『場面緘黙児の支援』によく出てくる論文

2011年08月30日(火曜日)

このブログでは、ときどき場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回の論文はこれです。

Cunningham, C.E., McHolm, A., Boyle, M.H., and Patel, S. (2004). Behavioral and emotional adjustment, family functioning, academic performance, and social relationships in children with selective mutism. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 45(8), 1363-1372.

■ 概要

場面緘黙症児52名について、様々なことを調べています。また、緘黙ではない子52名(対照群)の調査も行い、緘黙症児と比較しています。

■ 所感・所見

この論文は、『場面緘黙児への支援』(原題 Helping Your Child With Selective Mutism)でよく引用されているため、今回取り上げました。この本を読むと、序盤の方で (Cunningham, et al., 2004) という表記を見かけることがありますが、それは、この論文からの引用であることを示しています。

今回の論文は研究方法がしっかりしていて、多少の方法上の限界はやはりあるものの、信頼できそうです。

まず、対象群を設け、緘黙症児と比較を行っています。

また、親と教師の双方の視点から、緘黙症児を調べています。緘黙症児は多くの場合学校に限って話せないため、親と教師では評価が異なってくるでしょうから、もっともなことに思えます。

親の養育態度は、リッカート尺度というもので点数化した上で、緘黙症児とそうでない子の親の養育態度を統計的に比較しています。昔の日本の緘黙研究などを見ていると、溺愛、過保護、拒否的といった親の養育態度の特徴が緘黙症児の親に見い出せたというような話を見ることがあるのですが、どういった基準で溺愛等と言っているのかが分からなかったり、また、緘黙でない子との比較も行われていなかったりする場合が多いです。

一つ気になったのは、いじめに関してです。今回の研究では、緘黙症児は、緘黙でない子と比べて特に多くいじめを受けているわけではないという結果が出ています。ただ、これは親と教師による報告です。もしかすると、親や教師は、子どものいじめを必ずしも十分に把握してはいないかもしれません。この研究方法上の限界は、今回の論文にも触れられています。ですが、『場面緘黙児の支援』では、このあたりの細かい話は省略され(無理もないのですが)、単に「緘黙児が他のこどもよりも極端にからかわれたり、いじめられたりしているということはないようです」(25ページ)と書かれているにとどまっています。