英国から新たに出た、緘黙の本

2014年09月29日(月曜日)

アイキャッチ画像。写真素材サイトモデルピースより、藤浦真菜さん。
英国で場面緘黙症を主題とした新たな本が出ました。Tackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parents という本です。日本では電子書籍 Kindle 版が9月21日に、ペーパーバック版が10月21日に発売です。

本書については、かんもくネット事務局員の Miku さんがその概要について取り上げており、ご存じの方もいらっしゃるだろうと思います。

↓ MIKU さんのブログ 「場面緘黙について考える-備忘録-」へのリンクです。
◇ 9月にSMIRAの新しい緘黙本が出ます
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※ SMIRA(Selective Mutism Information and Research Association)とは、英国の有力緘黙支援団体です。私に言わせれば、世界三大緘黙支援団体の一つです。特に英米独に、有力な緘黙支援団体があります。

私はこの本の Kindle 版を一通り読みました。ここで感想のようなものを書こうと思います。まだ熟読したとまではいかないのですが、早めに取り上げたいので。拙速な感想になるかもしれませんが、ご容赦ください。

本の基本情報


本の副題にある通り、専門家や親向けの本とみられます。ペーパーバック版だと256ページの内容だそうです。

単著ではなく、多数の専門家や支援者が寄稿しています。その詳細は MIKU さんのブログに詳しいですが、第12節では、かんもくネット代表の角田圭子氏の寄稿も掲載されています。なお、編者は、元言語療法士で言語病理学と言語療法の上級講師であるレイ・スミス(Rae Smith)氏と、SMIRA 会長で元精神保健福祉士のアリス・スルーキン(Alice Sluckin)氏です。

感想


MIKU さんのおっしゃる通り総括的な内容ですが、緘黙について多角的に迫っています。例えば、緘黙と吃音、緘黙のケアプラン(クリティカルパス?)、法的サポート、若者の自信、大人の緘黙といった話題についてまで取り上げています。緘黙の本というと、海外でも行動療法による支援マニュアルのようなものが多数出ているのですが、本書は総括的な内容なので、それらとは違った位置付けです。総括的ですし、内容はしっかりしていますし、分量も盛りだくさん、さらにSMIRA が関わっていますから、英国では定番の一冊になりそうです。

英文はそう難解ではありませんが、『場面緘黙Q&A』のような親しみやすいイラストが挿入されているわけでもなく、論文がそのまま載っているなど、専門家ならともかく家族が読むにはもしかしたらやや難しめかもしれません。

かんもくネットの角田圭子氏が寄稿した箇所は「日本の現状」(Current situation in Japan)と題するもので、ページ数としては多くはありません。ですが、日本の緘黙児・者支援をめぐる現状が英国の違いを意識してよくまとめられています。私は日本在住者として、なるほど日本は他国に比べるとこうなのかと勉強になりました。なお、この箇所の英訳を MIKU さんが担当されています。

Tackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parentsそれにしても、最後の大人の緘黙に関する寄稿だけがなぜ付録扱いされているのか気になります。他の寄稿と同じように、一つの節(章?)にしてもよいと思うのですが、何か考えがあってのことでしょうか。この付録は、緘黙は子どもだけのものというよくある見方に挑戦する内容で、それも iSpeak という緘黙の若者や大人のための支援団体が行なった調査をもとにした、根拠のあるものです。この調査には83人の成人が参加し、79人がいまなお緘黙と、調査の規模が大きく、付録という扱いですが注目したいです。

[追記(2015年3月12日)]

この調査ですが、インターネット上で公開されています。

※ 大人の緘黙症の大規模調査(英)
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本書は最新の知見に基づいていますし、類書にないことも書かれてあり、勉強になりました。英国の読者を意識したとみられる内容ですが、日本の読者にも学べる点は多いです。私はさらに時間をとって、気になる箇所をゆっくり読んでみたいものです。何か気付いたこと等あれば、またこのブログで取り上げたいと思います。Silent Children(邦訳『場面緘黙へのアプローチ』)のように、翻訳されるでしょうか?

※ 今日のアイキャッチ画像は藤浦真菜さん(モデル)です。このブログでは5度目と、お世話になっています。