場面緘黙症は発達障害か

2010年08月17日(火曜日)

場面緘黙症が発達障害かどうかについて、どうも理解に違いがあるようです。

とりあえず私の理解を書くと、場面緘黙症は医療分野では発達障害とはみなされていません。ですが、2005年に施行された発達障害者支援法では、場面緘黙症も発達障害という扱いになっています。ここが理解の違いの原因になっているのではないかと思います。

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このあたりについては、鳥取大学の小枝達也教授がまとめた小論「発達障害と乳幼児健診」に、興味深いことが書かれてあります(小枝, 2008)。

小枝教授は、発達障害者支援法で規定している発達障害は、「医療分野で一般的に発達障害と称している疾患とは範囲が異なっている」として注意を喚起しています。

さらに小枝氏は、「医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点」と題する以下の表を示しています。表中、「選択的緘黙症」は場面緘黙症のことです。

表 医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点
医療分野で対象とする発達障害と発達障害者支援法の対象範囲の主な相違点
資料:小枝達也(2008). 発達障害と乳幼児健診. 母子保健情報, 58, 83. Retrieved from http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0903/ks0903_3.pdf

このように、場面緘黙症は、医療の世界では一般に発達障害とはみなされないのですが、発達障害者支援法は、これも発達障害として扱っています。

以前、「緘黙は、発達障害者支援法の対象だった」の中で書きましたが、同法は、どうやら制度の谷間を生まないよう発達障害の定義をかなり広めにとったものとみられます。従来の定義からすると少し変わった定義のようにも思えますが、現実に発達障害者支援法に基づく支援が行われている中、この定義は軽視できません。

なお、英語圏の文献等では、場面緘黙症を発達障害とする見解はほとんど(全く?)見た覚えがありません。国際的に見ると、発達障害者支援法は日本のローカルな法律で、発達障害の定義に場面緘黙症を含める定義は、少し特殊なのかもしれません。

最後に一つ付け加えると、場面緘黙症の子どもの中には、発達障害を併せ持った子が少なくないのではという指摘が、近年日本の専門家の間からなされています。

とりあえず、以上が私の理解です。

[文献]

◇ 小枝達也(2008)発達障害と乳幼児健診. 母子保健情報, 58, 82-85. Retrieved from http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0903/ks0903_3.pdf