場面緘黙症は社会不安障害?特定恐怖?それとも…(1)

2006年05月13日(土曜日)

ハーバード大学というと、ご存知、世界最高水準の大学の一つです。

そのハーバード大学の医学部に Harvard Health Publications という出版局(?)があるのですが、そこが Harvard Mental Health Letter というニュースレターを発行しています。そのニュースレターに、場面緘黙症が何度か取り上げられたことがあります。

その中に、おやっと思う記述を発見しました。2004年12月の記事 "Children’s fears and anxieties" から、引用します(ちなみに、この記事は Newsweek にも掲載されたようです)。

「場面緘黙症は、米国精神医学会の診断の手引きでは独立した障害(障碍)として分類している。しかし、多くの専門家は現在、場面緘黙症を社会不安障害の稀な症状とみなしている」

Selective mutism is classified as a distinct disorder in the American Psychiatric Association’s diagnostic manual, but many experts now regard it as a rare symptom of social anxiety disorder.

場面緘黙症は、社会不安障害(社会恐怖、対人恐怖)だったんですか!?
* * * * * * * * * *

■ 場面緘黙症・社会不安障害説

なるほど、そう言われればそのような気もします。場面緘黙児に社会不安障害の合併が非常に多いのも、それで納得がいきます。

■ 場面緘黙症・特定恐怖説

ところが、別の本には全く違うことが書かれてあるから妙なものです。別の本とは、以前ご紹介した Helping Your Child With Selective Mutism の8ページです。

場面緘黙症は特定恐怖とみなされている

Selective Mutism Is Viewed as a Specific Phobia

場面緘黙症は特定恐怖?社会不安障害じゃないの?ハーバードと説明が違うじゃん!

ですが、よくよく考えてみれば特定恐怖と言われると、それなりに納得がいくような気もしないまでもありません。学校とか特定の場面に限って話せなくなるわけですからね。

そういえば、私は以前、このブログで場面緘黙症は特定恐怖と書いたのでした。忘れていました。「障害者(障碍者)でもなく健常者でもなく」

[補足説明・特定恐怖について]

特定恐怖とは、例えば高い所、水、蛇、蜘蛛、見知らぬ人など、何か特定のものが怖いという恐怖症です。

■ 社会不安障害と特定恐怖の位置づけの違い

ちょっと、ここで社会不安障害と特定恐怖の位置づけの違いについて説明しましょう。

DSM-IV-TRは、社会恐怖(社会不安障害と同じ)や特定恐怖を「不安障害」として体系的に分類しています。

<不安障害>

300.01 パニック障害(広場恐怖は除わない)
300.21 パニック障害(広場恐怖を伴う)
300.22 広場恐怖(パニック障害の歴史はない)
300.29 特定恐怖
300.23 社会恐怖
300.3  強迫性障害
309.81 心的外傷後ストレス障害
308.3  急性ストレス障害
300.02 全般性不安障害
293.84 他の一般的健康状態により引き起こされた不安障害
------ 物質誘発性不安障害
300.00 その他の不安障害

※ 数字の並びが変!と思われるかもしれませんが、出典とした Dsm-iv Tr Guidebook がなぜかこういう並べ方をしているので、それに従いました。ところでこの数字、何?

特定恐怖も社会不安障害も、どちらも不安障害の一種とみなされているようです。

ですから、場面緘黙症・社会不安障害説と場面緘黙症・特定恐怖説のどちらをとっても、場面緘黙症は不安障害の一種ということに変わりはないわけです。

■ DSMは…

最後に一つ、ややこしいことを言うようですが、DSM-IV-TRは、場面緘黙症を不安障害とは全く別の範疇に置いています。

「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」の中の、「幼児期、小児期、または青年期の、その他の障害」の一つに、場面緘黙症は位置づけられています。

<通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害>

○ 知的障害
○ 学習障害
○ 運動能力障害
 (中略)
○ 幼児期、小児期、または青年期の、その他の障害
309.21 分離不安障害
313.23 場面緘黙症
313.89 幼児期または小児早期の反応性愛着障害
307.3  常同運動障害
313.9  その他の幼児期、小児期、または青年期障害

さあ、場面緘黙症は「社会不安障害」の範疇に入るのでしょうか、それとも「特定恐怖」の範疇なのでしょうか、はたまた「幼児期、小児期、または青年期の、その他の障害」(あー長い…)なのでしょうか。

(続く、予定)

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[続きの記事です]

☆ 場面緘黙症は社会不安障害?特定恐怖?それとも…(2・完)