場面緘黙症は社会不安障害?特定恐怖?それとも…(2・完)

2006年05月20日(土曜日)

場面緘黙症は社会不安障害?特定恐怖?それとも…(1)の続きです。

場面緘黙症は社会不安障害なのか、特定恐怖なのか、独立した障害なのか。私もよく分からないのですが、分からないなりに検討しています。

■ 場面緘黙症・社会不安障害説

場面緘黙症は社会不安障害ではないかとする研究報告が、多くなされています。そのうち、主なものをいくつかご紹介します。ただし、ご紹介した論文の詳細にまでは触れていません。本当は論文の詳細を読んで検討したいのですが、詳細を読むには会員登録が必要の上に有料と、私には敷居が高いので…。

★ Black, B., & Uhde, T. W. (1992). Elective mutism as a variant of social phobia. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 31(6), 1090-1094.

「社会恐怖の変種としての場面緘黙症」。Google Scholar が示す被引用回数は56回。

場面緘黙症は社会不安障害の一つの症状である可能性を指摘したもののうち、初期のものです(違ったらごめん)。内容は、場面緘黙症と社会不安障害を合併した12歳の女子の事例報告です。

* * * * * * * * * *

★ Black, B., & Uhde, T. W. (1995). Psychiatric characteristics of children with selective mutism: a pilot study. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 34(7), 847-856.

「場面緘黙児の精神医学的特徴:一つの予備的研究」。Google Scholar が示す被引用回数は49回。

最初にご紹介した研究と同じ著者です。今回は30人の緘黙児を調査しました。

★ Dummit III, E. S., Klein, R. G., Tancer, N. K., Asche, B., Martin, J., & Fairbanks, J. A. (1995). Systematic assessment of 50 children with selective mutism. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry. 36(5), 653-660.

「場面緘黙児50人の系統的評価」。Google Scholar が示す被引用回数は34回。

緘黙児50人中全員が、社会不安または回避性人格障害の診断基準(DSM-III-R)に当てはまったそうです。英語圏では、場面緘黙症は社会不安障害の重篤な症状だという記述をよく見かけますが、その発信源の一つがこの論文のようです。

それにしても、50人もの緘黙児の事例をよくぞ集めたものです。どうりで共同研究者が多いはずです。私は内容を熟読したわけではないのでよく分からないのですが、もしかすると、本当に緘黙児を50人集めたのでしょうか。この研究を行ったメリーランド大学というのは、いったいどういうところなのでしょう。

■ 保育園児や幼稚園児が社会不安障害になるのか?

それにしても、ひっかかることがあります。発症年齢です。社会不安障害は、概ね15歳あたりに発症するとされています。しかし、場面緘黙症は、DSMによると5歳以前に発症するのです。

場面緘黙症・社会不安障害説の弱点は、このあたりでしょうか。

場面緘黙症と社会不安障害との関係については、まだまだお話したいことがあるのですが、それは別の機会に回します。

■ 場面緘黙症・特定恐怖説

場面緘黙症・特定恐怖説は、この発症年齢に着目したもののようです。

ただ、私がインターネットを使って調べたところ、この説をとっている学者は、ほとんど見つかりませんでした。唯一見つかったのが、Helping Your Child with Selective Mutism の著者の一人、マックホルム氏です。
専門家の多くは、場面緘黙児には特定恐怖があると考えている。

Many experts believe that children with selective mutism have a specific phobia.
と上記の本には書かれてありますが(8ページ)、眉唾ものです。

私に言わせれば、こうです。
マックホルム医師だけが、場面緘黙児には特定恐怖があると考えている。

Only Dr. McHolm believes that children with selective mutism have a specific phobia.
ですが、何も多数説が正しいとは限りません。

場面緘黙症が発症するのとほぼ同じ年齢、つまり学校に入る前ぐらいの年齢で、特定恐怖が発症するという研究があるそうです(Ollendick, H. T., King, J, N., & Muris, P. (2002) Fears and Phobias in Children: Phenomenology, Epidemiology, and Aetiology. Child and Adolescent Mental Health. 7(3), 98-106.)。マックホルム氏はここに目をつけたのでしょう。確かに、これだと発症年齢の問題はクリアです。

マックホルム氏の説は、いまのところあまり支持されてはいないようですが、もし今後研究が進んで、特定恐怖だと認められれば、これはマックホルム氏の学術的貢献ということになるのでしょう。

しかし、どうでしょう。場面緘黙児は別に保育園や幼稚園、学校を怖がっているわけではないような…(確かに、外に出ると緊張しますが、恐怖心を抱いているわけではないと私は思うのです)。

それに特定恐怖は、特定のものが怖いというだけで、話せなくなるわけではないのでは。例えば、特定恐怖の一つ、高所恐怖症は、確かに高い場所に異常な恐怖感を感じるでしょうが、別に高い場所で話せなくなるわけではないでしょう?

私は、特定恐怖説も、どうもしっくりしません。

■ 結論・微妙だが、独立した障害では?

現時点では、私は場面緘黙症を社会不安障害と考えるのも、特定恐怖と考えるのも、なんとも微妙に思います。

社会不安障害や特定恐怖に近い、独立した障害と考えるべきでは?

もっとも、場面緘黙症と社会不安障害の関係についてはまだ研究途上のようですし、私もまだまだ分からないことが多いので、これはあくまで現時点での結論です。


やれやれ、なんとか今日中に仕上げることができました。毎週土曜日更新という約束ですからね。少し急いで書いたので、あらがあるかもしれません。こんな記事でもよろしければ、人気blogランキングに応援クリックお願いします。おかげさまで、一時は9位にまで上がりました。

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