殺害された緘黙児の葬儀、多数の英メディアが報じる

2017年02月14日(火曜日)

アイキャッチ画像。

7歳の少女


イギリスで先月、場面緘黙症だったケイティー・ラフ(Katie Rough)さんという7歳の少女が事件に巻き込まれ、亡くなったことを覚えていらっしゃるでしょうか。

↓ その時に書いた記事です。
◇ 英国で緘黙児が殺害される (新しいウィンドウで開く

ケイティーさんの遺族は、イギリスの緘黙支援団体 SMIRA のメンバーでした。[注] 逮捕されたのは15歳の少女で、犯行の動機などはまだ明らかになっていません。

以前お話したように、事件は現地のメディアで大きく取り上げられました。イギリス議会でも話題になり、メイ首相とコービン労働党党首が、哀悼の意を表す場面がありました。

ただし、この時にケイティーさんが緘黙だったことに触れたメディアは、私が見たところ確認できませんでした。遺族や複数の緘黙関係者が、ケイティーさんに緘黙があったことを打ち明けたため、明らかになったのでした。

葬儀が行なわれる


さて、そのケイティーさんの葬儀が13日、ヨークミンスター(ヨーク大聖堂)で執り行われました。この模様も、イギリスの多数のメディアが報じています。その一部として、BBC と高級紙 The Guardian をご紹介したいと思います。

↓ BBC News へのリンクです。
◇ Katie Rough funeral: Service at York Minster (新しいウィンドウで開く

↓ The Guardian ウェブサイトへのリンクです。
◇ Funeral of seven-year-old Katie Rough led by archbishop of York (新しいウィンドウで開く

今回の記事では "Katie had selective mutism" (BBC) 、"Despite being affected by selective mutism, Katie “still loved to join in and ...”" (The Guardian) と、ケイティーさんが緘黙だったことが少し触れられています。なお、緘黙は英語で selective mutism と呼びます。

また、BBC の記事によると、遺族はこの日集まった寄付金を、緘黙支援団体 SMIRA に贈与することを望んだようです。

葬儀が行なわれたヨークミンスター(ヨーク大聖堂)は、『デジタル大辞泉』によると、13~15世紀に建築された、イギリス最大のゴシック式大聖堂です。また、葬儀を主導したジョン・センタム・ヨーク大主教(John Sentamu, Archbishop of York)は、『世界の観光地名がわかる事典』によると、イギリス国教会ではカンタベリー大主教に次ぐ高位聖職者だそうです。

The Guardian によると、ケイティーさんは生前この大聖堂の常連で、ここで洗礼を行ったとのこと。大主教も、彼女のことを覚えているそうです。こうした縁で、イギリスでも最高クラスに格式の高い大聖堂で、高名な宗教指導者のもと葬儀が催されたのでしょう。


世界中からメッセージが


葬儀に先立ち、遺族の方が、ケイティーさんに寄せられたメッセージを載せたフォトムービーを公開しています。

↓ イギリスの民間放送局 ITV のウェブサイトへのリンクです。その動画を見ることができます(ページ下部)。
◇ Family of Katie Rough, 7, release video ahead of funeral (新しいウィンドウで開く

その動画で見られるメッセージは、イギリス国内はもとより、アイルランド、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、オランダ、キプロス、南アフリカなど世界中から寄せられたものです。


海の向こうでは、こんな大きなことが


海の向こうでは、緘黙の当事者にこんな大きなことがあったということを、お伝えしたいと思います。

なお、アメリカを代表する緘黙支援団体 Selective Mutism Association(Selective Mutism Group から改称)が、今回の葬儀のニュースを Twitter で取り上げ、関心のほどを窺わせています。

↓ Twitter に登録されていない方でもご覧になれます。アメリカは日本ほど Twitter が盛んでないせいか、反響はありませんが……。
◇ Selective Mutism Association の Twitter 投稿 (新しいウィンドウで開く



英国で緘黙児が殺害される

2017年01月21日(土曜日)


7歳の少女


イギリスのヨークという都市の公園で1月9日、7歳の少女ケイティー・ラフ(Katie Rough)さんが殺害される事件が起きました。

逮捕されたのは15歳の少女でした。犯行の動機はまだ明らかになっていません。

事件はメディアで大きく取り上げられています。BBC News によると、特に大衆紙 The SunDaily Mail はこのニュースをトップで伝えたそうです。国会でも話題になり、メイ首相とコービン労働党党首が、哀悼の意を表する場面もありました。

↓ BBC NEWS へのリンク。
◇ Girl, seven, found dead on York path named Katie Rough (新しいウィンドウで開く

↓ BBC NEWS へのリンク。
◇ Newspaper headlines: Corbyn v the 'fat cats' and 'mother's cry' as girl found dead (新しいウィンドウで開く

↓ Daily Mirror へのリンク。
◇ Prime Minister Theresa May pays condolences to family of Katie Rough, 7, found fatally injured in field (新しいウィンドウで開く

この事件は、日本でもネットでニュースになっています。

↓ エキサイトニュースへのリンク。犯行についての生々しい描写があるので、ご注意。
◇ 事件についてのニュース (新しいウィンドウで開く


少女は場面緘黙症だった


この亡くなったケイティー・ラフさんですが、実は場面緘黙症でした(メディアは報じていません)。イギリスの緘黙支援団体 SMIRA との関わりもありました。彼女の母親や SMIRA 役員の Facebook 投稿から明らかになっています。

↓ Facebook へのリンク。英語。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ 母親の Facebook 投稿 (新しいウィンドウで開く

↓ Facebook へのリンク。英語。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ SMIRA 役員の Facebook 投稿の転載 (新しいウィンドウで開く

事件に巻き込まれたのがたまたま緘黙児だったということなのか、それとも、緘黙だったから被害に遭ったのか(大人しそうだから狙われたとか、助けの声を上げられなかったとか)、そこのところは今のところ分かりません。


支援の動き広がる


ケイティー・ラフさんを偲ぶとともに、遺族を支援する動きが、イギリスを中心とする海外の緘黙関係者の間で小さな広がりを見せています(もちろん、緘黙と関係ない方の間でも広がっています)。

SMIRA は、ケイティー・ラフさんを偲ぶ Twitter 投稿を行ないました。

↓ Twitter へのリンク。英語。Twitter に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ SMIRA の Twitter 投稿 (新しいウィンドウで開く

また、3月に行なわれる SMIRA の年次総会の最後に、ケイティー・ラフさんを偲んで鳩を放とうという企画が出ています。そのための資金がクラウドファンディングで集まっています。

↓ クラウドファンディングサイト GoFundMe へのリンク。英語。
◇ To Release Doves In Memory of Katie (新しいウィンドウで開く

それから、ケイティー・ラフさんの母親が、娘の苗字ラフ(Rough)をできるだけ多くの人に見てもらえるように #teamrough というハッシュタグを SNS でシェアして欲しいと呼び掛けていらっしゃるのですが、それを受けて、自分たちもシェアしようという動きがあります。ラフさんを忘れないということなのでしょう。その一部をご紹介します。

↓ Facebook へのリンク。英語。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ オーストラリアの緘黙Facebook ページ の投稿 (新しいウィンドウで開く

↓ Facebook へのリンク。英語。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ ニュージーランドの緘黙支援団体VOICE の Facebook 投稿 (新しいウィンドウで開く

私も学校で話せない経験をした者として、今回のことには強い衝撃を受けました。ご遺族のお気持ちは計り知れません。この場で哀悼の意を表するとともに、日本で緘黙に関心がある方にもケイティー・ラフさんのことを知って欲しいと思い、今回の記事を書いています。



「緘黙を教師に受け入れてもらえたことが、変化のスタート」

2016年12月18日(日曜日)


イギリスの高級紙 The Guradian に16日、場面緘黙症を主題とする記事が掲載されました(電子版で確認)。ライターの Phoebe-Jane Boyd さんという方が、ご自身の緘黙経験を書いたものです。

大手新聞社のウェブサイトに掲載された記事とあってか、多数のコメントが寄せられています。その数は100件を超えます。

↓ The Guradian ホームページへのリンクです。
◇ A moment that changed me: a teacher’s acceptance of my silence (新しいウィンドウで開く

Boyd さんが緘黙を発症したのは80年代のことで、緘黙は25年ほど続いたそうです。認知が進んでいない成人期の緘黙経験者の記事が、高級紙 The Guradianに掲載された意義は大きいです。

記事では緘黙の解説を iSpeak のホームページから引いています。iSpeak は、大人や10代の緘黙者、その家族のためのイギリスの支援グループです。iSpeak の緘黙の説明には、緘黙が成人期にまで至る場合があることが書かれてあります。

イギリスの新聞記事で緘黙を主題としたものといえば、だいたい内容は決まっています。実例を挙げながら緘黙や支援法について専門家の意見を交えつつ、一般的な解説をするといったかたちがよくとられます。ところが今回の記事は経験者が書いたものゆえか、全く違った書き方になっています。Boyd さんご自身の緘黙経験談が、その内容のほとんどを占めています。

Boyd さんは緘黙のことで長年苦しみました。ところが17歳の時、ある英語教師から "It’s not a problem."(話せないことは問題ではない)などと言われ、それを受け入れてもらいました。これが、Boyd さんが声を出せるようになるスタートだった……というところで、この方の緘黙経験談は終わっています。

緘黙が受け入れられたことが、声が出るようになることへの転機になったという話は、よくよく考えると逆説的で興味深いです。ここからどのようにして Boyd さんが声が出るようになったかは書かれていないので、色々と想像してしまいます。

どちらにしろ、Boyd さんは話せないことで自分を責めたり、周囲の人(教師とか)が無理解だったりといったことが長く続いたようです。それだけに、話せないことを受け入れてもらえたことは、どんなにありがたいことだったろうと思います。