[緘黙] 学校生活がうまくいくと、違和感 [ストーリー]

2011年04月05日(火曜日)

このブログでは、私の過去を連載形式で振り返っています。今回は高校生編の第14回です。通算第72話をお届けします。

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「一緒に学校に行こう、富条君」

クラスで一番可愛いWさんに、誘われました。

といっても、大したことはありません。ある朝、私はいつものように徒歩で学校に向かっていたところ、書店の入口で立ち読みをしていたWさんと偶然会って、こう声をかけられただけでした。しかし、形はともあれ、クラスのアイドル・Wさんと二人きりで登校できて、少し浮かれてしまいました。

■ 私にしては、充実した学校生活

学校生活は、私にしては人間関係面で充実していました。私は学校では無口で大人しく、決まった友達もいませんでしたが、クラスメイトには概ね好かれ、私に好意的に接してくれる人が多かったです。また、定期試験ではいつもクラス2番だったためか(成績優秀なWさんがいたため、どうしても1番になれなかった)、クラスでは一目置かれる存在で、「勉強教えて」などと請われることも少なくありませんでした。

■ 特進上位クラスの面々と

高校2年も後半に入ると、特進上位クラスと一緒に、毎週補習授業が行われるようになりました。特進上位はさすがに成績優秀者が多く、中には、東大京大や国立大医学科といった最難関レベルの大学、学部学科を志望する人もいました。そうした成績優秀者が集まるクラスでも、特に活発な中心グループの間で(しかもイケメンや美人が多い)なぜか私のことが知られるようになり、親しくしてもらえるようになりました。

なお、特進上位クラスには、あのいじめっ子B君もいました。中学3年の頃に私をいじめた男子生徒です。彼の私に対する態度は高校に入っても相変わらずでした。そういえば、彼には一度こんなことを言われたことがあります。「富条!お前は堅すぎるんだよ。例えば、遠方から帰ってきた先生にお土産をねだるとか、もっとそういうところがあっていい」大きなお世話です。

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■ 生まれて初めて友人を紹介される

あるクラスの男子生徒からは、友人を紹介されました。特進上位クラスの理系女子コンビです。どちらかというと孤独な人生を送ってきた私が友人を紹介されたのは、生まれて初めてのことでした。以後、この2人は、私に対してキャアキャア言いながら、たまに馴れ馴れしく接してくるようになりました。

ある時などは、体育の授業中、私はグラウンドでサッカーをやっていたのですが、3階の教室で実習授業を受けていたこの理系女子コンビが窓から私を発見し、「富条くーん!キャアー!☆♪$」と大声で手を振り出しました。これには私も、一緒に授業を受けていたクラスメイトも、ただ唖然とするばかりでした。

■ 先生の間でも私は知られるようになる

私のことは、一部の先生の間でも知られるようになっていると感じていました。成績優秀だとか、真面目だとか、そうした高い評価が、職員室の間で広がっていたようです。

■ 学校生活で惨めなことを繰り返す、これぞ本来の私だ

しかし、贅沢な悩みかもしれませんが、私はこれに違和感を感じていました。私はこのように生徒や先生たちの間で有名になったり、ちやほやされたりするような柄ではないのではないかと思えてなりませんでした。いただいている高評価も、過大評価にしか思えませんでした。

というのも、私はそれまでの学校生活の中で、緘黙したり、いじめを受けたり、落伍したり、孤立したり、そうしたことを長年にわたってさんざん繰り返してきており、そうした自分の姿を、自分のアイデンティティにしてしまっていたからです。学校生活で惨めなことを繰り返す自分こそ本来の自分だとか、こんなはずじゃないとか、そうしたことを考えていました。子どもの頃に染み付いた劣等意識は、なかなか変わりませんでした。

なお、このようにちやほやされた背景には、高校受験に失敗し、あまり学力水準の高くない高校に進学してしまったことがあります。私のような中途半端な学力の生徒でも、この学校では成績優秀者なのです。また、このクラスはいちおう特進とあって、どこか勉強至上主義のようなところがありました。そのため、私のような者でもそこそこ評価されたのでしょう。

■ 志望校事件

いつだったか、特進クラスに入って始めての全国模試を受けたときのことです。模試に先立って志望校を必要書類に書いて提出したのですが、この後、私は担任のD先生から職員室に呼び出しを受けました。

「富条!お前ほどのやつが、どうしてこんな偏差値の低い大学の名前を書いたんだ。私は目を疑ったよ!」

私は、自分の学力からしてちょうどよいぐらいのレベルの大学を選んだつもりでした。自己評価と他者評価との間には、落差がありました。

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◇ [緘黙] 緘黙だっていいじゃないか、個性だ [ストーリー]