[緘黙] 大学教授の研究室にお邪魔する [ストーリー]

2012年07月03日(火曜日)

このブログでは、私の来し方を振り返り、連載形式で書き続けています。今回は大学生編の第4回です。通算第86話をお届けします。

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大学に入って、無口で引っ込み思案な自分を変えたいと思った私ですが、サークルにも入れない、アルバイトもできないと、難儀していました。

ですが、私に合った自分の変え方があるのではないかと考え、その方法を思いつきました。

それは、大学の先生と積極的にコミュニケーションを図ることでした。例えば、講義で分からない箇所があれば、先生のお邪魔にならない程度に、研究室を訪問して質問するとか(研究室での質問の受け付けは、私の学部では珍しいことではありませんでした)。学問の理解を深めることにもつながり、一石二鳥のように思えました。

そして、これを実際に行いました。



最初に実践したのは、大学1年の4月か5月ぐらいのことだったかと思います。ある講義で、「パレート効率性」というミクロ経済学の概念を学び、それについてリポートを書く課題が出たのですが、その講義の終わり際に先生が「何か分からないことがあれば研究室に来てください」とおっしゃったので、それに乗じるようなかたちで研究室にお邪魔することにしたのでした。

ですが、情けないことに、引っ込み思案の私には、質問に行くまでになかなか踏ん切りがつきませんでした。まず、本当に質問に行くべきかどうかの決断に、時間がかかりました。また、いざ研究室に行くまでの間にも、心臓の激しい鼓動が止まりませんでした。そして、ようやく研究室の扉の前にまで来ても、ぐずぐずするばかりでした。だいたい、先生は私の知り合いでもなんでもありません。講義を聴いているといっても初対面のようなものです。それだけに、なおさら非常に緊張したのでした。それでも、無い勇気を振り絞って、研究室の扉を開けました。

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先生は私に気づき、「どちら様ですか?」と尋ねられました。私は、(1)自分は先生の講義を受けている1年生の富条という(名乗り)、(2)○○について分からないので質問にきた(用件の説明)、等々のことをなんとか小さな声で答えたのではないかと思います。研究室の前でぐずぐずしている間に、自己紹介の仕方など入念に頭の中でリハーサルを行ったのでした。この頃には、私の場面緘黙症?はかなり軽快していたので、こうしたことができたのでしょう。

先生は私を歓迎し、「インスタントだけど」と、コーヒーを沸かしてくださいました。そして、ご一緒にコーヒーを飲みながら、椅子に座って、先生のお話を伺いました。初めてお邪魔する大学の研究室でしたが、先生が親和的に接してくださったことにより、なんとか時間を過ごすことができました。

先生のお話はさすがに今となってはあまり覚えていないのですが、(1)昨年は近代経済学とマルクス経済学の違いを説明せよという課題を出した、(2)本の一部を丸写してリポートを提出する学生がいるがそのようなことをしてもばれる、等々のお話を伺ったのだけは覚えています。特に2番目については驚きました。近年、リポート課題で、ウェブサイト上での記述をコピペする学生がいるという話を聞きますが、同様のことをする学生はインターネットが普及する以前にもいたようです。

結局、研究室にお邪魔するまでが大変緊張しましたが、その後は私にしては大きな失態もなく(と自分では思っているのですが)、研究室を後にしました。引っ込み思案で人見知りが強い私にとっては、大きな体験でした。以後、こうした経験を積み重ねることになります。

なお、私が書いたリポートの内容は、今にして思うと顔から火が出るほど恥ずかしい内容で、先生からいただいた評価もさんざんなものでした。

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