[緘黙] 受験校決定の三者面談 [ストーリー]

2011年09月06日(火曜日)

このブログでは、私の過去を連載形式で振り返っています(ただし、プライバシー等の観点から内容は少し変えています)。今回は高校生編の第19回です。通算第77話をお届けします。

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高校3年にもなると、全国模試の結果は重要でした。模試には、志望校の合格可能性の判定が出たからです。

この判定については、私たち特別進学クラスの先生の間で、こんなことがささやかれていました。「うちの学校の特進クラスには、学力がないのに難関大学を狙い、D判定やE判定(いずれも合格可能性50%未満)を出す生徒ばかりだ。偏差値低いくせに、プライドだけは立派だ」

この話を聞いて、私は驚きました。私はまったく逆で、もっぱら安全圏の大学を狙い、A判定やB判定(いずれも合格可能性50%以上)ばかり出していたからです。

■ 校内模試から校外模試へ

受験が近づくにつれ、全国模試を受ける頻度も増えていきました。

当初は学校の教室で模試を受けていたのですが、そのうち「より実際に近い状況で」とのことで、校外で受験するようになっていきました。この校外模試には周辺の高校も多数参加していて、このため、見知らぬ高校生ばかりに囲まれて模試を受けることになりました。

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ある時に受験した校外模試のことです。受験が終わり、帰ろうとしたところ、背後から「富条君、久しぶり!」という声が聞こえました。振り向くと、声の主はVさんという中学時代の同級生(女子)でした。どちらかというと孤独な中学生活を送っていた私に、卒業後声を掛けてくれる人がいるとは、ありがたいことです。そして、そのVさんの隣には思わぬ人物がいました。

その人は、中学時代の同級生(女子)だったSさんでした。Sさんとお会いするのは中学の卒業式以来です。卒業式の日、Sさんは何か私に大事なことを話したかったようなのですが、私を目の前にして黙り込んでしまい、そのまま何も話さないまま卒業してしまったのでした(第56話参照)。Sさんが私に何を話そうとしてくれたのは分からなかったのですが、無口なところがあったSさんが卒業式という大事な日に、頑張って何かを話そうとしてくれたので、それを聞かなかったことを、私はずっと後悔していたのでした。

Sさんは、しばらく見ないうちに大変な美少女になっていました。そして、親しげに話しかけてくれるVさんのお隣で、黙ってニコニコしながら私をじっと見つめていました。

このとき私は、「Sさんは卒業式のとき、私に愛の告白をしようとしたのではないか」という妄想も手伝い、気分が高揚してしまいました。私は、Sさんのことは覚えているということを何とか頑張って口頭で伝えました。緘黙の私が、自分でもびっくりするぐらい大きな声が出ました。とても可愛くなったSさんを見て、気分が高ぶっていたため、大きな声が出たのでしょう。お恥ずかしい話です。

その後、帰りの電車では、ホームでSさんと二人で一緒に並ぶことになり、さらに二人で一緒に電車に乗り、二人で一緒に同じ駅に降りて別れることになったのですが、お互いほとんど何も話さないままでした。私は卒業式のときにちゃんとSさんの話を聞かなかったことについて話をしたくて仕方がなかったのですが、まだ緘黙が残っていたこのときの私にはとても無理でした。自分が人と話せないことを大変悔しく思いました。それにしても、Sさんも寡黙で不思議な人でした。ですが、こういう人と一緒にいるとなぜか落ち着きます。

■ 受験校決定の三者面談

さて、2学期の終わり頃、受験校を決定するための三者面談がクラスで行われることになりました。

母と私が並んで座る中、担任のD先生が切り出します。

「富条。お前、いつも入りやすい大学ばかり志望校に選んでるな。うちのクラスの連中は、身の丈に合わない大学を志望してD判定やE判定出してるやつらばかりなのに、こんなのお前だけだぞ」

そして、過去の私の模試の結果を持ち出して、こうおっしゃいました。

「△□大学(難関私立大学の一つ)を受けてみないか。お前の過去の模試の結果から、学校のコンピュータを使って判定してみたところ、C判定(合格可能性50%前後)が出た。お前にはこのレベルの大学を受ける実力がある。お前ほどの実力を持ったやつがやさしい大学ばかり受験するのはもったいない。私は、このことを考えると夜も眠れないんだよ」

ですが、私は、この先生のすすめを断りました。D先生については、ごく一部の生徒の間で「うちは私立高校だから、少しでも合格実績を出そうと、D先生は受験をすすめている」という声も聞かれました。私はD先生がそのようなお人とは思いません。ですが、D先生は私のことを過大評価しているように思えました。私の過去の模試のデータを持ち出されて「C判定」と言われると説得力も感じますが、この模試のデータも、実は私が調子がよかったときのものを誤って持ってこられたにすぎないと私は見てました。

この自己評価と他者評価の差は、今に始まったことではありません。高校2年の頃には、不当にレベルの低い大学を志望校にしているとのことで、職員室にまで呼び出されたことがあります(第72話参照)。もっと振り返ると、小学生の頃から自己評価と他者評価の差を感じていました。

私は自分のことを低く評価しすぎていたのでしょうか。もしや、緘黙で、学校生活でうまくできないことが多かったことが、もしかしたら自己評価の低さに関係しているのでしょうか。それとも、私は無口なゆえに誤解を受けやすかったのでしょうか。すべてが緘黙が原因かどうかは分かりませんが、いずれにせよ、自己評価と他者評価の違いが、私の進路選択にまで影響を及ぼしていました。

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◇ [緘黙] センター試験を受ける [ストーリー]