で好成績を上げ、来年4月のクラス替えで特別進学コースに入ることでした。

同じ高校に通う中学時代の同級生・いじめっ子B君も、小学校の頃の同級生・Mさんも、ともに特進クラスに在籍していました。この2人は、ともに私と同じ公立ε高校に落ち、現在の高校に通っている生徒です。私だけが特進に入れなかったのは情けないという思いもあり、なおさら勉強意欲がかきたてられました。特にMさんはクラスが隣ですし、通学路でもわりと顔を合わせるため、どうしても意識してしまいます。

こうした次第で、私は高校入学以来、勉強第一の生活を送っていました。勉強以外のこと、例えば緘黙を克服するとか、そうしたことはあまり考えずに、とにかく勉強ばかりしていました。部活動にも入りませんでした。部活動をする時間があれば、勉強をするべきだと考えていたからです。そうして様々なことを犠牲にしながら勉強のための時間を作り、毎日深夜遅くまで勉強を続けていました。

なお、塾には通っていませんでした。経済的な理由からか、親には通わせてもらえませんでした。これにより、私の行動範囲はほとんど家と学校だけに限定されていました。

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■ テストで、びっくりするほどの好成績

勉強の成果を発揮する場所は、学校で行われた定期考査、実力テスト、模擬試験等でした。

私はこれらのテストで、自分でもびっくりするほどの好成績を上げるようになっていきました。これにより、私はクラスで最も成績優秀な生徒として担任のA先生から大きな信頼を得るとともに、クラスでも有名な存在になってしまいました。

※ 自慢たらしい話、すみません。

なお、私のことを「カワイイ」などと言って馴れ馴れしく接してきた女子生徒で、私がちょっとしたライバル意識を持っていたZさんも、クラスでは常に成績上位に食い込んでいました。さすがは、特進を希望していた人だけあります。

■ 緘黙などにより劣等感の塊だった私が、信頼され、褒められて、力が引き出された?

どうしてこれほどの好成績を残せたのか、自分でも不思議でした。いったいなぜなのでしょうか。

まず、高校は似通った学力層の生徒が集まっているため、ちょっとしたことで成績が乱高下しやすいことが、考えられる理由の一つして挙げられます。また、高校受験での挫折をきっかけに、一生懸命勉強に励んでいたからかもしれません。しかし、それだけとも思えません。

私が大きかったのではないかと思うのが、担任のA先生の指導法です。A先生は生徒を信頼し、生徒を積極的に褒める、それまで私が出会ったことがないタイプの先生でした。この指導法が、私の力を引き出したのではないか、そんなふうに思っていました。特にそれまでの私は、家庭では母に日常的にダメ息子と責められ、学校では場面緘黙症などにより劣等感の塊のような少年になっていました。それだけに、信頼され、褒められたことが心理的に大きかったのでしょう。

■ 「富条君は、何の問題もありません!」 ←どこがじゃ

1学期の後半か2学期の前半だったと思うのですが、担任のA先生と保護者の間で面談が行われました。私の母も、A先生と面談しました。

面談を終えた私の母は、上機嫌で帰ってきました。なんでも、A先生は私のことを、優秀な生徒として褒めちぎっていたと言うのです。

「富条君は、本当は特進に行く学力があった」と妙なことをおっしゃっていたとも聞きます。だとしたら、私が特進に入れなかったのはなぜなのでしょうか。

しかし、A先生がおっしゃっていたこととして、最も印象的だったのは、次の一言です。

「富条君は、何の問題もありません!」

A先生には失礼ですが、私は先生は間違っていると思いました。私は学校に行くと、あいかわらず極端に無口で引っ込み思案になってしまいます。社会性のかけらもありません。もしかしたら、先生は敢えてそうした点に目をつぶり私の長所を褒めようとされたのかもしれませんが、やはり先生の私を見る目は節穴ではないか、そんなことも思いました。

どうもこの学校は、勉強ができる生徒をやたらと高く評価する傾向があると、私は感じ始めていました。勉強さえできれば他のことには多少は目をつぶってもらえる、そんな校風でした。これにより、私の緘黙傾向も、あまり問題視されてはいない様子でした。

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◇ [緘黙] 高校の男女関係 [ストーリー]