goo ヘルスケアの選択性緘黙症分類

2013年11月07日(木曜日)

アイキャッチ画像。ヨークシャーテリアを抱き寄せPCを使う女の子。
最近、goo ヘルスケアというサイトに「選択性緘黙症」の項目ができ、検索エンジン上位表示されるようになりました(Yahoo! で「緘黙」と検索したら、うちのサイトより上です……)。ご覧になった方もかなりいらっしゃるのではないかと思います。

goo ヘルスケア「選択性緘黙症」のページ
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この goo のページでは、「タイプI」「タイプII」「タイプIII」という緘黙の三分類が紹介されています。ですが、この分類はいったい何を根拠にしたものなのか、誰がいつ行ったもので出典は何か、問題点はないのか等といった細かいところまでは書かれてありません。私はそこのところを多少知っているので、補足してみようと思います。

大井正己氏らの分類


上の分類は、1979年に『精神神経学雑誌』に掲載された大井正己氏らの研究によるものです。長年、日本でよく引用されてきた分類です。

大井正己、鈴木国夫、玉木英雄、森正彦、吉田耕治、山本秀人、味岡三幸、川口まさ子 (1979) 「児童期の選択緘黙についての一考察」『精神神経学雑誌』81(6)、365-389。

1971年から77年にかけて、名大精神科児童クリニックと情緒障害児短期治療施設「くすのき学園」において大井氏らがインテンシブに治療に関わっていた24例(男14、女10)をもとに分類したものです。緘黙の分類については当時既に先行研究がいくつも存在したのですが、大井氏らはそれらを24の症例をもとに批判的に検討した上で、独自の分類を生み出しました。

大井氏らによると、この分類は重症度の指標でもあり、治療の方針をたて、予後を予測する目安でもあると考えられるそうです。つまり、タイプIは良好郡が多いのに対して、タイプIIは不良群が多く治療は困難、タイプIIIは不良群ばかりで予後が暗いそうです(大井氏らの論文では「TypeI」「TypeII」「TypeIII」という表現が用いられていますが、ここでは goo ヘルスケアに合わせて「タイプI」「タイプII」「タイプIII」に統一します)。

荒木冨士夫氏の分類


面白いことに、大井氏らの研究が発表された同年、荒木冨士夫氏が偶然、大井氏らと似た緘黙の三分類を提唱しています(荒木、1979)。大井氏ら自身、後に「われわれのものとほとんど一致しているように思われる」と述べています(大井ら、1982)。

成人期、青年期の緘黙研究で引用


大井氏らの分類は予後を予測する目安でもあったためか、成人期や青年期の研究でも引用されています。大井氏ら自らの青年期の緘黙研究(大井ら、1982)や、比較的最近の2006年に発表された緘黙の成人期への影響に関する研究でも引用されています(大村、2006)。

近年、自閉症スペクトラムの一部を含むのではという指摘が!


大井氏らの分類で重要なのは、近年、自閉症の概念が拡大されたことにより、この分類に今日でいう自閉症スペクトラム障害の一部が含まれているのではとの指摘が出ていることです。選択性緘黙と自閉症スペクトラム障害の鑑別の重要性が指摘されている今日、この点は留意したいです。

大村豊氏は、「タイプII」は、受動型の高機能広汎性発達障害のケースで選択的な緘黙を示す一群が含まれるように思われると指摘しています(大村、2006)。渡部泰弘氏らも、「タイプII」は自閉症スペクトラムの一部と考えられると述べています(渡部ら、2009)。そして、こうした指摘を踏まえて、緘黙分類を再検討する試みもなされています(臼井ら、2013)。

[文献]
* * * * * * * * * *

◇ 荒木冨士夫 (1979)「小児期に発症する緘黙症の分類」『児童精神医学とその近接領域』20(2)、60-79。

◇ 臼井なずな、高木潤野(2013)「緘黙の類型化に関する研究-従来指摘されてきた2つの分類からの検討-」『長野大学紀要』34(3)、1-9。

◇ 大井正己、鈴木国夫、玉木英雄、森正彦、吉田耕治、山本秀人、味岡三幸、川口まさ子 (1979) 「児童期の選択緘黙についての一考察」『精神神経学雑誌』81(6)、365-389。

◇ 大井正己、藤田隆、田中通、小林泉 (1982) 「青年期の選択緘黙についての臨床的および精神病理学的研究-社会化への意欲に乏しい5症例-」『精神神経学雑誌』84(2)、114-133。

◇ 大村豊(2006)「選択緘黙-成人期への影響-」『精神科治療学』、21(3)、249-256。

◇ 渡部泰弘、榊田理恵 (2009)「自閉症スペクトラムの観点から検討した選択性緘黙の4例」『児童青年精神医学とその近接領域』50、491-503。

[関連ページ]

↓ 最近作ったページ。ここで紹介している「大井らの分類」が、今回お話しした分類です。内容を修正しています。
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