「台灣選擇性緘默症協會」が誕生

2017年08月28日(月曜日)


台湾で、緘黙の団体の設立大会が開かれる


沖縄本島や宮古島から見ると、台湾は地理的には本州より近いです。台湾は場面緘黙症への関心が高いようで、Facebook の非公開グループ「選擇性緘默症者&家長&老師的討論區」には、2,000人近いメンバーが集まっています。

その台湾で8月27日、緘黙の団体の設立大会が開かれました。団体の名称は「台灣選擇性緘默症協會」、英語名は Selective Mutism Association of Taiwan (SMAT) です。

◇ その団体の準備会のブログ (新しいウィンドウで開く
◇ 団体設立に関する、現地のニュース1・ニュース動画あり (新しいウィンドウで開く
◇ 団体設立に関する、現地のニュース2 (新しいウィンドウで開く

[追記(2017年9月5日)]

◇ その団体の Facebook ページ (新しいウィンドウで開く


このニュースについては、他にも複数の現地メディアが報じています。

と書きましたが、実のところこの団体については、私には詳しく分かりません。調べようにも中国語は読めず、機械翻訳で部分的に読み取れる程度です。ですが、分かる範囲で書きたいと思います。よく分からない箇所もあり、少し慎重な書き方をしていますが、詳しくお知りになりたい方は、団体の準備会のブログや、下記の黃晶晶氏のブログをご覧ください。


理事長(会長?)に、黃晶晶氏


まず理事長(会長?)には、黃晶晶(Anita Huang)氏という方が就任したそうです。

◇ 黃晶晶氏による、緘黙をテーマとしたブログ (新しいウィンドウで開く

※ 上のブログでは、著者名は Ms. SM となっています。ですが、TAAZEの翻訳書のページ(後述)には、黃晶晶氏がこのブログを運営していると書かれてあります。

この方は、イギリスの緘黙の本 Selective Mutism in Our Own WordsThe Selective Mutism Resource Manual を台湾の読者向けに翻訳した方です。TAAZEの翻訳書のページによると、医師などの臨床家ではなく、英語の翻訳をご専門とした方のようです。団体の発起人の一人でもあります。

なお、黃晶晶氏についてはこのブログでも一度ご紹介したことがあります。ドイツの緘黙専門誌が、世界の緘黙を特集したときのことです。アジアで唯一取り上げられたのが台湾の緘黙に関する動向で、同氏はその時の寄稿者でした。

◇ 世界10カ国の緘黙支援者らが… (新しいウィンドウで開く


団体設立までの経緯


団体が設立されるまでの経緯について、分かる範囲で簡単にまとめます。

2017年3月
台湾内務省が、団体設立を承認

2017年4月
会員の募集開始

2017年5月
プレスリリース発表、メディアの記事に団体が登場

2017年8月
団体が正式に成立

急ごしらえではなく、ある程度時間をかけ、段階を踏んで設立に至ったことが分かります。

[追記(2017年9月11日)]

下記の記事によると、冒頭でお話した Facebook グループ「選擇性緘默症者&家長&老師的討論區」が、この団体の前身だそうです。この Facebook グループ、今見たらメンバー数が2,000人を超えていました。

◇ 不說話的孩子》選擇性緘默症 溺水也無法呼救 (新しいウィンドウで開く


国際交流の促進も


それから、団体の「目標と使命」には、国際交流の促進も挙げられています(最後の方の小さい扱いですが)。もしかすると日本の団体と関わる機会もあるかもしれません。

ただ、この団体の関心は、今のところ日本よりも、イギリスやドイツにあるような気が私にはします。台湾では近年イギリスの緘黙の本の出版が続いていますし、理事長(会長?)に就任した人物も英語の専門家です。また、団体の準備会が2017年5月に発表したプレスリリースには国際交流の促進についても書かれてあるのですが、そこに記されていたのは、団体の発起人が前年10月にドイツの緘黙団体の創設者 Michael Lange 氏と対談したことでした。


最近の台湾の緘黙をめぐる動向


ついでですので、最近の台湾における緘黙をめぐる動向について、少し書いてみたいと思います。団体とも関わりがないこともないので。





欠格条項:「口がきけない者」は昔、車の免許も取れなかった

2017年08月24日(木曜日)


昔の欠格条項


口がきけない者には自動車免許を与えない--道路交通法には、十数年前まで、こんな規定がありました。

(免許の欠格事由)
第八八条1 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、第一種免許又は第二種免許を与えない。

(中略)

二 精神病者、精神薄弱者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者
(以下、略)

「欠格条項」と呼ばれるものです。ただ、この「口がきけない者」に場面緘黙症の者が含まれたという話は、少なくとも私は聞いたことがありません。そもそも法律を作った側も運用した側も、運転免許を取得しようとする青年期以降の緘黙者の存在は、想定していなかったのではないかと思います。

この規定に対し、ある聾者が裁判を起こしています。1968年に始まったこの「運転免許裁判」には、全日本ろうあ連盟が支援、全国的な運動に発展しました。ですが、この方は裁判に敗れました。

ただ、裁判中、警察庁が聴力検査に補聴器の使用を認める通達を出すという新たな動きがあり、結局は免許取得に至ったそうです。補聴器を使えば聴こえるのなら、この法律でいう「耳が聞こえない者」にはあたらないということなのでしょう。

このような規定はかつて、道路交通法以外にもありました。「口が/のきけない者」は医師、薬剤師、歯科医師、保険婦、看護婦、准看護婦、言語聴覚士ほか多くの免許が与えられませんでした。

↓ 「障害保健福祉研究情報システム(DINF)」へのリンクです。2001年の記事。中断に、法律上の欠格自由の範囲をまとめた分かりやすい表があります。
◇ 「障害者に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」について (新しいウィンドウで開く


「絶対的欠格」から「相対的欠格」へ


こうした状況は現在変わっています。「障害者が社会活動に参加することを不当に阻む要因とならないよう」(障害者対策推進本部決定)見直しが行われた結果です。

ただ、障害にかかわる欠格条項が全廃されたわけではありません。例えば、次の条文は、現在の道路交通法第九十条です。

(免許の拒否等)
第九十条  公安委員会は、前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して、第一種免許又は第二種免許にあつては一年を、仮免許にあつては三月を経過していない者に限る。)に対し、免許を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
一  次に掲げる病気にかかつている者
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
(以下、略)

以前は、これこれこういう障害を持つ者には一律に免許を与えないという規定でした(絶対的欠格)。改正後は、免許を保留することができるという、やや緩和された規定です(相対的欠格)。

医師や看護師など他の免許も、相対的欠格に改められたり、欠格条項が廃止されたりしています。例えばこの2資格なら、医師法や保健師助産師看護師法、そして同法施行規則により、「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により○○の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」 には、免許が与えられないことがあると規定されています(○○には資格の名前が入ります)。

ただし、「当該者が現に利用している障害を補う手段又は当該者が現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない」とも規定されていることには注意が必要です。

欠格条項がこうしたかたちで残っていることには、異を唱える団体もあります。

◇ 障害者欠格条項をなくす会ホームページ新しいウィンドウで開く

緘黙については、欠格条項のために免許が取れなかったという話を、少なくとも私は聞いたことがありません。心配はいらないのかもしれません。

ただ、欠格条項の存在の背景には、医師や看護師など医療に関わる免許については、意思疎通などに障害がある者が取得できない場合があってもやむを得ないという考え方があるような気がします。憲法第22条には職業選択の自由(公共の福祉に反しない限り)の規定がありますが、この件に関しては問題ないという解釈なのでしょう。

一方、これは障害者の社会参加を促そうという考え方とは衝突します。緘黙とは直接関係ないかもしれませんが、考えさせられる話だと思いました。

地方議会の会議録を「緘黙」で横断検索

2017年08月18日(金曜日)

アイキャッチ画像。
国会や地方議会で、場面緘黙症が話題になったことがあるかどうか……

というお話をこのブログでしたのは、2011年8月のことでした。あれから6年、変わらないこともあれば、変わったこともあります。そのことについて、今回お話してみたいと思います。

↓ 2011年8月23日に公開した記事です。
◇ 国会や地方議会で、緘黙が話題になったことがあるか (新しいウィンドウで開く

国会の会議録を検索


6年前の記事でご紹介した「国会会議録検索システム」は、現在も利用できます。平成27年(2015年)3月には、衆議院で緘黙に関する質問が2回行なわれており、それも閲覧することができます。

◇ 国会会議録検索システム新しいウィンドウで開く


地方議会の会議録を検索できる、新たなサイト


一方、地方議会の会議録を検索できた「会議録検索ナビ」は現在存在しません。ですが、それに代わるものがありますので、ご紹介します。

↓ 地方議会の会議録を一度に検索できます(横断検索)。検索結果が見やすいです。
◇ 議事ロックス (新しいウィンドウで開く

↓ 47都道府県の会議録検索は、こちらの方がヒット件数が多いです。
◇ yonalog 全国47都道府県議会議事録横断検索 (新しいウィンドウで開く

↓ 同様に、政令指定都市に特化した会議録検索です。
◇ serelog 政令指定都市議会議事録検索 (新しいウィンドウで開く

これらのサイトで「緘黙」などと検索することにより、全国の地方議会で緘黙がどの程度話題になっているかや、どういった取り上げられ方がされているかが分かります。

ただし、上の横断検索は、全ての会議録を網羅しているわけではないようです。例えば、岩手県議会と静岡県議会は検索対象に含まれていません。また、何十年前といった、あまり昔の会議録はネット上に公開されておらず、検索できない場合があります。何年前までの議事録が検索できるかは、自治体にもよって違います。さらに、公開されている会議の範囲も自治体によって違います。

緘黙について踏み込んだ質疑があった最近の5件


最近6年の会議録の中では、緘黙について踏み込んだ質疑はこれだけ見つかりました。

東京都  江戸川区 平成28年 第4回定例会−12月02日-03号
長野県  佐久市  平成27年 3月定例会(第1回) 03月04日−02号
埼玉県  戸田市  平成24年 9月定例会(第4回)−09月10日-05号
長野県       平成24年 6月定例会本会議−06月27日-03号
神奈川県 平塚市  平成24年 教育民生常任委員会

※ 7年以上前の地方議会の会議録については、6年前の記事でだいたいお話したので省きます。

この5件の中から、興味深く感じた点を挙げます。

  • 佐久市の小中学校では、緘黙の児童生徒は来入児1名と小学校2年生1名の、合わせて2名というのが行政側の認識。佐久市の人口はおよそ10万人。

  • 平塚市議会では、県立高校入試の際、緘黙の生徒にも課される面接試験のことが話題になった。神奈川県では配慮がなされていることが窺われる。

  • 都道府県問わず、緘黙に関する質問をしている議員のほとんどが、公明党所属。


平成16年に、岩手県議会で、緘黙の児童生徒に対する配慮についての質疑があった


あと、今回特別に取り上げたいものとして、岩手県議会の平成16年(2004年)12月定例会の会議録があります。6年前の記事ではご紹介していなかったので。

これは「いわて特別支援教育推進事業費」という、LD、ADHD、自閉症に関する予算に関する質問なのですが、質問者の野田武則県議(現・釜石市長)は併せて緘黙に関する質問も行なっています。

また、どちらかといいますと、こういうLD、あるいはADHDの方に目が向けられまして、少人数だろうと思いますが、緘黙児の、あるいは場面緘黙児も含めますが、そういった児童生徒に対する配慮がなされているのかどうか、その辺の実態についてお伺いしたいと思います。

鋭い!と、私などは考えてしまいました。緘黙は発達障害に比べるとあまり注目が当たらずにきたのは、「議員ご指摘の通り」です。

この質問に対する遠藤洋一学校教育課長の回答も、当を得たものです。当時岩手に、緘黙についてのしっかりした見識を持った方がいたことを窺わせます。

2004年といえば、今日存在する緘黙の団体・グループは一つもなかった頃です。緘黙を主題とした本も、一般流通したものでは『場面緘黙児の心理と指導』のみしかありませんでした。ですが、緘黙についてしっかりした質疑応答がなされています。