緘黙を経験した専門家が出した絵本(海外)

2014年02月01日(土曜日)

アイキャッチ画像。カピバラ。
Charli’s Choices という、場面緘黙症をテーマとした海外の絵本を読みました。今年出版されたばかりの絵本です。読んだ感想を書いてみたいと思います。

作者はニューヨーク州認定臨床ソーシャルワーカーの Marian B. Moldan 氏 と、イラストレーターなどをされている Toby Allen 氏。ペーパーバック版と電子書籍版が出ており、私は電子書籍 Kindle のものを読みました。出版社は Archway Publishing。発行地は米国インディアナ州のブルーミントンです。

※ 注意!以下には、作品の内容に関する記述があります。まだ読んでいないので知りたくないという方はご注意ください。

* * * * * * * * * *

Charli’s Choices内容は、ある女の子が緘黙の友達の家に遊びに行った際、お母さんの助言のもとで発話を必要とする選択肢型の質問を重ね、次第に緘黙児が声を出すようになるというものです。日本で言うと小学校低学年あたりの子を対象とした作品と思われます。

ページ数は少なく、内容もシンプルですが、子ども向けの一見易しい絵本の中に、行動療法による緘黙児支援のいくつかの要点が凝縮されていて、よくできた絵本だと感じました。具体的には、以下の点です。

緘黙児が不安をあまり感じない場面から、徐々に発話を促す


緘黙児に対する行動療法の一つの原則です。最近日本で出版された『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』でも、同様の「スモールステップの取り組み」が紹介されています。

緘黙児の家で母親と一緒にという、緘黙児が不安を感じない場面設定から始める


場面によって話せなくなる場面緘黙児にとって、発話をするための場面設定は重要です。専門家の中には最初に家で発話練習を行う必要性を強調し、この段階を経ることなくいきなり学校などで発話練習をすることに反対する方もいるのですが、この主張の当否は私には分かりません。

選択肢型の質問で発話を促すことから始める


「あなたはゆるキャラのどんなところが好きですか?」といった質問よりも、「あなたは "ふなっしー" と "くまモン" のどちらが好きですか?」といった選択肢型の質問の方が、緘黙児の発話を促すにはよいとされます。絵本ではさらに、最初は語数の少ない言葉を回答すれば済む質問から始めています。

最初は母親を仲立ちにして、次に直接の言語コミュニケーションに移す


直接言葉で伝えられないけれども、母親を通じてならなんとか伝えられる緘黙児がいます。ここでの母親の役割を「言葉の橋渡し役」(verbal intermediary)といいます。橋渡し役は、母親のような安心して話せる人が担ったり、あるいは自分の声を録音・再生できる機器やアプリが担ったりします。橋渡し役を通じた言語コミュニケーションがとれるようになれば、次に直接の言語コミュニケーションに移ります。


ただし、作者のあとがきにあるように、この絵本に書かれている方策は全ての緘黙児に合ったものではないでしょう。特に、うなずいたり首を横に降ったりといった簡単な非言語コミュニケーションは少しとれるけれども、言語コミュニケーションはとれないような緘黙児には参考になる部分があるだろうと思います。

作者の Marian B. Moldan 氏は長年緘黙児・者の支援を行ってきた専門家です。同氏はニューヨ ークで Childhood Anxiety Solutions という施設を運営されています。幼児期の不安障害、特に緘黙を専門とした施設だそうです。2011年にはニューヨーク州ソーシャルワーカーオブザイヤーを受賞されています。実は、Moldan 氏ご自身も緘黙を経験された方です。

イラスト担当の Toby Allen 氏もまた、ご自身が不安障害で悩まれた経験のある方だそうです。

なお、本書の内容の一部は、Google ブックスというサイトで Charli’s Choices と検索すれば読むことができます。

[関連リンク]

Google ブックス
新しいウィンドウで開く