保護者が、緘黙の洋書を読んでいた時代

2015年09月09日(水曜日)

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機械翻訳を使ってまで、緘黙の洋書を読んだ保護者もいた


10年近く前、場面緘黙症の洋書を読もうという動きが一部で広まっていたのをご存じでしょうか。ある緘黙の子をお持ちの親御さんなどは、英語が苦手だからというので、インターネットの機械翻訳を使ってまで読まれていました。

皆が読んでいた本は、Helping Your Child With Selective Mutism。後に、『場面緘黙児への支援』として翻訳された本です。

当時、日本に緘黙の専門的な情報が乏しかった


当時、緘黙を主題とした専門的な本といえば、『場面緘黙児の心理と指導』(89年執筆、94年出版)の1冊しかありませんでした。また、インターネット上でも、緘黙に関する専門的な情報はほとんどない状況でした。ですが、海外、特に英語圏の国々では緘黙の本がたくさん出ていました。そこで、海外の本を読んでみようという動きが一部で広まったのです。

同じ頃、英語圏の緘黙に関する資料を翻訳・公開しようという動きもありました。翻訳資料を公開したのは、この場面緘黙症Journal でした(ただし、私はあくまで公開しただけで、翻訳には携わっていません)。資料は好評で、これを公開して以降、場面緘黙症Journal は注目を集めるようになりました。なお、この資料を翻訳した方が後に「かんもくネット」を結成したことから、現在は翻訳資料はそちらに移っています。

海外情報の輸入は、当時大きな課題でした。「日本へ最新の緘黙症治療法をもたらす会」と名乗った会まであったほどでした。

今日、日本でも緘黙の情報が蓄積され、海外情報への関心は低くなった


あれから10年近く経ちましたが、状況は当時とは大きく変わっています。緘黙の本が日本でも何冊も出て、初めての方にはどれから読めばよいのか、案内がなければ分からなさそうなほどです。また、緘黙に特別な関心を持つ専門家が日本に何人も現れ、ネット上の緘黙情報の充実につながっています。

その一方、海外情報に対する関心は薄くなったのではないかと感じています。日本語圏だけで既に緘黙の情報はある程度集まるようになったので、わざわざ海外情報にまであたる必要性を感じる人が少なくなったのでしょう。海外と日本の情報格差を埋めるという当時の関係者の目標は、ある程度達成されたのではないかと思います。

ここまでくると、今度は逆に、日本の緘黙情報を海外に輸出すると面白いのではないかと思います。緘黙支援の考え方やノウハウはもちろん、マンガを使った緘黙解説やコミックエッセイといった日本特有の緘黙文化(変な言葉……)を海外に紹介したら、どう受け取られるのか興味があります。

海外情報に注目する意義は、まだまだある


ただ、緘黙に特段の関心を持つ専門家は英語圏の国々の方がずっと多いですし、海外には日本以上に大きな活動をする緘黙支援団体があります。メディアの緘黙の扱いも、先日、ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルで取り上げられたように、日本以上に大きい国があります。そして、緘黙に関する注目すべき研究は主に英語で発表されており、その著者は海外の研究者ばかりです。

海外情報に注目する意義はまだまだあるだろうと私は考えています。ですので、今後も海外情報を場面緘黙症Journal で取り上げていこうと考えているのですが、海外情報の記事は、大体読者の皆さんの反応が鈍く、悩みどころです……。