緘黙サイトの歴史(下)

2013年08月26日(月曜日)

アイキャッチ画像。2006年12月9日当時の場面緘黙症Journal。
緘黙サイトの歴史(上)」の続きです。

■ 個人ブログの登場(2005年下半期頃~2006年頃)

インターネット上の場面緘黙症の情報というと、昔は個人のホームページによるものが中心でした。ところが2005年下半期あたりからブログによる情報発信が始まり、これがネットによる個人の情報発信の主流になっていきます。個人 HP からブログに転換した人、ウェブ日記のみをブログに転換した人、新しいハンドルネームで新しくブログを始めた人(私のことです)など様々でしたが、ブログで初めて情報発信を始めた人が多かったと思います。ブログのコメント欄は、新たな交流の場となります。

この時期に開設された代表的なブログは、「場面緘黙症専用ブログ」(2005年7月ウェブ日記より移行)「アニマルセラピーやってます♪」(2005年7月開設)「ほんとうは暖かい光が好き」(2005年8月開設)「fu・wa・ri」(2005年10月開設)「緘黙の話」(2005年11月開設)「緘黙らしく、自分らしく」(2006年1月開設)「場面緘黙症Journal」(2006年1月開設)などが挙げられます(いずれも、開設時の名称)。

場面緘黙症Journal も、当初はブログとして出発しました。掲示板やトップページを作り、個人 HP のような形をとったのは、後のことです。「これからはブログが主流で、個人の HP なんて流行らないかもしれないが」などと考えながら、作ったのでした。

なお、「国立特殊教育総合研究所」ウェブサイトで、緘黙についての解説がなされたのはこの頃と見られます。(Way Back Machine によると、遅くとも2006年1月には緘黙の解説があったようです)。

■ 二大緘黙支援団体ウェブサイトの登場と、個人ブログの発展(2007年頃~2009年頃)

ブログが流行り出す中、緘黙支援団体のウェブサイトが登場し、緘黙サイトの歴史は新たな段階を迎えます。「緘黙児を支援する会」(2006年8月サイト開設、現在の正式名「かんもくの会」の方が通りがいいですね)「かんもくネット」(2007年4月サイト開設)の二大緘黙支援団体のウェブサイトの登場です。この2つのサイトは、それまでの個人によるブログや HP にとって代わり、緘黙サイトの代表のような位置付けになっていきます。

両団体誕生の背景は、ネットなしに語ることはできません。「かんもくの会」の創設者は、もともとブログ「ほんとうは暖かい光が好き」で日本における緘黙児・者支援の現状について問題提起を行いネット世論を喚起しようとされていた方で、そうした活動を経て同団体の設立に至っています。「かんもくネット」は、「場面緘黙症Journal」掲示板の交流から生まれました。

両団体のサイトのそれまでにない大きな特徴の一つは、緘黙児・者の支援の必要性を社会に強く訴えようとしたことです。両団体はまた、ネット上にとどまらず、書籍出版や講演、シンポジウム、おしゃべり会などのかたちで現実世界でも活発な活動を行う点も大きな特徴です。それまでにも緘黙のオフ会が開かれていたのですが、両団体の活動により当事者や保護者たちがオフで会う機会が増えていきました。

特にかんもくネットは、緘黙に関する質の高い情報を豊富に提供しました。それまで緘黙に関する客観的な情報はネット上では乏しかったのですが、これにより、ネットの情報は大幅に充実していきます。

当時は、両団体とも(場面緘黙症Journal もそうでしたが)欧米の緘黙児支援をかなり高く評価する傾向があり、欧米の情報や、欧米で主流の行動療法を日本に取り入れようという姿勢がウェブサイトに反映されていました。これもまた、新しい動きでした。

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◇ 個人ブログの発展

一方の個人ブログですが、既存のブログに加えて、「ぼちぼち いこか♪」(2006年10月開設)「カンモク記」(2006年10月開設)「緘黙的人生」(2007年3月開設)「ジレンマ -緘黙人生の記録-」(2007年4月開設)「『はなぷり』の選択的注意集中」(2007年12月開設)「たみことこたみこの緘黙日記」(2008年11月開設)ほか多数のブログが開設、記事を蓄積していき、個人ブログはますますの発展を見せます。

◇ Wikipedia で緘黙に関する情報が充実

Wikipedia にも緘黙に関する情報が充実していきます。もともと Wikipedia には2004年12月から「緘黙」、2006年9月から「場面緘黙症」の項目があったのですが、2007年3月にかんもくネットの代表が編集に関わって以降、情報量が急増しました。

◇ mixi 利用者の増加

この時期にはまた、mixi の利用者が増加していきます。個人 HP でもブログでもない SNS で、ユーザー同士のより密接な交流に向いています。日記を書いたり、ユーザー同士コメントをし合ったり、コミュニティで交流を深めたりといったことが行われました。

◇ 個人 HP はやや下火に

その一方、個人 HP はやや下火になっていきました。ですが、ブログと個人 HP の中間形態のような「子リスくんのおはなし」が開設したり(2006年9月開設、Yahoo!Japan 登録サイト)、ブログとして始まった「場面緘黙症Journal」がトップページを作って個人 HP のようなサイトに様変わりしたり(2006年12月)、「学校で話せない子ども達のために」が開設されたり(2007年4月)と、新しい動きもありました。

また、個人 HP の老舗「浮遊」と「ココロのひろば」の緘黙解説や、「場面緘黙症専用」「場面緘黙症Journal」などは、まだまだ検索エンジン上位にリストされていました。「場面緘黙症Journal」に至ってはこの時期がむしろ最盛期で、Yahoo!Japan「緘黙」検索順位が1位を記録したりもしました。

◇ 「緘黙の輪」終了

こうした中、それまで緘黙の個人 HP をつないでいた「緘黙の輪」が、2007年4月に終了しました。ウェブリング提供元である「ウェブリングJapan」がサービスを終了したことによるものです。末期にはブログの登録もあった緘黙の輪でしたが、個人 HP をつないでいた頃に比べると、この頃にはネット環境が様変わりしていました。

■ 二大緘黙支援団体サイトを中心に、多様なサイト、コミュニティが混在した時代(2010年頃~)

二大緘黙支援団体が緘黙サイトの代表のような位置づけとして定着してゆく中、緘黙サイトには多様化の動きが進みつつあります。

2009年下半期頃から、新たに Twitter により緘黙の情報を発信する動きが出てきました。また、まだ少ないですが、Facebook でも少しずつ緘黙が話題になってきています。

緘黙支援団体のサイトも、従来からの二大サイトに加えて、「信州かんもくサポートネットワーク」(2012年3月開設)「Okinawa 緘黙(かんもく)当事者の会 ninny」(2013年5月開設)がブログを開設しています。また、親の会として「場面緘黙児 親の会 関東」(2012年11月開設?)「さくらんぼの会(場面緘黙児 親の会 関西)」(2013年8月開設?)のウェブサイトも開設されています。地域に根差した緘黙支援グループのウェブサイト開設は、最近の新しい動きの一つです。いずれのグループも、二大緘黙支援団体と関わりがあります。

また、支援団体ではないのですが、筑波大学の園山繁樹研究室が選択性緘黙 HP を開設しています(2013年3月開設)。

mixi でも新たな動きがあり、2010年2月には、緘黙関係では mixi 最大のコミュニティとなる「場面緘黙症」コミュニティが登場、ますますの盛り上がりを見せています。

個人ブログでは、「学校で話せない子ども達のために-ブログ版-」(2010年5月開設)「カツピコリンの独り言~緘黙人生~」(2011年8月開設)ほか数多くのブログが開設しています。一方、「fu・wa・ri」「場面緘黙症Journal ブログ」「RA・SHI・KU」(緘黙らしく、自分らしく)など更新が何年にもわたって継続する長寿ブログも数多くあります。新たな情報発信手段として Twitter が登場したものの、ブログにとって代わるものでは必ずしもなく、両者を併用している人も多いです。

このほか、2ch、Yahoo!知恵袋、OKWAVE、GREE、Benesse LifeSmile ウィメンズパーク、かんもくネットやかんもくの会の掲示板など様々な場で緘黙に関する情報交換や意見交換が行われているようです。

昔ながらの個人 HP はやはり下火ですが、そんな中、Yahoo!ジオシティーズで「知ってサポート☆場面緘黙(かんもく)」が開設(2012年11月)、たちまち話題になり、検索エンジン上位に表示されました。もはや老舗の域に入りつつある「場面緘黙症専用」「場面緘黙症Journal」も検索順位上位で、なお健闘しています。

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このように見てくると、緘黙サイトは、ブログや twitter の登場などネット社会の変化に大きく影響されてきたことが分かります。このような歴史をたどってきた緘黙サイトですが、今後はどういう方向に進むのでしょうか。


※ ここで取り上げた各種ウェブサイト(ブログ含む)は、いずれも管理者に無許可で名前を挙げています。「勝手に名前を挙げられて迷惑だ」と思われたらすみません。問題があれば削除致します。

※ 名前を挙げるのをうっかり忘れたブログがあったので、追加しています。(2013年8月27日追記)