英国のある調査報告書 

イギリスのお話です。発話、言語、コミュニケーションに特別なニーズを持つ子どもや若者への支援について、政府への様々な提言をまとめた Bercow Review というリポートの最終報告が、今年7月に公表されました。

この報告書は、児童・学校・家庭省の Ed Balls 大臣と保健省の Alan Johnson 大臣の要請により、John Bercow 下院議員が行った独立調査をまとめたものです。

http://www.dcsf.gov.uk/bercowreview/

報告書の諮問団には、場面緘黙症の支援団体 SMIRA(Selective Mutism Information and Research Association)の方も加わっています。政府に答申された報告書に場面緘黙症の支援団体が関わっていたとは、日本では考えられないことです。

この報告書では、発話、言語、コミュニケーションに関する様々な問題を抱えた子どもや若者が視野に入れられているようです。しかし、報告書のテーマは早期介入の重要性、医療と教育の連携などで、場面緘黙症児の支援にも共通する部分は実に多いです。見方を変えれば、これらは場面緘黙症のみの問題ではないということです。

報告書では、その数40にわたる様々な提言がなされていますが、その内容はずいぶんと踏み込まれたものです。分かりやすいものでは、例えば、コミュニケーションの重要性の理解を高めるために、「国民 発話、言語、コミュニケーション年」を定め、次の3年以内に実行に移す、というものがあります。

場面緘黙症児を含む、発話、言語、コミュニケーションに特別なニーズを持つ子どもや若者への政府の支援について、こうした踏み込んだ内容の報告書が政府に答申されたという事実は大きいと思います。もっとも、このことだけをもって、イギリスの方が日本より進んでいるかどうかの判断は私にはできません。

[今日の一言]

"Communication is a fundamental human right. Communication is a key life skill. Communication is at the core of all social interaction."(上記報告書より)

「コミュニケーションは基本的人権である。コミュニケーションは重要な生活技能である。コミュニケーションは全ての社会的相互作用の中心をなす。」

コミュニケーションが基本的人権とは、考えたこともありませんでした。残りの2つには同意です。緘黙の子や人は、重度の人を除けば、非言語コミュニケーションであればなんとかとることはできます。ただ、うなずいたり首を横に振ったりのコミュニケーションだけでは、不自由なことは言うまでもありません。

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

分かりにくいので、改行して書きます。

文部科学省
初等中等教育局
特別支援教育課

こういう名前の部署が存在します。以下は、そのホームページとみられます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
(文部科学省ホームページ)

場面緘黙症の児童生徒は「情緒障害児」であり、特別支援教育の対象にすることができます。しかし、上記ページは、「特別支援教育」のページであるにもかかわらず、場面緘黙症に関する情報はあまり載っていません。特別支援教育の対象は幅広いですし、全ての場面緘黙症の児童生徒が、特別支援教育を受ける必要があるわけではないからでしょう。

ですが、上記ページには、「通級による指導の実施状況」などの、重要な資料が公開されており、人によっては役立つかもしれません(「通級による指導」とは、「その障害の状態に応じて行われる特別の指導」のことです)。

ちなみに、

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育調査官

という役職もあります。

[関連ページ]

◇ 場面緘黙症と法(学校教育法施行規則)

情緒障害児短期治療施設 

場面緘黙症の子どもたちを支援する機関には、ことばの教室、児童相談所、教育センター、情緒障害児短期治療施設(児童心理療育施設)などがあります。

このうち、情緒障害児短期治療施設(以下、「情短施設」と略します)については、場面緘黙症Journal 掲示板で話題になったことがないようなので(もしあったら、ゴメンナサイ…)、簡単にまとめてみます。

■ 情緒障害児短期治療施設とは

情短施設は、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、次のように規定されています(児童福祉法第43条の5)。

情緒障害児短期治療施設は、軽度の情緒障害を有する児童を、短期間、入所させ、又は保護者の下から通わせて、その情緒障害を治し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

情短施設施設の対象とする児童は場面緘黙症の子だけではなく、被虐待児や不登校児、軽度発達障害児なども含まれています。特に近年は被虐待児の増加が顕著で、その割合も多く、2006年では入所児の68.3%を占めています(独立行政法人福祉医療機構, 2008)。

そのほか情短施設の概要については、独立行政法人福祉医療機構ウェブサイト「WAM NET」内の資料「情緒障害児短期治療施設の概要」がうまくまとめていますので、リンクを張っておきます。情短施設のリストも掲載されているので、お近くの都道府県の施設が分かります。

「情緒障害児短期治療施設の概要」(pdf 309KB)

上の資料について、少し補足を。資料では、平成16年10月1日現在、施設の数は25箇所、定員は1,209人、入所者数は910人と記されていますが、その後、施設の数は増加しています。平成18年10月1日現在では、施設数31箇所、定員1,486人、入所者数1,131人になっています(厚生労働省a, 2008)。さらに、厚生労働省は、「子ども・子育て応援プラン」の中で、情短施設の「全都道府県での設置を目指す」としており(厚生労働省b, 2008)、その後も数は増加しているかもしれません。

なお、場面緘黙症の子どもは、何も全員が情短施設に入らなければならないというわけではもちろんありません。あくまで、このような施設もあるよ、というお話です。

※ ブログ拍手は、[文献]のさらに下にあります。お手数ですが、よい記事だったと思われたら、拍手していただけると嬉しいです。

[文献]

◇ 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET: 「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」ヒアリング 情緒障害児短期治療施設から.
Retrieved June 19, 2008 from
http://www2.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/
97c71579607b55e74925729800053b05/$FILE/20080308_2shiryou3_2.pdf
◇ 厚生労働省a 厚生労働省ホームページ: 平成18年 社会福祉施設等調査結果の概況.
Retrieved June 19, 2008 from
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/06/toukei1.html
◇ 厚生労働省b 厚生労働省ホームページ: 第16回社会保障審議会資料.
Retrieved June 19, 2008 from
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/s0209-8h.html

場面緘黙症への関心、日本は非常に高い? 

日本は、場面緘黙症に対する関心は、世界の中で見ても非常に高い国なのかもしれない。最近私は、そう考えるようになりました。

下に示した数字は、場面緘黙症に関する言葉が1日に何回ネットで検索されているかを推計したものです。対象となる国は日本だけではなく、アメリカ、イギリス、ドイツなど16カ国です。[注]

[日本語]
緘黙123.4回/日
場面緘黙42.8回/日
場面緘黙症29.1回/日
緘黙症28.5回/日
選択性緘黙8.7回/日
[英語]
selective mutism71.0回/日
mutism17.0回/日
elective mutism8.0回/日
selective mutism in child5.0回/日
selective mutism therapy1.7回/日
[ドイツ語]
mutismus4.3回/日
selektiver mutismus2.7回/日
mutismus fallbeispiel1.4回/日
mutismus schule fallbeispiel0.6回/日
mutismus de0.3回/日

(資料出所:Wordtracker、検索日 08/31/2006)

日本語で場面緘黙症に関する言葉が検索された回数は、英語やドイツ語に比べても多いことが分かります。日本のネット界ではそれだけ関心が高いということでしょうか。

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