AAC(拡大代替コミュニケーション)

2013年07月29日(月曜日)

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コミュニケーションに障害(障がい)を持つ人が、筆談やジェスチャー、最近ではスマートフォンやタブレット端末のアプリといった手段を使ってコミュニケーションを図ることがあります。

こうしたコミュニケーションの手段や道具を、福祉や特別支援教育などの分野では AAC(Augmentative and Alternative Communication)というそうです。私もよく知らないのですが、「拡大代替コミュニケーション」「補助代替コミュニケーション」と訳されます。AAC の国際団体のウェブサイトによると、AACとは「個人が日常のコミュニケーション上の困難を解決するために使う、一連の道具や手段」のことだそうです(Burkhart, n.d.)。

AAC の分類として、ノンテク、ローテク、ハイテク技法というものがあります。

〇 ノンテク技法

身振り、手振り、表情などを使ったコミュニケーションです。コミュニケーションに障害がある人のために、その補助をする道具を「コミュニケーションエイド」というそうですが、ノンテクでは道具を使わないことから、「非エイドコミュニケーション技法」とも呼ばれます。

〇 ローテク技法

文字盤、コミュニケーションボード、シンボルなど、非電子的な道具を用いたコミュニケーションです。筆談もここです。

〇 ハイテク技法

VOCA(ヴォカ; Voice Output Communication Aids)と呼ばれる人工音声を用いた携帯用のコミュニケーションエイドなど、電子機器によるコミュニケーションです。最近では、スマートフォンやタブレット端末用のアプリも出ています。

↓ 一般向けの分かりやすい解説です。東京都立心身障害者口腔保健センターのセンターだより。PDFファイル(386 KB)。なお、PDFを閲覧するにはAcrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら(新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。
AAC(補助代替コミュニケーション)について
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場面緘黙症の支援で AAC という言葉を見かけることはそうはありません。緘黙児・者が使うことがあるとすれば身振り手振りや筆談ぐらいで、文字盤やコミュニケーションボード、VOCA といった特別なコミュニケーションエイドを使うことは滅多にありません。

AAC の利用に必ずしも積極的でない意見があるかもしれません。信州かんもくサポートネットワークは、声に出して話すのは難しくても筆談だったらできるという緘黙当事者が多い一方、「筆談は目立つからやりたくない」「人と違うことはしたくない」という声を聞くこともあり、AAC の選択と使用はとても敏感な問題だと述べています(信州かんもくサポートネットワーク、2012年10月2日)。また、Schum は、著者の臨床経験から AAC は勧められないとしています。その理由は、(1) ほとんどの緘黙児は快適な環境では流暢に話すことができ、コミュニケーションの代替的な方法は必要ない。むしろ必要なのは、快適な環境ではとることのできるコミュニケーションを、より多くの場面でもとれるようにするための支援であるから (2) 著者の臨床経験では、緘黙児は AAC の使用にさほど興味がなかったから、としています(Schum, 2006)。

ですが、特に英語圏では、緘黙児支援で AAC という言葉や、それと似た augmentative communication や augmentative device といった表現を見ることがないことはありません。よく取り上げられるのが声を録音・再生できる専用の機器で、上の分類だとハイテク技法に該当するものです。緘黙児が、話せる場面で予め自分の声を専用の機器に録音し、話せない場面では録音した声を再生ボタンを押すなどして聞いてもらうというものです。ただ、これは日常のコミュニケーション上の困難を解決するという AAC の本来の狙いからというよりむしろ、緘黙児が言語コミュニケーションを段階的にとれるようにするための行動療法としての狙いからです。

例えば、米国の「場面緘黙症不安研究治療センター」は、かつてウェブサイトで GoTalk という AAC を紹介していました。これは、ボタンを押せば録音した音声が機械から出る道具です。

↓ GoTalk の使い方を解説した YouTube 動画(英語)です。ローテクと言ってますが、ハイテクのような……。
GoTalk: Have a Voice
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場面緘黙症不安研究治療センターは、こうした方法は、非言語コミュニケーションをとれるようになった緘黙児が言語コミュニケーションに移行するまでの中間段階で行うものとしています(Selective Mutism Anxiety Research and Treatment Center and Shipon-Blum, 2012)。重度の緘黙児・者は AAC を用いたコミュニケーションすら難しいでしょう。AAC の使用は緘黙症状がそこまでは重くないことが前提だろうと思います。

[文献]

◇ Burkhart, J.L. (n.d.). What is AAC? Retrieved from
https://www.isaac-online.org/english/what-is-aac/

◇ Selective Mutism Anxiety Research and Treatment Center and Shipon-Blum, E. (2012). Selective Mutism Stages of Social Communication Comfort Scale. Retrieved from
http://selectivemutismcenter.org/Media_Library/Stages.SM.pdf

◇ 信州かんもくサポートネットワーク(2012年10月2日)「非言語コミュニケーション」
http://shinshu-kanmoku.seesaa.net/article/295154039.html

◇ Schum, R. (2006). Clinical perspectives on the treatment of selective mutism. Journal of Speech-Language Pathology and Applied Behavioral Analysis, 1(2), 149-163. Retrieved from
http://www.thefreelibrary.com/Clinical+perspectives+on+the+treatment+of+selective+mutism.-a0170157270