緘黙のeラーニングサイト(米)が開設、注目の技法PCIT-SMを学ぶ

2015年10月24日(土曜日)

アイキャッチ画像。
米国の民間機関が10月17日、場面緘黙症の支援者や保護者などを対象とした eラーニングサイトを開設しました。

◇ Selective Mutism Learning University (新しいウィンドウで開く

これは無料で利用できるもので、動画や練習問題などを通じて緘黙や緘黙支援について学べるという、これまでにないサイトです。さらに、スマートフォンやタブレット端末にも対応していて、モバイル環境でも学べるという利用のしやすさです。日本にお住まいの方でも利用できます(ただし英語……)。

このサイトは登録をすると全ての内容を利用できるようになるのですが、非登録でもある程度学習できます。なお、私も登録し、受講してみました。登録の際、Zip code(米国の郵便番号)はダミーで 00000 としたのですが、これでいいのでしょうか?

この eラーニングサイトについては、今月17日に行われた米国最大の緘黙支援団体 The Selective Mutism Group の年次総会で紹介されました。また、今年8月にニューヨークタイムズに掲載された、緘黙を主題とした記事にも開設が予告されていました。

詳しくは知りませんが、もともと米国は eラーニングが発達しているらしいです。緘黙についても、以前から「ウェビナー」(ウェブセミナーのこと)が行われていて、そういう文化的背景があっての今回のサイト開設なのかもしれません。

米国で話題の緘黙専門家が、サイト開設に関わる


このサイトの開設者に注目したいです。開設者は、Steven Kurtz博士を中心とする心理学のコンサルティング機関 Kurtz Psychology Consulting PC です。

◇ Kurtz Psychology Consulting PC (新しいウィンドウで開く

この Steven Kurtz 博士という方、米国の緘黙支援の情報を追っていると、このところよく目にするのです。米国では緘黙の子どもを対象とした集中療法が近年広まりを見せていてニューヨークタイムズウォールストリートジャーナルなどメディアでも相次いで取り上げられているのですが、その集中療法を開発した人物が、この Steven Kurtz博士です。

なお、このコンサルティング機関はニューヨークのマンハッタンに立地しています。すぐ近くには、プラザホテルやカーネギーホール、セントラルパークがあります。こうした世界的な一等地に、緘黙の専門家らがいるのです。このほか Child Mind Institute という民間機関もマンハッタンにあって(パークアベニュー)、緘黙児への集中療法や緘黙のワークショップなどがここで定期的に開かれています。

サイトの特色:「親子相互交流療法」の緘黙支援への適用


PCIT-SM


この eラーニングサイトの特色は、PCIT (Parent-Child Interaction Therapy;親子相互交流療法) という技法を緘黙支援に適用した PCIT-SM を紹介していることです。どうも、この技法を学ぶことがこのサイトの主眼のようです。PCIT-SM も Steven Kurtz 博士が開発したもので、米国では緘黙児への集中療法とともに近年広まりを見せています。

↓ 一般的な PCIT の分かりやすい説明。武蔵野大学心理臨床センターへのリンク。PDF(693KB)。
◇ PCIT Parent-Child Interaction Therapy~親子相互交流療法~ (新しいウィンドウで開く

※ なお、PDFを閲覧するには Acrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら (新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

↓ 一般的な PCIT の少し専門的な説明。PCIT-Japan へのリンク。
◇ PCIT ~Parent-Child interaction Therapy~ とは (新しいウィンドウで開く

PCIT-SM を構成する CDI と VDI


e ラーニングサイトによると、PCIT を緘黙支援に適用した PCIT-SM は、CDI (Child-Directed Interaction;子ども指向相互交流) と VDI (Verbal-Directed Interaction;言語指向相互交流) からなります。

このうち CDI は、PCIT の分野でよく用いられる専門用語です。

一方、VDI ですが、こちらは PCIT の 分野で広く使われる用語ではなく、緘黙支援用に独自に開発されたもののようです。一般的な PCIT では PDI (Parent-Directed Interaction;親指向相互交流)というものにあたる部分です。

特に VDI はそうなのですが、この技法は、緘黙児の発話にかなり意識を置いています。「支援のゴールは発話ではない」という考えをお持ちの方がこの技法を知ったら、衝撃を受けるかもしれません。

Steven Kurtz 博士により広まる PCIT-SM


緘黙支援の方法は専門家によって多少違いがあり、PCIT-SM も Steven Kurtz 博士流の緘黙支援法と言えるのではないかと思います。ただ、この技法は、米国で近年広まる緘黙児への集中療法の中で導入されており、PCIT-SM も広まりを見せています(そのわりに、ネットで検索してもあまり出てこないのですが……専門的すぎるからかな?それとも新しくすぎるから?)。

今年9月末に米国で出版されたばかりの最新の緘黙の専門書 Suffering in Silence (Donna Mac, LCPC 著)も、この技法をかなり詳細に紹介しており、影響の一端が窺えます。

ただ、効果の検証はまだ途上にあるようです(関連リンクの文献参照)。予備的な検証では、ポジティブな結果が出ているそうです。

むすび


かつて、ある団体が「日本へ最新の緘黙症治療法をもたらす会」と名乗り、これがかなりの支持を集めたものです。この eラーニングサイトで紹介されている PCIT-SM の技法や、その技法を使った緘黙児への集中療法も、海外の最新の緘黙症治療法と言えます。

近年は日本でも緘黙支援に関するノウハウが蓄積され、海外情報への関心は低くなりましたが、緘黙支援先進国・米国で広まる技法だけあって、気になります。言葉の壁はありますが、無料の e-ラーニングサイトである程度学べるわけですから、昔に比べてハードルは高くはないかもしれません。

関連リンク


↓ Steven Kurtz 博士も共著者の一人として名を連ねた、PCIT の論文。9ページ目 Promising Areas in Need of Further Empirical Evaluation という箇所から、緘黙への適用について書かれてあります。PDF。
◇ Extending Parent–Child Interaction Therapy for Early Childhood Internalizing Problems: New Advances for an Overlooked Population (新しいウィンドウで開く