場面緘黙症は不安障害か
このブログでは、場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。
今回の論文はこれです。やはり被引用回数が多い論文なので、取り上げます。
Anstendig, K.D. (1999). Is selective mutism an anxiety disorder? Rethinking its DSM-IV classification. Journal of anxiety disorders, 13(4), 417-34.
アメリカ精神医学会が定めた精神疾患の診断基準(DSM)というものがあって、これが大きな影響力を持っています。この診断基準では、場面緘黙症は「幼児期、小児期、青年期の他の障害」(Other Disorders of Infancy, Childhood, or Adolescence)に分類されています。
今回の論文は、それまでの先行研究をもとに、第一に、場面緘黙症は不安障害のカテゴリーに入れるべきである、第二に、場面緘黙症は障害(disorder)というよりは一つの症状(symptom)であると結論づけ、分類の再考を主張しています。
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場面緘黙症の分類、病因は重要な論点の一つで、特に最近では、場面緘黙症が不安障害の一つかどうかの研究が多くなってきています(Sharp, Sherman, and Gross, 2007)。今回の論文はそうした議論に大きな一石を投じたものと言えます。
マスコミレベルでは、英語圏では場面緘黙症は「一つの不安障害」"an anxiety disorder" (Portrait, 2007)、「一つの極度の不安障害」"a severe anxiety disorder" (Boodman, 2007)、 「社会不安障害の一つのタイプ」"a type of social anxiety disorder" (James, 2007) などと、不安障害の一つと説明されることも多いです。
法律の学説の世界では、よく通説、多数説、有力説、少数説という言い方をします。場面緘黙症は不安障害の一つという学説を法律の学説に例えて言うと、多数説あたりにはなるのではないかと思います。ただし、このあたり、ちょっと自信がありません。
昨今の学界での議論を受けて、今後のDSMの改定で場面緘黙症はどう分類されるのか注目されるところです。ですが、DSMのホームページによると、次の改訂版DSM−Vの発表は2012年5月の予定で、まだ少し先になりそうです。
※ ブログ拍手は、[文献]のさらに下にあります。お手数ですが、よい記事だったと思われたら、拍手していただけると嬉しいです。
[文献]
◇ American Psychiatric Association DSM-V: The Future Manual. Retrieved July 10, 2008 from
http://www.psych.org/dsmv.asp
◇ Boodman, S.G. (2007, September 4). Explaining Away Mental Illness. The Washington Post. Retrieved July 10, 2008 from
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/
article/2007/08/31/AR2007083101792_pf.html.
◇ James, S.D. (2007, August 29).
Selective Mutism Is Paralyzing Shyness, Not Psychosis. Retrieved July 10, 2008 from ABC News:
http://abcnews.go.com/Health/story?id=3534240&page=1
◇ Portrait of a killer. (2007, August 30). The Guardian, Retrieved July 10, 2008 from
http://www.guardian.co.uk/world/2007/aug/30/
internationaleducationnews.highereducation
◇ Sharp, W.G,, Sherman, C., and Gross, A.M. (2007). Selective mutism and anxiety: A review of the current conceptualization of the disorder. Journal of Anxiety Disorders, 21(4), 568-579.
- [2008/07/10 20:18]
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イギリスの緘黙症研究(1981)
このブログでは、場面緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。
今回の論文はこれです。
Kolvin, I., and Fundudis, T. (1981). Elective mute children: Psychological development and background factors. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines, 22(3), 219-232.
1981年に発表された少し古い文献ですが、例によって、今日に至るまで頻繁に引用されてきたいわば定番文献ですので、扱うことにします。
■ 概要
場面緘黙症児24人、一般の子ども100人、言語発達遅滞児82人を集め、場面緘黙症の生物学的要因や社会的家族的背景について幅広く調査しています。例えば生物学的要因については、場面緘黙症児の性別、家族の規模と出生順位、周産期合併症、初めて歩行と発話をしたときの年齢、お漏らし、言語聴覚の機能障害、身体的異常、発症年齢と性格、社会的関係と行動、IQについて調査を行っています。また、追跡調査も実施し、その結果についてもまとめています。
■ 考察
気づいたことをいろいろ書きます。
- [2008/06/14 22:13]
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トリイ・ヘイデンの緘黙症分類
『檻のなかの子』などの著作で知られる Hayden, T.L.(トリイ・ヘイデン)氏は、ノンフィクションだけでなく学術論文も残しているのですが、その中には場面緘黙症に関するものもあります。
特に著名なものは、これです。
Hayden, T.L. (1980). Classification of elective mutism. Journal of the American Academy of Child Psychiatry, 19, 118-133.
今回は、この論文について取り上げます。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。なぜこの論文かというと、英語圏においてはよく引用されてきたからです。
■ 概要
場面緘黙症児68人を調べ、場面緘黙症を四つに分類しています。
■ 考察
この論文が世に出たのは、1980年のことです。当時は統計的分析が可能なほど多くのサンプル(場面緘黙症児)を集めた場面緘黙症の研究が英語圏ではありませんでした。そうした時代に、著者は独自の経歴を生かして68人を集めて、分析を試みたのです。
これは当時としては画期的なことでした。英語圏における被引用回数の多さは、この論文の評価を物語っています(2000年以降になっても、よく引用されています)。ただし、厳しい評価も寄せられています。
- [2008/04/15 23:05]
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ノルウェーの緘黙症研究(1979)
このブログでは、場面緘黙症の論文について紹介しています。私は専門家ではなく、自信もないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。
今回の論文はこれです。
Wergeland, H. (1979). Elective mutism. Acta psychiatrica Scandinavica, 59(2), 218-228.
■ 概要
少し昔のものですが、今日でも英語圏ではよく引用されるノルウェーの研究です。
場面緘黙症児11人について、年齢、遺伝的影響、社会的背景、親や兄弟姉妹の性格型、家族的雰囲気、妊娠、出生、発達、症状、初回検査、入院後の治療、退院後の健康状態、等95項目について調査されています。また、フォローアップについても、70項目について調査されています。調査結果は、治療を受けたグループと受けなかったグループの2つのグループに分けて、分析されています。
■ 考察
気づいたことを色々書きます。
◇ 調査方法の限界
これは仕方がないことかもしれませんが、調査方法が雑です(特に、現代の研究水準と比べると)。例えば、場面緘黙症の診断基準がはっきりしません。調査対象の子どもは、1955年から1970年までの間にオスロ大学児童精神科に入院し、退院時診断が場面緘黙症だった子たちですが、統一された診断基準で診断がなされたかどうかも定かではありません。「脳損傷の可能性」(Possible brain damage)がある子も場面緘黙症児として扱われていますが、どうでしょうか。
また、今回の研究は、調査結果から場面緘黙症について一般的な傾向を見出そうとしていますが、母集団が11人と少ないです。このためか、妙な結果も出ています。例えば、子どもが生まれた時、年齢が40歳以上であった父親の割合が多かったので(とはいえ、11人中6人です)、これが場面緘黙症の発症に何か関係があるのではないかとか。また、場面緘黙症の治療を受けて治った子の方が、治らなかった子よりも、後の人生で問題を残しているとか(これに至っては、母集団6人です)。
なお、当時としては優れた研究を、後世の人間が「この研究にはあらが目立つ」と文句をつけるのは簡単なことです(学術論文を査読誌に投稿したことがない人間が同様に文句をつけるのも、簡単なことです)。
- [2008/03/27 22:21]
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