緘黙児はいじめられない?頭がいい?嘘でしょ!!

2006年04月29日(土曜日)

このブログでは、よく英語圏の文献を参照しています。しかし、こうした海外の文献は、日本に住む我々にとって、どこまであてにできるのだろうかと考えることがあります。

例えば、英語圏の文献には、緘黙児は特にいじめらやすいわけではないとか、頭がいいだとか書かれてあったりします。

ちょっと納得がいきません。私は日本の緘黙経験者の体験談を数多く見てきましたが、いじめられた経験があったり、学業が振るわなかったりした人が多いというのが実感です。

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■ 緘黙児といじめ

教師や親は、場面緘黙児は社会的にあまり自己主張しないものと見ている。けれども、場面緘黙児がクラスメイトから、より頻繁にいじめ等の被害に遭っていると報告する親や教師はいない。

Though teachers and parents rated children with SM as less socially assertive, neither teachers nor parents reported that children with SM were victimized more frequently by peers.


上は、カナダのマックマスター小児科医院の研究グループがまとめた論文の要約の一部です(Cunningham et al., 2004)。

緘黙児がいじめを受けやすいかどうかの研究はまだあまりありません。しかし、今のところは、緘黙児はいじめられたり、からかわれたりしやすいということはない…という見方が、英語圏では優勢のようです。

日本にお住まいのみなさま、納得できるでしょうか。私はこれまで、日本語圏の緘黙サイトをたくさん見てきましたが、緘黙経験者には、いじめを受けたり、からかわれたりした人が多いというのが実感です。何よりも、私自身がいじめられっ子でした。

もしかすると、日本とカナダなどの海外では、いじめ文化に違いがあるのかもしれません。日本では変わったタイプの人が格好のいじめの対象とされるが、海外ではそうではないとか。

■ 緘黙児の学力

良い面を見ると、多くの場面緘黙児は

  • 知能、理解力は平均以上で、知識欲がある
  • 他者の考えや感情に敏感(思いやり)
  • 集中力が非常にある (集中的)
  • 正しい・間違い・公平ということに対するセンスが、しばしばよい (公正)

On the positive side, many sufferers have

  • Above average intelligence, perception, or are inquisitive
  • Are sensitive to others' thoughts and feelings (empathy)
  • Have very good powers of concentration (focused)
  • Often have a good sense of right/wrong/fairness (justice)

上は、英語版 Wikipedia にある、Selective Mutism(場面緘黙症)の説明の一部です(Wikipedia contributors, 2006)。

皆様、どう思われますか?私は「知能、理解力は平均以上で、知識欲がある」というのが納得がいきません。少なくとも日本では。

緘黙児だった頃は学業がふるわず、高校は地元でも最底辺の学校に通っていた…こういう人たちを、私は日本語圏の緘黙サイトで何人も見てきました。どうやら彼ら・彼女らは、緘黙に余計なエネルギーを使ってしまって、勉強に集中できなかったようです。

一方、先にご紹介したマックマスター小児科医院の研究グループの論文では、少し違った結論が出ています。

場面緘黙児の学問的なスキル(例。読書と数学)、教室で仲間と協力するスキルは、対照とは異ならなかった。

The academic (e.g., reading and math) and classroom cooperative skills of children with SM did not differ from controls.

「対照」とは、ここでは緘黙児ではない普通の子供のことです。要するに、緘黙児は学業成績や協調性の面で問題ないと言っているのです。

緘黙児と学業成績の関係について、Wikipedia の記述とずれがありますが、これはおそらく、研究がまだ進んでいないことが関係しているのではないかと思います。

いずれにせよ、マックマスター小児科医院の研究も、Wikipedia と同じ理由で、個人的に納得できません。

■ 英語圏の情報も鵜呑みに出来ない

まだ研究途上だからか、文化が違うからか分かりませんが、英語圏の情報には、こういう日本語圏の緘黙サイトを読んだ実感と合わないものを時々みかけます。

いくら緘黙の情報は英語圏が充実しているからといっても、鵜呑みにするのは危険です。

昔は緘黙児は自発的にしゃべらないものと考えられていたほどです。今までにご紹介した緘黙症に対する認識も、10年経てばカビの生えたものになるかもしれません。

また、いじめなどは、文化の違いが関係している可能性があります。英語圏の論文ばかり鵜呑みにせず、日本語圏の論文も積極的に読んでいきたいものです。ですけど、日本語の論文って、私には入手しにくいんですよね…。

いや、もしかすると、単に私の実感がおかしいだけなのかもしれません。いじめを受けなかった、学校の成績は優秀だったという緘黙経験者の方々が実はけっこういらっしゃるのに、私が見逃していただけなのかもしれません。

※ あと、英語圏ではありませんが、緘黙児は不登校にならないという説も、個人的に納得できません。


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[注、参考にしたもの]

APAスタイルを参考にリストするのがマイブームです。

☆ Cunningham, C.E., McHolm, A., Boyle, M.H., & Patel, S. (2004). Behavioral and emotional adjustment, family functioning, academic performance, and social relationships in children with selective mutism. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines. 45(8), 1363-72.
☆ Wikipedia contributors (2006). Selective mutism. Wikipedia, The Free Encyclopedia. Retrieved 03:52, April 29, 2006 from http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Selective_mutism&oldid=49279575.