緘黙の理解に役立つ絵本(英)

2012年09月18日(火曜日)

My Friend Daniel Doesn't Talk今回は、英国から出ている場面緘黙症を理解するための絵本について書きたいと思います。

■ 基本情報

絵本の題名は My Friend Daniel Doesn't Talk です。2006年に発売されています。発売元の Speechmark Publishing は言語療法、精神保健、高齢者介護、特別支援教育などの分野で書籍を刊行してきた出版社です。同社は、英国では緘黙児支援のバイブルとも呼ばれた The Selective Mutism Resource Manual を世に出した実績があります。

文章を担当した Sharon L. Longo 氏は教師で、緘黙のお子さんをお持ちなのだそうです。また、絵は Jane Bottomley 氏という方が描いています。

■ 内容

この絵本は、緘黙を知らない子ども(対象年齢4~8歳)向けに、緘黙児の理解に役立つよう作られたものです。新しいクラスに入った Daniel という緘黙の少年を、その友達となった Ryan という少年(主人公)の視点から描いています。

全28ページのうち、絵本の部分は23ページです。見開き左ページが文章、右ページが絵という構成です。最後の4ページには、親や教師に向けた緘黙の簡単な説明や、関連書、緘黙児を支援する団体などのリストがあります。

■ 感想

これはあくまで子ども向けの絵本で、実際のところ子どもがこれを読んでどう感じるかは私のようなオッサンには知る由もありません。ですが、クラスメイトの視点から緘黙児を描くという方法がとられているので、子どもは感情移入しやそうです。反面、緘黙の少年の内面が直接描かれず、そうしたものは、緘黙の少年の行動や表情(絵本なので、絵から表情は見て取れます)といった外見上見て取れるものを通じて窺い知るほかありません。ですが、私は、これはクラスメイトから緘黙児を見るとどう映るかをよく表していると思います。

結末は、劇的なハッピーエンドではありませんが、現実的なもので、緘黙のクラスメイトとともにどう歩んでいくかの一つの答えを示しており、好感が持てます。

私が印象に残ったのは、緘黙の少年を "so cute!" 云々と言った Jessica という少女です。彼女の登場は緘黙少年の状況が好転するきっかけの一つになるのですが、それにしても緘黙の少年を "so cute!" と言う少女の奇抜な発想は、個人的に心当たりがあります。

なお、日本にも緘黙を理解するための絵本『なっちゃんの声ー学校で話せない子どもたちの理解のために』があります。ページ数もほぼ同じで、(元)緘黙児の保護者が作者という点も共通しています。一方で、違いもあります。特に大きな違いは、今回の英国の絵本はもっぱら友達の視点から緘黙の子が描かれているのに対し、『なっちゃん』はそうではない点です。特に『なっちゃん』の前半部は緘黙の子寄りの視点で描かれていて、緘黙の子の内面がよく分かるようになっています。