緘黙を克服し、卓越した才能を見せる少女(米)

2015年12月01日(火曜日)

アイキャッチ画像。
場面緘黙症を克服し、ダンスで活躍している15歳少女の話が、米国カリフォルニアの新聞 Orange County Register に掲載されました(電子版で確認)。

↓ Orange County Register の記事へのリンクです。現地時間2015年11月29日(日)の記事。
◇ Breaking the silence of selective mutism (新しいウィンドウで開く

記事の概要


記事は、この少女が緘黙を克服するまでの過程を書いたものです。

彼女の緘黙克服のきっかけは、8歳のときに Boys & Girls Clubs of Huntington Valley という、若者に様々なプログラムを提供する地元の団体に入ったことでした。その後もこの団体のダンス教室でレッスンを重ね、現在に至ります。

少女が話せるようになった背景


記事から読み取るに、どうもこの少女が話せるようになったのには、環境の影響があったようです。Boys & Girls Clubs of Huntington Valle のニュースレターには、この点、もう少し詳しく書かれてあります。

Boys & Girls Clubs of Huntington Valley では、私は安全であるように感じました。誰も話さないことで私を見下したりはしませんでしたし、私が他の人と違うことで違った扱いをしたりもしませんでした。私は自分が普通の子であるように感じたのです。そして、このクラブでショーをする時は、自分は何だってできるんだという自信を得ました。

I felt like I was safe there. No one looked down upon me for not talking, or treated me differently because I was different.I felt like a normal kid, and when I performed in shows at the Club, I gained the confidence to know that I could do anything.

↓ Boys & Girls Clubs of Huntington Valley のニュースレター。PDF(334KB)。
◇ Meet the Club’s Youth of the Year (新しいウィンドウで開く

※ なお、PDFを閲覧するには Acrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら (新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

「違った扱い」と訳した箇所は興味深いです。緘黙児には特別な配慮や支援が必要ですが、こういう経験者の話もあるとなると、配慮や支援のあり方について考えさせられます。

通っていたクラスがダンス教室というのもよかったのかもしれません。ダンスそのものは会話ができなくても多少なんとかなりそうです(症状が重い「緘動」の場合は簡単ではなさそうですが)。

詳しくは知らないのですが、緘黙の本 Suffering in Silence: Breaking Through Selective Mutism によると、不安が強い人が動作をすると発語が増えることが知られているそうです(207ページ)。また、『どうして声が出ないの?マンガで分かる場面緘黙』では「からだを動かす楽しいあそびは、緊張度を下げます」とあります(52ページ)。

大変優秀な緘黙経験者!


実はこの少女、ただの緘黙経験者ではありません。大変優秀な方で、毎年9,500人以上が通う Boys & Girls Clubs of Huntington Valley の 2015年 Youth of the Year に選ばれています。

↓ 先ほどのニュースレター。PDF。
◇ Meet the Club’s Youth of the Year (新しいウィンドウで開く

大リーグが関わる奨学金の対象者に選ばれる


また、2014年にはあの野球の「大リーグ」も関わる奨学金 Hank Aaron Chasing the Dream Scholarship の支給対象者に選ばれています。支給対象者は全米で毎年44名のみで、優れた若者しか選ばれません。

なお、奨学金の名前にあるハンク・アーロン氏(Hank Aaron)は、日本の王貞治氏とともに有名な往年のホームラン王です。背番号は44。

実はこの少女は、2014年にも、この奨学金の件で Orange County Register 紙で記事になっています。

↓ Orange County Register の記事へのリンクです。現地時間2014年4月17日(木)の記事。
◇ 2 members of Boys & Girls Clubs of Huntington Valley let their talents shine (新しいウィンドウで開く

非言語の返答は認めない?


最後に、新聞記事には、大学教授による緘黙児への学校での対応について6つのアドバイスがあるのですが、この中には気になるものが2つありました。

○ 「はい/いいえ型の質問を避けましょう」(Avoid yes/no questions.)
○ 「うなずきなど、非言語の返答は受け入れてはいけません」(Don't accept nonverbal responses such as a nod.)

これは米国の緘黙情報を追っていると見かけることが多いアドバイスなのですが、最近は特に見ることが多くなったように私は感じます。日本の緘黙情報では、むしろこれらは緘黙児に対して推奨するべき対応として紹介されることがあり、この点、気になっていました。

この2点については、6つのアドバイス全体や、もっと言うと、背景にある緘黙への支援哲学、治療哲学全体から判断されるべきものかもしれません。6つのアドバイスを見るに、Steven Kurtz 博士の PCIT-SM の影響を受けているのかなとも思えます。これについては、また項を改めて書くかもしれません。