スモールステップの取り組み、短期集中か長期コツコツか

2015年06月23日(火曜日)

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米国で広まりを見せる短期集中的支援


易しい場面から少しずつ発話に慣れるようにもっていく「スモールステップの取り組み」。行動療法と呼ばれるもので、近年、『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』など、子どもの場面緘黙症をテーマとした本では高い頻度で取り上げられています。

この取り組みは、例えば夏休みなどを活用して丸々1週間短期集中的に行うのと、週に1度コツコツと行なうのと、どちらが効果的なのでしょうか。といっても、緘黙児も子どもによって様々ですし、取り組みを行なう側の事情もあり、一概には言えない部分もあるかもしれませんが、一般論として、支援の効果はどちらが高いのでしょうか。

米国では、ここ数年、緘黙児への短期集中的行動療法プログラムについての情報が増えてきています。行動療法は欧米が盛んで、近年の日本での行動療法ブームも欧米の手法を輸入したところから始まったものなので、私としては気になる動きです。

米国で最大の緘黙支援団体 Selective Mutism Group の前代表(前理事長?)Aimee Kotrba 博士は、集中プログラムの有効性を高く評価する専門家の一人です。緘黙児の発話練習にはウォーミングアップに時間がかかりがちなのですが、集中的に行なうと、その時間を短縮できるというのです。

Kotrba 博士は最近著書を出したのですが、この中で集中プログラムについて詳しく述べています(Kotrba, 2015)。それによると、集中プログラムはそれを実施する環境によって3つに分類されます。

● 専門家のオフィスで行なうもの
● 学校場面に似せた状況で行なうもの
● 学校場面で行なうもの

特に近年広まっているのが、学校場面に似せた状況で行なう集中的支援


このうち、2つ目の学校場面に似せた状況で行なう集中プログラムは、ここ数年、米国で広まりを見せています。これは2009年頃に児童心理学者の Steven Kurtz 博士が始めて行なったもののようなのですが、現在では私が確認しただけでも、ここ1年前後で次の7つの施設で行なわれていた、ないし行なわれる予定です。

○ Adventure Camp(実施施設:Advanced Therapeutic Solutions)
○ Brave Buddies(実施施設:Child Mind Institute)
○ Brave Bunch(実施施設:フロリダ国際大学子ども・家族センター)
○ Brave Bunch Camp(実施施設:ボストン大学不安関連障害センター)
○ Camp Courage(実施施設:ニューヨーク大学ランゴーン医療センター)
○ Camp Out Loud(実施施設:Dunn Behavioral Consulting)
○ Confident Kids Camp(実施施設:Confident Kids Camp)

この学校場面に似せた状況で行なうプログラムは、どこも内容がかなり似ています。主に夏休みに4~5日間にかけて行なわれるもので、緘黙児にとって安心できる環境の模擬教室を設定し、 スケジュールも学校に似せて、そこで効果的に発話行動を促します。10名程度といった少人数で行なうグループプログラムでもあります。

学校場面で行なう集中的支援


3つ目の分類に当てはまる学校場面での支援法の有効性は、Kotrba 博士は特に高く評価しています。著書の中では、週1回のプログラムよりも効果的かもしれないとまで述べています(Kotrba, 2015)。

ネット上のコメントにも高い評価が確認できます。あるQ&Aサイトで Kotrba 博士が残したコメントによると、博士は、学校場面で緘黙児に1日中ないし2~3日間にわたって集中的に行なう行動療法的支援を行なっているのですが、これは、緘黙児が不安に慣れる速さを高めるのに「最も有益」(most beneficial)であることに気付いたというのです。

◇ その Aimee Kotrba 博士のコメント (新しいウィンドウで開く

効果のほどは?


このように、集中的プログラムは効果が高いと主張する専門家がいます。また、緘黙児の不安を減らすのに効果があったとか、行動療法の取り組みの時間を短縮する効果があったという報告も、しかるべき場?でなされたことがあるそうです(Kurtz, 2013)。他にも効果の検証に関する話はいくつかあって、このブログでは「緘黙児への短期集中型行動療法(後編)」の中で取り上げたことがあります。

ただ、少し慎重なことを言うと、どこまで厳密なかたちで効果が確かめられたかが、私には分からないところもあります。また、特に学校に似せた環境で行なう集中プログラムは確かに米国で広まっているのですが、それは、プログラムの効果が認められたゆえかどうかは、私には分かりません。

そういうわけで、集中的に行なう行動療法は米国で最近広まっていて、気になっているのですが、その効果のほどについては、慎重な私にはもう一つ分からないところもあります。日本の方には、「スモールステップの取り組みは短期集中的に!」と単純におすすめするつもりは現段階ではないのですが、短期集中的にやった方がよいのか、長期的にコツコツやった方がよいのかといった問題意識を時々持って取り組んでみると、何か発見があるかもしれないとは思います。

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↓ 学校場面に似せた状況で行なう集中的支援について、詳しく書いています。
◇ 緘黙児への短期集中型行動療法(前編) (新しいウィンドウで開く

文献


◇ Kotrba, A. (2015). Selective Mutism: An Assessment and Intervention Guide for Therapists, Educators & Parents. Eau Claire, WI: PESI Publishing & Media. [Kindle version]. Retrieved from Amazon.com

◇ Kurtz, S. (2013, October). Intensive treatment of selective mutism. Presented at the Selective Mutism Group Annual Conference. Berkeley, CA.←すみません。一次情報として確認していません。Kotrba 博士の著書からの孫引きです。だって、カリフォルニアになんて行けませんよ!