米国の緘黙体験記

2013年02月12日(火曜日)

The Girl Who Doesn't Talk: Beyond Shy - A Journey Through Severe Social Anxiety Disorder今回は、最近出た米国の場面緘黙症体験記を読んだ感想を書こうと思います。海外の緘黙経験者が書いた本とはいえ、とても身につまされる内容でした。

本の題名は、The Girl Who Doesn't Talk です。著者は Susanna Klein さんという女性です。2012年に米国より出ている英語の本です。

出版社は iUniverse という自費出版の書物を出版している米国の会社なのですが、面白いことに、巻末には「Produced by Amazon Printed in Japan 落丁、乱丁本のお問い合わせは Amazon.co.jp カスタマーサービスへ」と書かれてあります(私はこの本を Amazon.co.jp で買いました)。

全107ページと本にしてはページ数が少ない上、空きページや空きスペースが多く、それほど時間をかけることなく読み終えることができました。

注意!この先では、本の内容について書いてあります。いわゆる「ネタバレ」もあります。自分も本を読みたいけれど、まだ内容を知りたくないという方は、この先はお読みにならないことをおすすめします。

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■ 本の全体~大学を出て以降の話が全体の半分以上

本は大きく2つの部分に分かれています。1ページから84ページまでが part1 で、著者の Klein さんが生まれてから進学、就労、転職を経験し、結婚するまでが書かれています。85ページから106ページは Part2 で、子育ての話です。

緘黙の体験記というと幼稚園や小学校など子どもの頃の話を期待する方がいらっしゃいそうですが、この本では17ページ目で早くも6年生の話が終わり、大学を出て以降の話が全体の半分以上を占めています。私としては、緘黙のいわゆる後遺症で悩む成人期の体験談が時系列に豊富に盛り込まれている、貴重な本だと感じました。

■ Part1~緘黙や不眠症による苦労話の連続、抗うつ剤による突然のハッピーエンド

Part1 は、緘黙や不眠症ゆえの苦労話の連続です。その具体的内容は日本で緘黙を長期化させた方も経験していそうなもので、米国の話とはいえ、他人事とは全く思えないものでした。例えて言えば、昨年ダイヤモンド・オンラインで連載された、大人の緘黙症特集にこの話が載っても違和感がなさそうです。度々引用される当時の日記が、著者の苦悩を生々しく描写しています。

そんな著者ですが、あることを機に人生が一気に好転します。それは、著者が医師から「ゾロフト」という抗うつ剤の処方を受けたことです。これを機に急に状態がよくなり、さらには男性と幸せな結婚をして Part1 終了となります。抗うつ剤でハッピーエンドとは、ドラマとしては味気ないでしょうが、実話として飾ることなく書かれてあり、好感が持てます。科学的根拠に基づいた方法で緘黙が治るということで、よいのではないでしょうか。

■ Part2~自分の子も緘黙に

Part2 では、産んだ子どもの一人が自分と似ていて、学校では緘黙してしまうという展開が待っています。一部の研究には、緘黙は家族性のものであることを示唆するものもありますが、このように、緘黙を経験した者はその子も緘黙になる確率が本当に高くなるかどうかについては、はっきりしたことは私には分かりません。

この子も親のように緘黙で苦しむ人生を送ることになるのでしょうか。ですが、幸運なことに、現代では米国に立派な緘黙支援団体があり、著者がこれと出会ったことにより、早い段階から子どもの緘黙症状を少しずつ治すことができるようになりました。緘黙児・者支援のノウハウと支援体制が整うことの重要性を改めて感じます。もし緘黙の発症に家族性の要素があったとしても(本当にそうかどうか私には分かりませんが)、こうした支援が整えば、緘黙児を救うだけでなく、子どもを作ろうと考えている大人の緘黙経験者をも救うことにもなるのです。

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