米国の Section 504 に基づく緘黙児の教育支援

2011年11月17日(木曜日)

アメリカの場面緘黙症についての情報を集めていると、ときどき IDEA とか Section 504 といった言葉にぶつかります。IDEA とか Section 504 のどちらに基づいた教育支援を受けるのがよいかといったことが、アメリカの緘黙に関するいくつかのウェブサイトなどで解説されています。

そこで、このブログでは IDEA と Section 504 について、緘黙児支援の視点から簡単にまとめてみます。といっても私は専門家ではありませんが、私自身の勉強も兼ねて。

前回は IDEA について書いたので、今回は、いわゆる Section 504 についてです。IDEA との比較も行います。

■ Section 504 とは何か

Section 504とは、1973年のリハビリテーション法(Rehabilitation Act)504条のことです。連邦政府の資金を受けるプログラム等(公立学校含む)について、障害(障碍)者の差別を禁止する内容です。

↓ リハビリテーション法504条の条文。米国労働省へのリンクです。英語ページ。
Section 504, Rehabilitation Act of 1973
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■ 504プラン

Section 504 と言えば、特に話題になるのが、504プラン という教育計画です。504プランとは、Section 504 に基づき、障害を持った児童生徒に対して、個別のニーズに応じた教育を行う計画のことです。特別支援教育ではなく、通常の教育課程で行われます。これについては既に専門家が詳しく解説したページがあるので、詳しいお話はそちらに譲ります。

↓ 詳しい解説。
シカゴ在住のスクールサイコロジスによる、「学校教育相談室」
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■ 緘黙の子・人も、504プランの対象となる場合がある

緘黙の子・人も、Section 504 に基づく教育支援の対象となる場合があります。Section 504 で言うところの「障害」(disability)とは、「一つ以上の主たる生活活動を大幅に制限する、身体障害または精神障害」(a physical or mental impairment that substantially limits one or more major life activities)のことを意味しており、これに緘黙も該当する場合があると解釈されているようです。

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■ IDEA と Section 504 の比較

前回お話しした IDEA(障害者教育法)に基づく教育支援と Section 504 に基づくそれとは、よく比較されます。また、教育計画同士、つまり IEP と 504 プランが比較されることもあります。このことは、アメリカの緘黙に関するウェブサイト等でも同様です。そこで、ここでも両者の比較をしてみたいと思います。

◇ 主な共通点

どちらも法に基づき、アコモデーション(accommodation)やモディフィケーション(modifications)といった手段を通じて、また、必要とあれば各種療法などの関連するサービスを通じて、障害を持った児童生徒に、無料で適切な公教育(FAPE)を提供するという点で共通しています(ただし、FAPE の意味する内容はそれぞれ違います)。

なお、アコモデーションとは、障害を持った児童生徒に、他の児童生徒と同じ内容の教育を行いながらも、例えば口頭での発表ができない子どもに書面で発表させるなど、障害への配慮を行うことです。一方、モディフィケーションとは授業を易しくするなど、教育内容そのものを障害に配慮して変えることをいいます。

◇ 主な相違点

● IDEA はその名の通り、障害者の教育に関する法です。年齢に関する規定(21歳まで)があるのもこのためです。対して Section 504 は市民権法(公民権法、Civil Rights Law)で、連邦政府の資金を受けるプログラム等全般で、障害者の差別を禁じたものです。年齢も関係ありません。

● IDEA による教育支援は特別支援教育です(ただし、教室は原則として普通学級の児童生徒と同じです)。対して Section 504 の場合、特別支援教育は関係ありません。

● IDEA には、障害を持った子どもに対する教育支援の手続きについて詳しい規定があります。対して Section 504 の場合、IDEA ほどの詳しい規定はありません。このため、Section 504 による支援は IDEA によるそれに比べると手厚くなされない可能性がありますが、反面、手間暇がかからず、柔軟性があります。

● Section 504 の方が、対象とする障害児・者の範囲は広いです。

● IDEA による支援の場合、連邦政府による補助金が支給されます。Section 504 の場合、出ません。

非常に大雑把にまとめると、IDEA による教育支援の方が、法律で細かい規定がなされていて、支援は充実しているのですが、比較的重い障害を持った児童生徒でなければ認定されない、といったところです。

障害児・者への教育支援を検討する際、まずは IDEA の支援を受けられる可能性を考え、それが無理なら Section 504 ……という選択がなされることが多いようです。

緘黙の場合、通常まず IDEA による支援を受けられるよう求め、それができないなら Section 504 を検討するよう親にすすめる専門家がいる一方で(Aimee Kotrba 氏)、IDEA がよいか Section 504 がよいかはその子にもよるとする専門家もいます(SMart Center)。

[関連記事]

↓ IDEA に関する記事です。
◇ 米国の障害者教育法に基づく緘黙児の教育支援
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[参考にしたウェブサイト、ウェブページ]

※ 全て、2011年11月17日最終アクセス。

◇ U.S. Department of Education http://www.ed.gov/

◇ Wrightslaw http://www.wrightslaw.com/

◇ National Dissemination Center for Children with Disabilities. http://nichcy.org/

◇ Selective Mutism Anxiety Research & and Treatment Center http://www.selectivemutismcenter.org/

◇ Selective Mutism Network http://www.selectivemutismnetwork.org

◇ Selective Mutism Treatment http://www.selectivemutismtreatment.com/

※ ここまで読んでくださり、ありがとうございます!