「助けて」と言えない緘黙児

2015年12月11日(金曜日)

アイキャッチ画像。
米国オマハで今年8月、スクールバスの運転者が、場面緘黙症の女児をバスの車庫に置き去りにする事件がありました。女児が置き去りにされた車庫は、女児の家から9マイル(約14.5キロ)も離れていたそうです。裁判の結果、この運転者は管理者としての義務を怠った罪で有罪、250ドルの罰金刑という判決が出ました。

↓ 事件と判決について伝える現地メディア。動画あり。
◇ Exclusive: OPS bus driver given fine after leaving special needs child alone (新しいウィンドウで開く

動画を見ても分かる通り、この女児は補給チューブをしています。緘黙以外にも何か障害や病気があったのでしょう。

上の報道だけでは、女児が置き去りにされ、助け出されるまでの詳しい過程は分かりません。そこで私などは色々と推測してしまうわけですが、もしこの女児が助けの声をあげることができたら、今回の事態は起こっただろうかと思います。

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そういえば、似た話をいくつか聞いたことがあります。

○ ある緘黙児がプールで遊んで溺れてしまった。この緘黙児は誰にも助けの声をあげることがなかった。
⇒ YouTube | Selective Mutism: Giving Kids a Voice with Dr.Annie Simpsone | 2分25秒から (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児が下校中に溝に落ち、脚とくるぶしを負傷。溝は高すぎて上ることができなかった。緘黙児は助けの声をあげることができず、捜索チームがこの子を見つけるまで何時間もそこで横たわっていた。
⇒ Kotrba, A. (2015). Selective Mutism: An Assessment and Intervention Guide for Therapists, Educators & Parents. Eau Claire, WI: PESI Publishing & Media. [Kindle version]. Retrieved from Amazon.com

○ ある緘黙児が水泳の授業中に大腿骨(だいたいこつ)を骨折。だが、教師にもクラスメイトにも何も話さなかった。
⇒ 大腿骨を骨折しても緘黙を続けた少年 (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児は腕の骨を折ってしまったが、助けの声をあげられなかった。
⇒ 骨折しても助けの声を出せなかった子、Twitter (新しいウィンドウで開く

○ ある緘黙児は、学校の消火扉に指を挟んだにもかかわらず、全く声を出さなかった。
⇒  Sage, R., Sluckin, A. 編著、杉山信作監訳、かんもくネット訳(2009)『場面緘黙へのアプローチ』田研出版。

私は緘黙児・者には適切な支援が必要と考えていますが、その根拠の一つは、緘黙のままだと、このような危機的状況に陥っても助けの声をあげられないからです。特に、今回のような低年齢の緘黙児が、助けの声をあげられないのは危険です。

※ 『明鏡国語辞典』初版によると、電車・タクシーは「運転士」、バスは「運転者」というのが正式だそうです。