場面緘黙症と広汎性発達障害の鑑別

2011年07月12日(火曜日)

このブログでは、時々緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。今回はこれです。

◇ 渡部泰弘,榊田理恵 (2009). 自閉症スペクトラムの観点から検討した選択性緘黙の4例. 児童青年精神医学とその近接領域, 50, 491-503.

■ 概要

場面緘黙症と診断される患児の一部には広汎性発達障害(以下、PDDと略す)または自閉症スペクトラムが存在することを明らかにしています。

■ 所感・所見

私は日本の緘黙に関する文献を読んでいますが、近年、発達障害とのかかわりに関するものを目にするようになってきました。今回の論文もその一つです。

◇ 緘黙と PDD の鑑別

DSM-IV-TR や ICD-10 というよく用いられる診断基準によると、場面緘黙症(診断基準では「選択性緘黙」)とみられる症状があっても、PDDの診断基準に当てはまる場合は、場面緘黙症ではなく PDD と診断されます。このため、場面緘黙症とPDDの鑑別が重要になってきます。

緘黙のような症状がみられた場合、もしかしたら PDD を併せ持っていないか、疑ってみた方がよさそうです。もし併せ持っていた場合、それは PDD の二次的症状による緘黙であり、不安がもとの場面緘黙症とは違うという話になります。こうなると、支援の方法も変わってきます。実際のところ両者の鑑別を行うのは専門家ですが、この論文によると、鑑別には困難を伴うことが多いようです。はっきりしない場合、両方の可能性を視野に入れることも必要になってくるかもしれません。

◇ PDD の概念が普及する前に緘黙と診断された子

それから、1979年に荒木富士夫氏や大井正己氏らが場面緘黙症の分類を試みた論文が発表されたのですが、この論文では、これら分類の検討を行っています。著者は、当時緘黙の一分類とされたグループは、今日で言うところの自閉症スペクトラムの一部ではないかと指摘しています。荒木氏や大井氏らの論文は、PDD の概念が普及する以前に発表されたものなのだそうです。

そうすると、過去の緘黙に関する論文や書籍を読む際には、注意が必要ではないかと私などには思えてきます。今日では PDD と診断されるような子が、緘黙児として論文や本で扱われた例があるのではないかと私は考えてしまいます。


なお、場面緘黙症と PDD の鑑別については、かんもくネット代表の角田圭子氏も『児童心理』2011年3月号などの中で、掘り下げた考察を行っています。