[続・緘黙] ゼミで発表 [ストーリー]

2013年07月02日(火曜日)

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このブログでは、私の来し方を振り返り、連載形式で書き続けています。今回は大学生編の第13回です。通算第95話をお届けします。

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ほぼ順調に大学3年生になりました。この頃あたりから私は学業面で悩み始め、そのうち大学を辞めようかとまで思い詰めるようになるのですが、ここまでのところ単位は無事揃っていましたし、休学や停学、不登校などもありませんでした。相変わらずほとんど一人で勉強ばかりしていたのですが、私の性格上、孤独から不安になるようなこともありませんでした。

■ 「プロゼミ」から「ゼミ」へ

2年後期に行われていたプロゼミも、3年次からいよいよ本格的なゼミに衣替えでした。私は引き続きS先生のゼミに所属することになりました。他のS先生のプロゼミに所属していた学生も、みなS先生のゼミに入っていました。

この段階のゼミでは、マクロ経済学の教科書の輪読が中心でした。音読だけなら、このときの私は大分声を出せるようになっていました。ただ、このゼミでは、むしろ先生の解説を聴いて黙々とメモをとる時間の方が長かったと思います。

■ ゼミで発表

そんなゼミでしたが、ある時、各ゼミ生が、教科書の指定された分野について先生に代わって黒板で解説するよう指示されたことがあります。いきなりではなく、予め発表する学生が指定され、次のゼミで解説できるよう準備しておくように言い渡されました。

当然、私も当てられました。人と話がするのがすこぶる苦手な私が、ちょっとしたプレゼンテーションをしなければならなくなりました。これはほとんど経験のないことで、特に私のような性格の人間はかなり不安になります。とにかく不安なので、準備を入念に行いました。

当日、私は思ったよりもずっと快調に話し始めることができました。「流動性の罠の状況では利子率が極めて低く、債券に対する需要はなくなり、他方、貨幣需要は無限大になります……」こんなことを、黒板に図を描いたりしながら説明していたと思います。早く次の説明にいかなきゃと思って早口で急いでいたとき、私の説明に不満だったS先生が、私の説明に割り込んできてしまいました。結局、私はその後、S先生の指示に従って、黒板に黙って数学の式を書き続けるだけの役割に終わってしまいました。

とはいえ、序盤は私にしてはうまく声を出して話をすることができたので、多少の自信にはつながりました。この頃は、この程度まで話ができるようになっていたのでした。

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■ プロゼミ生候補の訪問日に、偶然居合わせることに

3年の夏休みのある日、私は例によって大学の附属図書館で一人で勉強していました。ちょうどその日、私はS先生に何かの用事を思い出したので、研究室にお邪魔しました。

S先生は「おお、よく来た。夏休みなのに、どうして大学に来た?」と私を迎えてくださったのですが、「実はこの後、うちのプロゼミへの所属を考える2年生が、この研究室にやってくるんだ」とおっしゃいます。プロゼミは2年生の後期から始まることになっており、この夏休み中に2年生は各研究室を訪問見学するなどして、どのプロゼミに入るかを決めることになっていたのでした(私が2年生の時とは少し違っていました)。私はこれは悪いタイミングに研究室に来たと思い、退出しようとしたのですが、「せっかくだから君もここにいなさい」と言われ、私もS先生とご一緒に2年生と会うことになってしまいました。

研究室に入ってきた2年生は女子学生ばかりでしたが、一人だけ男子学生がいました。しかもこの学生は非常に優秀そうで、S先生に鋭い質問を連発していました。S先生は学生たちにどういうプロゼミにしていくか説明されていたのですが、おっしゃっていることが何か変で、特に男子学生は不満そうな顔をされていました。

この間、私はS先生の傍らにいて、ゼミ生の立場から2年生たちにプロゼミやゼミ、S先生について補足説明をしていたように思います。思ったより話をすることができました。ですが、件の男子学生はやはり不満だったようで、露骨にそうした顔をしていました。

それにしても、この日のS先生は少しおかしいです。S先生のお話を窺っていると、プロゼミの運営に意欲がないようにも聞こえてきました。そして、ついには、こんなことまでおっしゃいました。

「うちは、入るに値しないゼミなんだ」

この発言を聞いた件の男子学生はあからさまに不満を表明し、研究室から出ていってしまいました。教育熱心なS先生がなぜこのようなことをおっしゃったのか、当時の私には全く理解できませんでしたが、何かお考えがあるのだろうとは思いました。

今回のことで、私は想像以上に2年生と話ができて、自信につながりました。一時なら考えられないことでした。ただ一点、件の男子学生が私の発言に露骨に不満な顔をしたのが気になりましたが、S先生としては学生はあまりとりたくないようだったのでむしろこれでよかった、失敗できるときに失敗できる経験をしてむしろラッキーだったと思いました。

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◇ [続・緘黙]数百人の前で、2回も模擬面接[ストーリー]

※ 7月1日に、PC版ブログのデザインをおよそ4年ぶりに一新しました(前回のリニューアルは2009年3月4日)。ブログ開設8年目にして初となる、場面緘黙症Journal オリジナルテンプレートの登場です。PC のワイド画面化に対応して横幅を広めるとともに、ナビゲーションバーを挿入して他ページに移動しやすくしました。しばらく様子を見て、問題がなければこれでいきます。

また、PC版ブログの記事の冒頭にアイキャッチ画像を入れてみました(今のところこの記事のみ)。スマホ版だと表示されません。携帯版だと「画像」と表示されてリンクがついていますが、記事とは無関係の画像ですし、携帯には重い画像なので、ご覧にならない方がよいです。