最近緘黙を知った、もっと深く知りたいという場合

2011年05月10日(火曜日)

場面緘黙症を最近になって知ったという保護者の方から、もっと緘黙のことを知りたいがどうすればよいかと尋ねられることがあります。私は専門家ではないので、恐縮しながら私なりの考えをお伝えしています。

私のつたない考えをお話しすると、まずは、場面緘黙症についてまとまって書かれたものを読むのが早道ではないかと思います。ときどき社交辞令か、「場面緘黙症Journalを読んで勉強させていただきます」とおっしゃっる方がいらっしゃいますが、最初の段階では、まず以下でお話しするような書物や資料に目を通して、緘黙について一通りまとまった知識を得る方が有益ではないかと思います。場面緘黙症Journal からは、断片的な知識しか得られないからです(こう書いたら、このサイトへの訪問者数がますます減りそうですが……)。

■ ネットで読める Knet資料

手っ取り早く読めるのは、このサイトからも長年リンクをしている、かんもくネットさんの Knet資料 です。専門家による場面緘黙症の解説等を読むことができます。別に、このサイトからリンクをしているからおすすめしているわけではありません。純粋に内容がよいと思うからです。

資料の著者として名前が挙がっている「SMartセンター」は、アメリカにある場面緘黙症の研究治療センターです。また、「SMG~CAN」「SMIRA」は、それぞれアメリカ、イギリスの大手緘黙支援団体です。いずれの団体も、緘黙の支援については世界でもトップクラスで、専門家も関与している団体です。

■ できれば本を

ですが欲を言えば、以下でご紹介する、緘黙を主題とした本を読むことをおすすめしたいです。買って手元に置くのが一番よいと思いますが、図書館によっては所蔵しているところもあるので、これを利用するのもよいでしょう。以下では、Amazon.co.jp へのアソシエイトリンクを貼っています。

◇ 最初の1冊は『場面緘黙Q&A』か

独断と偏見に満ちた意見かもしれませんが、私なら、最初の1冊としてまずは『場面緘黙Q&A』をおすすめします。内容も、緘黙の理解、対応、実践と包括的で、しかも分かりやすくまとめられている点が、おすすめの理由です。なお、この本には、場面緘黙症Journal についても書かれてありますが、これを理由におすすめしているわけではありません。この本が売れても、私に印税は入りません。

◇ 『アプローチ』『支援』『心理と指導』は2冊目以降か

類書には、『場面緘黙へのアプローチ』、『場面緘黙児への支援』、『場面緘黙児の心理と指導』があります。これらの本も勉強になります。ですが、私ならば、これらは『Q&A』を読まれた方が、さらに深く学びたいという場合におすすめしたいです。

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○ 『場面緘黙へのアプローチ

『アプローチ』は、イギリスの本とDVDを翻訳したもので、内容は包括的です。ですが、『Q&A』の方が日本の実情に合わせて分かりやすく書かれてあるので、この本は2冊目以降としておすすめしたいです。できれば、緘黙の子を支援する立場にある方に読んでいただきたい本です。

○ 『場面緘黙児への支援

『支援』は、カナダの本を翻訳したもので、行動療法により緘黙の子を支援する方法を詳細にまとめた実践的な本です。対象読者は、緘黙の子の保護者です。緘黙の理解を本から得るのはほどほどでいいから、とにかく、うちの子に話せるようになってほしいという方には、この本の方が1冊目としては適しているかもしれません。緘黙の理解は、Knet 資料からもある程度得られますからね。この本は日本以外の国でも翻訳されていて、少なくとも私が知る限り、韓国版や台湾版も出ています。場面緘黙症Journal では、昨年度、最も多く売れた本でもあります。

ただ、この本を読んだだけで、緘黙が簡単に治るということはないでしょう。読むだけでなく、本に書かれてあることを実践しなければなりません。しかも、この本の方法を日本で応用して緘黙を克服させようとするのは、保護者にとって労力のいることではないかと思います。2008年9月19日に行われたシンポジウム『緘黙症克服への取り組みのために -成果と問題点-』の報告には、本書を活用して緘黙の子の支援に取り組む2人の保護者について、次のように書かれてあるのですが、現在ではどうなのでしょうか。「行動療法に基づいた支援プログラムにより、子どもたちは著しい改善をみせている。しかし、現状では保護者の精神的、物理的負担が重すぎる。保護者が学校と連携して支援を行える体制を整備していただきたい」(浜田ら, 2009)

○ 『場面緘黙児の心理と指導

『心理と指導』は、日本の学者によるもので、内容も主に日本の先行研究を踏まえ、独自の研究成果、見解をまとめたものです。翻訳書ではなく、日本の実情に合った本という点で魅力的です。80年代末までに書かれた原稿をもとにした内容で、今回取り上げた本の中では最も古いですが、今でも根強い人気があります。包括的な内容で、学術書の性格が強いです。

一般に、古い本だからといって新しい本よりも内容が劣るとは限りません。ですが、緘黙について言えば、この本が出て以降、理解が変わっています。この本からは今なお学ぶべき点はあるものの、最初に読む本としては、新しい知見が反映された『Q&A』の方が適切ではないかと私は思います。

■ むすび

場面緘黙症のことを最近知った、もっと深く緘黙について知りたいという場合、できればまずは『場面緘黙Q&A』を読んでまとまった知識を一通り得るのがよいのではないかと思います。それができなければ、Knet 資料を読むだけでも勉強になります。私の独断と偏見に満ちた意見ですが。

場面緘黙症Journal はブログが中心です。このブログは、緘黙について体系的にまとめたわけではなく、思いついたことや私が知った話題を適当な順番で書いているだけです。読む方にしても、このブログを通じてまとまった知識を仕入れるには不向きです。もっとも、それ以前に、このブログは内容が粗末なので、どちらにしろこのブログで緘黙のことを知ろうとするには、気をつけた方がよいです。今回の記事も、参考程度に。

[文献]

◇ 浜田貴照, 久田信行, 藤田継道, 山本洋子, 阿久津賢治, 加藤哲文(2009). 緘黙症克服への取り組みのために-成果と問題点(自主シンポジウム6, 日本特殊教育学会第46回大会シンポジウム報告). 特殊教育学研究 46(5), 336-337.