英国の緘黙体験記

2012年03月06日(火曜日)

Slipping in and Out of My Two Worlds今回は、場面緘黙症の体験記を読んだ感想を書きます。

Jessica Thorpe 氏が書いた Slipping in and Out of My Two Worlds という本です。舞台はイギリスで(文章も英語です)、発売年は2011年と比較的最近です。200ページ近くありますが、文字サイズが大きいので、分量はページ数ほど多くはありません。

ストーリーは、著者の誕生に始まり、18歳の頃に終わります。

この体験記は他国の話であるにもかかわらず、日本の緘黙体験記と比べて、それほど変わったことが書かれているわけではないと私は感じます。話せないことの不自由、周囲の無理解、嫌がらせなど、日本の緘黙体験記と共通する点は多いです。

著者が直面した緘黙による困難の少なからぬ部分は、周囲の無理解によりもたらされています。周囲がもっと緘黙を理解していればと思います。

著者は緘黙と、他の不安障害などに長らく悩まされ、シックスフォーム(16-18歳の若者を対象とした中等教育)の段階では学校を辞めざるを得なくなり、最終的には2年近くにわたって無業の状態に陥っています。にもかかわらず、著者はその人生を肯定的に捉えています。緘黙は自分にとって "gift"(天賦の才)だったと述べるなど、明るく締めくくっています。

こうした心境になぜ至ることができたのか、その理由らしきことは最後の方に書かれていて、(1)自分の力で緘黙症状を改善できたから、(2)緘黙の専門家になるという長期的な目標を持っているから、の2つがそれらしいのですが、私にはもう一つ納得できません。いずれにせよ、緘黙で思うに任せぬ人生を歩みながら、現在ではそれを肯定的に捉える著者の人生哲学については、考えてみる価値がありそうです。

なお、著者は Facebook、Twitter などインターネット上でも活発に活動されています。