2025年、緘黙をめぐる状況はどう変わる

2015年10月12日(月曜日)

アイキャッチ画像。

場面緘黙症の研究や支援に関して日本はアメリカより10年、いやもっと遅れているように見えます。

http://preciousshine.at.webry.info/200510/article_2.html

上の記事が書かれたのは、今から10年前です(2005年10月8日)。弥生桜さんという方が書かれたもので、この方は、後に「かんもくの会」という会の代表になりました。

10年前は「かんもくネット」もなかった


10年前の状況は、私はリアルタイムで知っています。場面緘黙症Journal を始めたのが大体この頃だったので、当時のことには少し思い入れがあります。

当時の日本には、緘黙に特別な関心を寄せる研究者や臨床家はいませんでした。また、「かんもくネット」のような緘黙支援団体・グループもありませんでした。今日盛んな緘黙関係のイベントもなく、一部の当事者が小規模にオフ会を開いていた状況でした。

この頃の緘黙の本といえば『場面緘黙児の心理と指導』『君の隣に』『負けたらあかん!』の3冊ぐらいで、インターネットに目を転じてみても、Wikipedia にさえ「場面緘黙症」の項目がないほど緘黙の情報が少ない時代でした。メディアで緘黙が扱われたなんて話も、ほとんど聞いたことがありませんでした。

10年後、状況は大きく変わった


あれから10年、緘黙をめぐる状況はずいぶんと変わりました。全体的に10年前の米国の水準にはまだ達していないだろうと思うのですが、それでも目覚ましい変化です。関係者の努力の賜物でしょう。

特に出版関係については、10年前の米国の水準を超えていると思います。10年前、弥生桜さんが「おそらく日本では、これから10年たったって、12年も前に出た河井先生の『場面緘黙児の心理と指導』の次の本が出ることはないと断言してやる」と書いたことを思えば、隔世の感があります。

弥生桜さんにしても、冒頭の記事から窺える通り、後に、「かんもくの会」代表として学界に働きかけを行ったため、緘黙に特別な関心を寄せる専門家が現れるようになりました。そういえば2013年より、研究者や臨床家の集まりと思われる「日本緘黙研究会」が始動していますが、これは、弥生桜さんらによる、10年に及ぶ尽力があったためではないかと私は推測しています。

10年経っても変わらないもの


一方、この10年で変わらないものもあります。それは、「周囲の無理解に苦しんだ」「緘黙のことをもっと多くの人に知ってもらいたい」という当事者・経験者、家族らの声です。

日本の10年は先を行くと思われる米国でさえもいまだに緘黙の認知が十分進んでいないようです。いま英語圏を中心に盛り上がりを見せている緘黙啓発月間も、昨年までは米国が最も盛んでした(今年は英国の有力団体が啓発活動に加わり、状況が変わっています)。

2025年、緘黙をめぐる状況はどう変わる


このように目覚ましい進歩があったこの10年ですが、ではこの先の10年はどのような歩みを辿るのでしょうか。

10年後といえば、2025年(平成37年)です。かんもくネットは誕生18周年を迎えます。また、信州かんもく相談室の高木潤野代表は2012年当時、「学校の先生や、あるいはカウンセラーや、保育士さん、幼稚園の先生が、適切な支援が誰でもできるという状態を10年間で作っていきたい」と述べていますが、その10年が経った時期でもあります。

未来は私たちが5年後、10年後といったビジョンを持って主体的に作るものでもあります。ですが、ここでは、こんな未来が来るかもしれないなあという無根拠な想像にとどめます。以下で挙げる事柄が実際に起こりそうな裏づけがあるわけではありません。過去10年に大きな進歩があったので、楽観的な未来像を思い描いています。

世の中の動き


○ コミュニケーション能力が、今以上に重視される世の中になる
○ 少子化がさらに進み、子どもの数が今より少なくなる

緘黙の啓発


○ NHK が「クローズアップ現代」で、緘黙を取り上げる
○ 誰もが知る有名人が「実は私、子どもの頃に緘黙でした」と告白し、話題になる

緘黙支援団体の動き


○ 一部の緘黙支援団体が、法人化する
○ 一部の緘黙支援団体が、国と関わりを持つようになる
○ 一部の緘黙支援団体が、緘黙を経験した有名人を「ウルトラサポーター」に任命し、啓発活動に協力してもらうようになる

専門家らの動き


○ 「日本緘黙研究会」が発展し、「日本緘黙学会」になる
○ 「日本緘黙学会」のメンバーが、海外の査読誌に論文を発表する
○ 緘黙児・者の割合が、昔に比べて増えていると見られる調査結果が発表される
○ 緘黙の支援を専門とする、民間の診療所が登場する
○ 米国で広まる緘黙児への集中療法が、日本でも行なわれるようになる
○ 緘黙経験者の中に、緘黙の専門家になる人が現れる

インターネット関係


○ Twitter とも Facebook とも違う新たなツールが登場、緘黙情報もそちらに集まる
○ SNS やどこかの緘黙支援団体の会員にならなければ入手できない情報が増える
○ 場面緘黙症Journal がつぶれる