[緘黙] クラス委員長になってしまう [ストーリー]

2010年10月05日(火曜日)

このブログでは、私の過去を連載形式で振り返っています。今回は高校生編の第8回です。通算第66話をお届けします。

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高校1年の2学期。担任A先生の妊娠による退職の日が近づく中、そろそろ後期のクラス委員を決めるから各自何の係をするか考えておくようにという話になりました。

クラス内では、クラス委員長のポストを誰にするかについて、こんな話をする生徒が次々に現れました。

「委員長は、富条君がふさわしいのではないか」

!!!!!!!!!!

とんでもないことです。私のような極端に無口で引っ込み思案な人間が、クラス委員長など務まるわけがありません。リーダーシップなどとても発揮できそうにありません。

自分で言うのもなんですが、当時の私は、クラスでも最も学業優秀で、真面目で、学校の規則をよく守る、ジャニーズ系のイケメン生徒であると皆から思われていました(一つだけ、冗談が含まれています)。それゆえ、委員長にふさわしいという声が上がったのでしょう。しかし、委員長に求められる資質は、学業成績や真面目さ等以外の、もっと違うところにあるのではないかと私には思えてなりませんでした。

※ 勉強ができるといっても、あくまでこのクラスでは、の話です。

私はむしろ、Zさんが委員長としてふさわしいと考えていました。Zさんは、私のことを「カワイイ」などと意味不明なことを言って馴れ馴れしく接してくる変な人でしたが、前期の委員長を務めていました。彼女はリーダーシップを発揮し、クラスをよくまとめていました。彼女には行動力がありましたし、クラスで最も活発な女子生徒とあってか存在感も抜群でした。勉強ができるとか、そういうことよりも、こうした資質の持ち主こそ、委員長にふさわしいと私は考えていたのでした(Zさんの名誉のために言うと、彼女は学業成績も常にクラス上位でした)。ところがそのZさんも、「ヒロシ(=富条のこと)こそ、クラス委員長にふさわしい」と言い出してしまいました。

そうして、クラス委員を決める日が来ました。まずは委員長を決めることになりました。





私に決まってしまいました。

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立候補者がいなかったため、推薦で私やZさんなど数人が候補者として選ばれ、最後は投票で最も多い半数以上の票を得た私が委員長に決定しました。

新委員長が決まるまでの様子を見守っていたA先生は、「富条君が委員長なら、私は安心して学校を辞めることができる」とおっしゃいます。

「なんて見る目のない人たちだ!勉強さえできる生徒ならそれでいいのか!ジャニーズ系のイケメンならそれでいいのか!私のような無口で引っ込み思案の人間が委員長になって、クラスが崩壊しても知らないぞ!」私が委員長に決定した瞬間、憤慨しました。もっとも、次の瞬間、「自分が委員長に決定した以上は、全力を尽くす」と頭を切り替えました。

こうして、私は後半6ヶ月間クラス委員長を務めることになりました。

■ クラス委員長の仕事

◇ 「起立!礼!着席!」

私の委員長としての最初の仕事は覚えていないのですが、おそらく授業の開始時に「起立!礼!着席!」と号令をかけたことではないかと思います。

この頃、私の緘黙は軽快しており、学校場面でも声を出すことはできないことはありませんでした。しかし、大きな声を出すことはできませんでした。ですから、私が号令をかけても、近くの席の人はともかく、遠くの人には声が届きませんでした。それゆえ、私が「起立!」と号令をかけると、まず私の声を聞いた近くの人が席を立ち、その様子を見た遠くの席の人が「富条委員長、いま『起立』と言ったんだな」と気づいて遅れて立ち上がるという、そうした有様でした。

◇ 職員室に伝達

委員長になって比較的間もないある日、職員室にいらっしゃる副担任の先生(担当教科・英語のリーダー)に、何か伝達をする仕事がありました。しかし、無口な私に、このようなことができるだろうかと心配でした。そこで、職員室に入る前に予め自分が言うことを入念に確かめ、それから職員室に入って先生に伝達しました。幸い、なんとか間違いない敬語を使いながら、伝達を終えることができました。

その後、副担任の先生は、英語の授業中、私の伝達のことを皆の前で褒めだしました。「高校1年で、なかなかあそこまで言うことはできないと、職員室の先生も皆褒めていた」

「そんな高い評価されると、怖いよー!やめてくれー!!」そんな心境でした。ですが、このエピソードからは、私の緘黙はこの程度まで軽快していたことが窺えます。

◇ ほかの仕事

委員長になって当初、ほかにどんなことをしたかは、なかなか思い出せません。避難訓練のときに人数確認をして、A先生に報告したことぐらいでしょうか。この場面でも、発話が求められています。

◇ A先生からの評価

この頃、2学期中間考査の成績が発表され、A先生が私の親にあてた評価が残っています。

「申しぶんない成績です。このまま一年間がんばれば特進クラスも十分にねらえます。後期はクラス委員長としてよく動いてくれ、学習以外でも、私にとって頼りになる生徒さんです」

A先生は褒めて育てるタイプの先生でしたが、退職される直前まで、私のことをこのように褒めてくださいました。

◇ A先生が退職

そうして、10月頃にA先生は退職されました。最後の終礼で、クラスの有志が密かに用意した花を、委員長の私が代表して先生にお渡ししました。そして、A先生は学校を後にされました。

[続きの話]

◇ [緘黙] クラス委員長が務まらない! [ストーリー]