5歳児健診と緘黙の早期発見

2010年07月13日(火曜日)

私は知らなかったのですが、「5歳児健診」が全国のいくつかの自治体で行われているそうです。特に鳥取県は、5歳児健診を全国に先駆けて行ったことで知られています。

5歳児健診は、1歳6か月児健診や3歳児健診とは異なり、母子保健法にもとづいて市町村に義務付けられているものではありません。

[母子健康法(抜粋)]

第十二条  市町村は、次に掲げる者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一  満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
二  満三歳を超え満四歳に達しない幼児

5歳児健診は、特に発達障害の早期発見という問題意識からその必要性が論じられることが多いです。小枝達也氏らによると、

「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症やアスペルガー症候群を包含する高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞といったいわゆる軽度発達障害は、集団生活を経験する幼児期以降になってはじめて、その臨床的特徴が顕在化してくる。そのため、3歳児健診を最終とする現行の乳幼児健診システムの中では充分に対応できていない可能性がある。これは現行の乳幼児健診の質が不充分というよりも、年齢的に見えていないのだと思われる」

とあります。実際のところ、5歳児健診で発見された軽度発達障害児のうち半数以上は、3歳児健診では発達上の問題を指摘されていなかったそうです(小枝ら, 2007)。



ところで、場面緘黙症は、保育園や幼稚園、小学校といった新しい集団生活に入ったときに問題化することが多いです。この点では、「集団生活を経験する幼児期以降になってはじめて、その臨床的特徴が顕在化してくる」という軽度発達障害と共通するところがあります。

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実際、鳥取県では、平成15年度に12町村で5歳児健診が、1市で5歳児発達相談が行われたのですが、これらの健診と発達相談により、緘黙の子が3例発見されたそうです。しかも、3歳児健診までに緘黙の指摘があった例は全くなかったそうです(桃井ら, 2006)。

※ 5歳児健診は全員に、5歳児発達相談は希望者のみを対象に行われます。

5歳児健診が導入されれば、場面緘黙症の早期発見に有効のようにも思えます。

ですが、5歳児健診は、多くの自治体にはまだ広まっていません。導入には、様々な問題があるようです。また、緘黙の子を見つけたら見つけたで、そうした子にどうやって介入を行っていくか、そのための専門家がどれだけいるかといったフォローのことを考えると、5歳児健診を導入しさえすればよいという問題でもないように思えます。課題は多そうです。また、5歳児健診そのものの必要性についても、国がまとめた報告書によると、必ずしも意見が一致していないようです(厚労省, 2009)。5歳児健診導入の是非は、まだ私には分かりません。

いずれにせよ、5歳児健診の導入という動きが全国の自治体にあるというお話でした。

[文献]

◇ 厚生労働省(2009)乳幼児健康診査に係る発達障害のスクリーニングと早期支援に関する研究成果-関連法規と最近の厚生労働科学研究等より- http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken15/index.html
◇ 小枝達也ら(2007)軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken07/index.html
◇ 桃井真里子ら(2006)「発達障害の遺伝的要因と環境要因の相互作用に関する研究」研究実施終了報告書 http://www.ristex.jp/result/brain/program/pdf/H15.02_momoi_houkokusyo.pdf

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◇ 日本の緘黙児は発症が遅い?(前編)