大腿骨を骨折しても緘黙を続けた少年

2014年02月23日(日曜日)

アイキャッチ画像。アントワープ。写真サイト pixabay より。
「フランダースの犬」でも知られるフランドル(フランダース)地方は、国でいうとベルギーあたりでしょうか。このフランドル地方の英字新聞に、場面緘黙症を主題とした記事が載ったのですが(電子版で確認)、これがなかなか興味深い内容でした。

記事の概要


記事は、新しく開設された緘黙を専門としたウェブサイトを紹介するとともに、フランドルでもあまり知られていない緘黙を、実例を交えながら解説したものでした。緘黙児の具体的な支援法や、緘黙児支援をめぐる現状の問題、さらにはフランドルの最近の教育行政の動きにまで触れるなど、比較的踏み込んだ内容でした。

大腿骨を骨折も、緘黙を続けた10歳児


記事の中で目を引いた箇所の一つは、水泳の授業中に大腿骨(だいたいこつ)を骨折したにもかかわらず、教師にもクラスメイトにも何も話さなかったという緘黙の少年の話です。さぞ苦しい思いをしたことだろうと思うのですが、記事としては、緘黙がただの内気ではないことを伝える分かりやすい話を引用したものだと思います。

なお、これと似た話は他でも読んだことがあります。英国の新聞 The Daily Telegraph では、腕の骨が折れたにも関わらず助けの声をあげられなかった緘黙児の例が紹介されたことがあります。また、英国の本の翻訳書『場面緘黙へのアプローチ』には、学校の消火扉に指を挟んだにもかかわらず、全く声を出さなかった緘黙児の話が載っています。

一方で、英国で緘黙児支援のバイブルとされる The Selective Mutism Resource Manual には、緘黙の子は、非常時になるとたいてい(more often than not、つまり50%以上)声を出すとも書かれています。

コンピューターゲームも取り入れたオランダの緘黙児支援


記事では、緘黙児への具体的な支援法も書かれてあります。欧米で主流の方法と同じようですが、やはり細かい部分に独自性があります。

ユニークだったのは、オランダの Spreekt voor zich という支援プログラムです。このプログラムでは、教育目的で開発されたコンピューターゲーム(いわゆるシリアスゲーム)を支援に取り入れています。声を出すなどすると、ゲーム内の城門が開く仕掛けなどがあるそうです。

以下のオランダの緘黙児支援団体のウェブサイト(オランダ語)に、このゲームに関する解説があります。ページ中程の画像をクリックすると、ゲームを実際にプレイする子の YouTube 動画を見ることもできます。それにしてもこのサイト、子どももアクセスすることを想定してかポップなデザインで、ウェブサイトを持つ者としては興味深いです。

therapie voor Selectief Mutisme(主にPCでの閲覧向けです)
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※ 昔のスーパーマリオ(といって通じるかな……)のような、横スクロールアクションでしょうか?

コンピューターゲームを通じて緘黙児の発話を促す試みは他でもなされていて、学術発表されたこともあります。ただ、このオランダのゲームは少し凝っていそうです。こうしたゲームには、緘黙児が治療や発話といったことを強く意識することなく発話できるメリットがあるだろうと思います。

むすび


新聞記事を読んで、緘黙児をめぐる状況はフランドルでもそう変わらないという印象を持ちました。比較的踏み込んで書かれた記事で、コンピューターゲームを取り入れた緘黙児支援などユニークな内容もあり、興味深く、勉強になりました。

今回話題にした記事


◇ Furniere, A. (2014, February 21). Selective mutism: Breaking the silence. Flanders Today. Retrieved from http://www.flanderstoday.eu/education/selective-mutism-breaking-silence

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