『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』

2013年09月07日(土曜日)

アイキャッチ画像。ノーフォークテリアと読書する女の子。
今回は、今月上旬に発売されたばかりの本『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』を読んだ感想を書きたいと思います。

■ 本の基本情報

監修者は金原洋治氏、著者ははやしみこ氏、編者はかんもくネットで、いずれも緘黙児支援に深く関わってこられた方たちです。出版社は、緘黙に関する本を出版したことがある学苑社です。2013年9月5日に発行されています。

A5サイズ、60ページ超の内容で、前半20ページほどがマンガによる緘黙の解説です(全編カラー)。後半は文章とイラストによる解説です。編者ウェブサイトによると、前半は親子向け、後半は保護者向けとのことです。

↓ かんもくネットウェブサイトへのリンクです。
http://kanmoku.org/nachan_2.html
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■ 感想

◇ 緘黙の本、資料のリリースは新たな段階に

いやあ、すごい本が出たものです。2007年以降、洋書や海外資料の翻訳から始まった緘黙に関する和書や資料のリリースも、新たな段階に入ったと感じました。昔は、まずは海外の進んだ支援ノウハウを輸入することが重要視され、洋書や海外資料の翻訳が盛んに行われてきました。翻訳された内容は必ずしも私たち日本の読者に合うものではない場合もあったのですが、まずは海外のノウハウを知ることが重要だったわけです。

ですが、今年2013年に発行された今回の本ではそうした海外のノウハウが十分に消化されていて、日本向けにうまくアレンジされたり、日本ならではの支援法が示されたりしています。これまでにも『場面緘黙Q&A』など、国内の実情を考慮した本はありましたが、今回のことで、もはや海外ノウハウを輸入しさえすればよい段階は終わったことを確信しました(もちろん、これからも海外から学ぶべきことは多いだろうと思います。また、既存の翻訳書や資料の存在意義はまだ大きいと思います)。

◇ 親しみやすい、読みやすい

という堅苦しい感想から始まりましたが、本の内容は決して堅くなく、コンパクトな A5 サイズで、分量もさほど多くはないということもあって気軽に手に取りやすいです。また、分かりやすさに特段の配慮がなされていて、実に読みやすいです。『場面緘黙Q&A』よりさらに親しみやすく、コンパクトで、読みやすい印象です。それでいて、内容の水準は決して低いわけではありません。

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前半のマンガ解説は画期的で、緘黙の本としては世界でも例を見ないのではないかと思います。単にマンガというだけでなく、子どもに分かりやすそうな解説がなされています。それにしても、作中に出てくる「博士」という人物、どなたかに似ているような気がします。

後半は保護者向けとのことですが、子どもでも小学校高学年ぐらいになると読めそうな分かりやすい内容です。イラストがふんだんに盛り込まれている点も読みやすさの理由でしょう。場面緘黙症Journal も最近写真素材を活用することが増えてきましたが、文章に交えて親しみやすい画像があると、読みやすさの印象に影響を与えると思います。

後半の保護者向けのアドバイスは具体的にして実践的で、感嘆するばかりです。このような内容が書けるのは、これまでの海外ノウハウの輸入の蓄積があるのはもちろんですが、何よりも、著者自身が緘黙だった息子さんの支援を行った経験があり、また、かんもくネット事務局のメンバーとして、多くの保護者さんのお話を聞いてきたからだろうと推測します。保護者の力は大きいです。

どうして声が出ないの?: マンガでわかる場面緘黙ページ数は60ページ超ですが、密度は濃く、想像以上の内容でした。緘黙の症状が重い場合や、緘黙以外の問題を併せ持っている場合など、必ずしも本書が合わない場合もあるかもしれませんが、緘黙児とその保護者がともに読める本として、おすすめです。